【PBR1倍割れ】東証が迫る「資産の解禁」:本気で株価を上げに来る低PBR銘柄3選

日本株には、手持ちの現金よりも安く放置されている「解散価値割れ」の企業が山ほどあります。東証の改善要請は、これら「宝の山」を株主に開放させる最後通牒です。 今回は、ポーズではない「本気の資本改善」を始めた3銘柄をご紹介します。

PBR1倍割れ:東証が迫る「資産の解禁」

現在、日本株市場で注目テーマの一つは「PBR1倍割れ」の解消です。

そもそもPBRとは何か?

PBR(株価純資産倍率)とは、一言でいえば「その企業の『解散価値』に対して、今の株価がいくらか」を測る指標です。

  • PBR 1.0倍: 会社の全資産と時価総額が釣り合っている状態。
  • PBR 1.0倍未満: 会社を今すぐ解散して資産を分けた方が、株主に配るお金が多くなるという、異常な「格安」状態。

東証(東京証券取引所)は今、この1倍を割っている企業に対し、「株価を上げる努力をしないなら、上場し続ける資格はない」と極めて強い圧力をかけています。

「本気」の企業を見抜く3つのサイン

2026年現在、多くの企業が改善案を出していますが、ポーズだけの企業も少なくありません。投資家がチェックすべき「本物のサイン」は3つだけです。

  1. 「数字」で約束しているか: 「努力する」ではなく「ROE 8%以上」と具体的な数値を公約している。
  2. 「持ち合い株」を捨てているか: 馴れ合いで持つ他社の株を売り、その金を自社株買い(株価を上げる燃料)に回す計画がある。
  3. 「稼ぐ効率(ROIC)」を意識しているか: 儲からない事業をズルズル続けず、切り捨てる覚悟がある。

【厳選】資本効率の劇的改善が期待できる3銘柄

前述の基準に基づき、今まさに「1倍割れ」からの脱却を本気で目指している3銘柄を厳選しました。

銘柄1:AGC(5201)〜「素材の宿命」を捨てる、巨艦の変革〜

※画像はイメージです。

素材メーカーは巨額投資が必要なため、長年PBR1倍割れが「定位置」でした。しかし、今のAGCは違います。

  • 本気のサイン: 儲からない事業を切り捨て、稼げる分野(電子・ライフサイエンス)へ資金を集中させる「ROIC経営」を現場まで徹底しています。
  • 数字の裏付け: 不採算だった欧州事業の構造改革に目処をつけ、利益率を自らコントロールし始めています。
  • 投資判断の指針: 営業利益の回復とともに、PBR0.8〜0.9倍という「格安」からの脱却は、もはや時間の問題です。

銘柄2:グローリー(6457)〜「全額還元」という狂気的コミット〜

※画像はイメージです。

通貨処理機で世界シェア1位。稼ぎすぎて現金が溜まり、逆にPBRが低迷していた同社が、驚きの策を打ち出しました。

  • 本気のサイン: 「総還元性向100%以上」の表明。利益のすべてを株主に返すだけでなく、過去の蓄えを切り崩してでも還元するという宣戦布告です。
  • 数字の裏付け: 自己資本比率50%超という圧倒的なキャッシュを背景に、大規模な自社株買いを実行中。
  • 投資判断の指針: 利益を溜め込まず、強制的に「資本をスリム化」することで、数理的にPBRを1倍へと押し上げています。

銘柄3:大日本印刷(7912)〜「DNPショック」から始まった再評価〜

※画像はイメージです。

かつての印刷会社は、今や半導体部材などのハイテク企業です。市場を驚かせた大規模改善策は、今も継続しています。

  • 本気のサイン: 政策保有株(馴れ合いの持ち株)を数千億円規模で売り払い、その資金をすべて自社株買いに充当。
  • 数字の裏付け: 2025年末についにPBR1倍を突破。単なる「割安」を卒業し、「成長株」として評価され始めています。
  • 投資判断の指針: 1倍超えはゴールではなくスタートです。印刷に依存しない高収益体質へと脱皮したことで、今後は1倍が「下限」となる新ステージに入ったと判断します。

注意すべき「永遠の1倍割れ」:バリュートラップの正体

PBRが低いという理由だけで投資するのは、極めて危険な「バリュートラップ(割安の罠)」に陥るリスクがあります。東証の要請があってもなお、1倍を割り込み続ける企業には明確な「負の共通点」が存在します。

1. 経営陣による「株価の放棄」

最も注意すべきは、株価を「市場が決めるもの」と決めつけ、自分たちの責任を放棄している企業です。

  • サイン: 東証の改善要請に対し、いつまでも「検討中」のまま放置している、あるいは形式的な開示で済ませている。
  • 実態: 豊富な現金を「保身」のために死蔵させ、株主への還元も成長投資も行わない「資本の不作為」状態です。

2. 資本を「破壊」し続ける低ROE

ROEが恒常的に5%を下回り、改善の兆しも見えない企業にとって、低PBRは「不当な過小評価」ではなく、「妥当な低評価」です。

  • 赤字事業の聖域化: 「祖業だから」という感情的な理由で、損失を出し続ける事業を放置している。
  • ガバナンスの欠如: 親会社の利益を優先する「親子上場」の弊害や、不透明なM&Aを繰り返す。

投資は「静止画」ではなく「動画」で見る

PBRの低さという「今の数字(静止画)」だけに惑わされてはいけません。重要なのは、経営陣の姿勢や資本政策がどう変わるかという「変化(動画)」です。数字に動きがない企業に投資することは、あなたの大切な資本を「凍結」させることと同じなのです。

結論:投資家は「数字の変化」を買うべきである

PBR1倍割れ解消に向けた東証の要請は、日本企業の経営環境を根本から変えました。しかし、我々投資家にとって真に価値があるのは、「PBRが低い」という事実そのものではありません。「PBR1倍という目的地に向けた、変化の加速度」にこそ、リターン(収益)の源泉があります。

今回選定したAGC、グローリー、大日本印刷の3社は、それぞれ異なるアプローチで「本気の変革」を起こしつつあります。彼らに共通するのは、単なる場当たり的な増配ではなく、経営の本質(ROICの導入や事業再編)に踏み込んだ規律です。

今後、日本市場は「資本の規律」を受け入れた企業と、拒絶し続けた企業の二極化がより鮮明になります。投資家は、以下の3つの指標が「改善のベクトル」を描いているかを常に監視し続けてください。

  • ROEの推移: 株主資本コスト(8%)を安定的に上回る軌道にあるか。
  • 総還元性向: 創出したキャッシュを溜め込まず、自社株買いや高効率な投資へ回しているか。
  • ガバナンスの透明性: 政策保有株を解消し、株主と建設的な対話を行っているか。

PBRの低さは、過去の非効率の象徴です。しかし、それを「改善の余地」と捉えて行動を開始した企業にとって、PBR1倍は通過点に過ぎません。我々投資家は、企業の「数字の変化」というドラマに投資し、日本経済の再生と自己の資産形成を同期させるべきなのです。

※株の取引はすべて自己責任でお願いいたします。本記事は特定の銘柄を推奨するものではなく、情報提供を目的としたものです。投資判断はご自身の責任で行ってください。