「10年前に、今の三菱商事や東京海上HDを仕込んでいたら……」
投資家なら一度は考えたことがある「IF」ではないでしょうか。例えば、東京海上HD(8766)の配当金は、この5〜6年で約2.8倍にまで膨れ上がっています。もしあなたが10年前に同社を今の株価よりずっと安く買っていたなら、自分の買った値段に対する利回り(Yield on Cost, YOC)は、今や15%という驚異的な数字に達しているはずです。
「もうそんな『お宝株』は残っていないのでは?」と思うかもしれません。しかし、結論から言えば、それは間違いです。今の配当利回りが3%前後であっても、増配の「加速度」が高い銘柄を選び抜くことができれば、10年後のあなたのポートフォリオには、元本を配当だけで回収し、ゆとりある生活を支える「自分年金」が完成しているでしょう。
本記事では、「今の配当」ではなく「未来の配当」を買うこと。日本市場が「資本コストや株価を意識した経営」へと舵を切った今だからこそ狙える、増配率が凄まじい「連続増配の卵」3選を徹底解説します。
お宝株を見分ける「3つの加速度」
単に「何年も連続で増配している」というだけでは、真のお宝株としては不十分です。重要なのは、増配のスピードが上がっているか、つまり「加速度」です。これを分析するために、以下の3つの視点を持ちましょう。
1. 利益爆増型:成長が還元を連れてくる
DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展やグローバル展開の成功により、1株当たり利益(EPS)そのものが急成長しているパターンです。配当性向(利益のうち何%を配当に回すか)を変えなくても、利益が増えることで配当金が自動的に押し上げられます。
2. 方針転換型:還元の「蛇口」を全開にする
これまで内部留保としてキャッシュを溜め込んできた企業が、東証の改善要請などを受けて「これからは利益の半分以上を配当します」と宣言するパターンです。配当性向の引き上げや「累進配当(減配せず維持か増配のみとする方針)」の導入により、一気に配当が噴き出します。
3. 最強の安心材料「DOE」:利益に左右されない仕組み
配当株投資家なら必ずチェックしたいのが「DOE(自己資本配当率)」です。

通常、配当は「その年の利益」から出されますが、DOEは「積み上がった純資産(自己資本)」をベースに計算されます。
配当額 = 自己資本 x DOE%
利益は年によって変動しますが、自己資本は赤字にならない限り毎年積み上がっていきます。つまり、DOEを採用している企業は、「利益が一時的に落ち込んでも、安定して配当を出し、かつ理論上は増配が継続しやすい」という最強の防波堤を持っているのです。
厳選3銘柄の徹底解説
それでは、厳選した「10年後にお宝になる」3銘柄を見ていきましょう。
1. 豊田通商(8015):アフリカの覇者が放つ「利益爆増」の衝撃
トヨタグループの総合商社である豊田通商は、今まさに「利益爆増型」の恩恵を最大限に受けています。
- 増配の加速度: 驚くべきは直近の伸びです。過去10年の平均増配率(CAGR)は約18.8%ですが、直近3年に限れば約25.3%と、増配のスピードが明らかに上がっています 。
- お宝株になる理由: 同社は「アフリカの覇者」と呼ばれ、現地のモビリティやヘルスケア事業で圧倒的なシェアを誇ります。2025年3月期には4期連続で過去最高益を更新し、EPSは343円に達する見込みです。
- 投資のヒント: 現在の配当利回りは2.2%前後(株式投資分割考慮)と、一見「高配当株」としては物足りなく見えるかもしれません。しかし、中身はグロース株並みの成長力を持っています。15期連続増配を予定しており、利益成長が配当を力強く牽引しているため、10年後の爆発力は商社の中でも随一と予想します。
2. MS&ADインシュアランスグループHD(8725):政策保有株が生んだ「還元ブースト」
国内損保首位級のMS&ADインシュアランスグループHDは、まさに「方針転換型」の理想形です。
- 増配の加速度: 直近3年の平均増配率は約34.0%と、驚異的な数値を叩き出しています。2025年3月期の配当金は、株式分割後で145円(分割前換算で435円)と、前期の270円から劇的なジャンプアップを果たしました 。
- お宝株になる理由: 長年の慣習だった「政策保有株式(取引先との持ち合い株)」をゼロにするという決定が背景にあります。数兆円規模の資産がキャッシュ化され、それが増配や自社株買いという形で株主に還元されています。
- 安心の累進配当: 同社は「累進配当」を明文化しており、減配リスクを極限まで抑えつつ、EPS成長率を新たな経営指標(KPI)に据えてさらなる還元を目指しています。
3. 三和ホールディングス(5929):驚異の「DOE 8%」という宣戦布告
最後は、個人的にも注目している、シャッター世界首位の三和ホールディングスです。
- 「DOE 8%」の破壊力: 同社は2026年3月期から、配当方針を「DOE 8%目安」へ引き上げると発表しました。一般的な日本企業のDOEが2〜3%であることを考えると、8%という数字はまさに投資家へのラブレターです。
- 利益が横ばいでも増配: 実際、2026年3月期の業績予想はほぼ横ばいですが、この新方針により配当は前期の106円から124円へと、18円もの大幅増配が予定されています。
- 価格決定権の強み: 北米市場で高いシェアを持ち、インフレ局面でも製品価格を適切に引き上げられる「価格決定権」を持っていることが、この強気な還元の裏付けとなっています。
10年後の「自分年金」シミュレーション
これら3銘柄を今から保有した場合、10年後の取得価格に対する利回り(YOC)はどうなるでしょうか。過去の実績と各社の還元方針から、現実的な増配率に基づいたシミュレーションがこちらです。
| 銘柄名 | 現在の利回り(目安) | 想定増配率 (年) | 10年後の想定YOC |
| 豊田通商 | 2.2% | 12% | 約6.8% |
| MS&AD | 4.2% | 10% | 約10.9% |
| 三和HD | 3.0% | 10% | 約7.9% |
3銘柄をセットで持つことで、成長による爆発力(豊田通商)と、強固な還元方針による安定(MS&AD、三和HD)のバランスが取れた、「最強の配当成長ポートフォリオ」が完成します。
特にMS&ADのように、将来の利回りが10%を超えるような銘柄は、「毎年、投資元本の1割が配当として戻ってくる」という驚異の状態を作り出します。これこそが、目先の株価変動に一喜一憂しない、真の「自分年金」の姿です。
数字の変化を信じて、「原石」を長く持つ
日本株は今、東証の改革という大きな波の中にいます。かつてはキャッシュを溜め込むことが「美徳」とされた日本企業が、今や世界標準の還元姿勢を競い合う時代へと突入しました。
今回紹介した3銘柄、特に三和ホールディングスの「DOE 8%」や、豊田通商の「直近3年の加速度」といった変化は、まだ市場の多くの投資家がその真価に気づききっていない「原石」の状態と言えるかもしれません。
投資で成功するコツは、目先の株価に一喜一憂することではなく、「企業が稼ぐ力」と「株主へ還元する姿勢」の変化を数字で捉えることです。
10年後、「あの時仕込んでおいて本当に良かった」と笑えるように。今のうちから、これら「連続増配の卵」をあなたのポートフォリオに迎え入れてみてはいかがでしょうか。
「未来の自分」への最高のプレゼントは、今日のあなたの冷徹な分析と、少しの勇気から始まります。
(※投資は自己責任でお願いいたします。株価や配当利回りは執筆時点のデータを基にしており、将来の成果を保証するものではありません。)