2026年2月。第二次高市政権の誕生は、日本の株式市場、とりわけ「重厚長大」産業にとって戦後最大級のパラダイムシフトとなりました。
これまで、日本の防衛費は常に「財政を圧迫する必要なコスト(支出)」として語られてきました。しかし、高市首相が掲げる「高市ドクトリン」は、この積年の常識を根底から覆しました。防衛力を単なる盾ではなく、「国家の成長エンジン(投資)」および「経済安全保障の基盤」として再定義しました。
この方針転換は、すでに具体的な数字となって現れています。当初2027年度を目標としていた「防衛予算の対GDP比2%」の達成は2年も前倒しされ、事実上の「国策による買い支え」が決定しました。これにより、重工メーカー各社は数十年先までの収益を見通せる「政策的担保」を手にし、AI・ロボティクス・次世代通信といった先端分野への大規模な設備投資へと一斉に舵を切っています。
本記事では、単なる「兵器メーカー」という枠組みを超え、防衛技術を宇宙・エネルギー・インフラへと転用(デュアルユース)することで、民間ビジネスにおいて爆発的な利益を生み出し始めた「新・重厚長大企業」の姿を追います。
「死の商人」という古びたレッテルは、もはや過去のものです。今、彼らは「平和を維持するためのイノベーション」を担う、ESG投資の新たな本命へと変貌を遂げています。
三菱重工業 (7011) & IHI (7013):「空と宇宙」を制する技術の心臓
日本の防衛産業を語る上で、この重工2社はもはや「単なるメーカー」ではありません。彼らは防衛予算という「究極のR&D(研究開発)費」を原資に世界最先端の技術を磨き、それを民間市場で爆発的な利益に変える「錬金術」のサイクルを確立し始めています。
三菱重工業:防衛の絶対王者から「宇宙・エネルギーの覇者」へ
三菱重工の強さは、もはや「防衛頼み」ではありません。圧倒的な受注残高が、その変貌を物語っています。
- 12兆円の巨大な壁: 2025年度第3四半期時点で、受注残高は約12兆円を突破。前年度末からわずか9カ月で2兆円も積み上がりました。高市政権による防衛予算の前倒し執行は、この「積み上がり」をさらに加速させています。
- H3ロケットの商用化: ミサイル誘導技術の結晶であるH3ロケットは、防衛省の衛星網整備という「公的需要」でコストを抑えつつ、世界中の民間衛星を打ち上げる「宇宙輸送ビジネス」へと進化しました。
- ガスタービンの転用(GTCC): 戦闘機や艦艇の心臓部で培った高温・高圧制御技術は、今や水素燃料発電(GTCC)の核心部へ。防衛技術が、脱炭素社会における「電力インフラの切り札」として外貨を稼ぎ出しています。
IHI:エンジンの極致が生み出す「ドル箱」のアフターマーケット
IHIは、英国・イタリアとの共同開発である次期戦闘機(GCAP)エンジンの主導権を握り、日本の技術を世界トップ水準へ押し上げました。しかし、投資家が真に注目すべきは、その「極めて強固な収益モデル」への転換です。
- 技術の「還流」が生む信頼性: 防衛用エンジンで求められる極限の耐久性と長寿命化技術は、そのままボーイングやエアバス向けの民間エンジンへ転用されます。軍用で鍛えられた「壊れない技術」が、民間航空市場での圧倒的な選好理由となっています。
- 驚異のスペアパーツ戦略: IHIの民間エンジン事業における売上構成は、驚くべき比率を誇ります。
- 新品本体の販売:34%
- スペアパーツ(交換部品):60%
一度エンジンを納入すれば、その後の数十年間にわたりメンテナンスと部品交換で高利益を享受する。防衛予算で開発リスクを最小化し、民間のアフターマーケットで果実を刈り取る——。この「理想的なデュアルユース」の完成が、同社の利益を押し上げています。
スカパーJSAT (9412) & NEC (6701):「見えない戦場」の支配者たち
現代の安全保障は、もはや地図上の国境線だけで決まるものではありません。勝敗を分けるのは、地上から数百キロ上空の「宇宙」と、通信の動脈である「サイバー空間」という目に見えない領域です。
スカパーJSAT:娯楽の王者は「宇宙インフラの覇者」へ
「スカパー!」というブランド名からテレビ局を連想するのは、もはや古い投資家の姿です。現在の同社は、アジア最大の通信衛星群を操る「日本唯一の宇宙実業社」へと変貌を遂げています。
- 「国費」で構築する衛星網: 防衛省が主導する「衛星コンステレーション事業(小型衛星群による監視網)」を落札。インフラ構築費用の多くを国が負担し、同社はその運用を担うことで、リスクを抑えつつ最先端の衛星ノウハウを蓄積しています。
- Space Compass構想: NTTと共同で進める「宇宙データセンター」は、まさにデュアルユースの象徴です。
防衛省向けの地球観測データ提供業務だけで、すでに約90億円の大型受注を計上。この安定した「国策収益」を原資に、民間の衛星通信市場を独占する——。これこそが、同社の描く「負けない宇宙ビジネス」の全貌です。
NEC:高市首相が放つ「サイバー防衛」のデジタルな盾
第二次高市政権が最優先課題として掲げる「能動的サイバー防御(Active Cyber Defense)」。敵の攻撃を未然に防ぐこの新法案の成立により、日本のサイバーセキュリティの勢力図は塗り替えられました。その中心に立つのがNECです。
- 利益倍増が示す「特需」の正体: 航空宇宙・防衛分野の営業利益は、前年同期の54億円から134億円へと2倍以上に急増。これは単なる一時的な利益ではなく、国家レベルのセキュリティ刷新に伴う「構造的な増益」の始まりを予感させます。
- 「デジタル」と「物理」の二段構え: NECの強みは、サイバー空間を守るAI技術だけではありません。実は、世界の海に張り巡らされた「海底ケーブル(物理的な通信インフラ)」においても世界トップ3の一角を占めています。
- 経済安保の要: 通信の「中身(サイバー)」と「経路(海底ケーブル)」の両方を国産技術で守る。高市政権下で「経済安全保障の守護神」としての地位を確立したNECは、IT企業の枠を超えた存在です。
川崎重工業 (7012):潜水艦から水素へ。「密閉技術」の転用
最後に紹介するのは、日本の製造業において最も美しい「技術の転生(デュアルユース)」を実現している川崎重工業です。
究極のピボット:深海の静寂から、クリーンエネルギーの海へ
川崎重工は、三菱重工と並び日本の潜水艦建造を二分する「海のスぺシャリスト」です。潜水艦という、凄まじい水圧に耐えながら乗組員の命と機密を守り抜く「極限の密閉空間制御」。この技術を保有する企業は、世界でも片手で数えるほどしか存在しません。
同社はいま、この「死守する技術」を、地球を救うための「運ぶ技術」へと昇華させています。
- 世界初の液化水素運搬船: 2026年1月、同社は世界最大となる4万立方メートル級の液化水素運搬船の建造契約を締結しました。
- 技術の正当なる進化: 水素を液体として運ぶには、「マイナス253度」という絶対零度に近い極低温を維持し続けなければなりません。潜水艦で培った断熱・密封・圧力制御のノウハウがなければ、このロジスティクスは不可能なのです。
高市政権が進める「エネルギーの自立化」において、水素サプライチェーンの構築は国策の柱。川崎重工の技術は、そのインフラを支える唯一無二の「鍵」となっています。
医療ロボットへの応用:深海の操作術が「命」を繋ぐ
さらに、同社のデュアルユースは「船」だけに留まりません。潜水艦の複雑かつ精密な操作を司るマニピュレーター(機械腕)技術は、医療の最前線へと姿を変えました。
- 国産初の手術支援ロボット「hinotori」: 繊細な動きと絶対的な信頼性が求められる医療現場。潜水艦という「失敗が許されない環境」で磨かれた制御理論が、外科医の手先となるロボットに命を吹き込んでいます。
「国を守るために磨かれた盾」が、ある時は「脱炭素の急先鋒」となり、ある時は「手術室の救世主」となる。これこそが、高市政権下の日本が世界に誇るべき「平和産業としての防衛技術」の真髄です。
「平和を守るコスト」が「未来への種銭」になる
第二次高市政権下で進む防衛予算の増額は、単なる軍拡競争ではありません。それは、AI、宇宙、量子通信、新素材といった最先端分野への、国家による「大規模なR&D(研究開発)投資」と同義です。
投資の世界には、時代を超えて語り継がれる「国策に売りなし」という格言があります。今回分析した5社は、防衛という「盤石で安定した需要」を盾にしながら、そこから派生した技術で民間市場の「青天井の成長」を狙う、極めてユニークな立ち位置にいます。
| 企業名 | 防衛・安全保障の役割 | 民間ビジネスへの転用(デュアルユース) |
| 三菱重工業 | 防衛の絶対王者・ミサイル | H3ロケット、水素発電(GTCC) |
| IHI | 次期戦闘機エンジン主導 | 民間航空機エンジン、アフターマーケット |
| スカパーJSAT | 衛星コンステレーション | 宇宙データセンター、観測データ販売 |
| NEC | 能動的サイバー防御の要 | 海底ケーブル、AIセキュリティ |
| 川崎重工業 | 潜水艦建造の双璧 | 液化水素運搬船、手術支援ロボット |
地政学リスクが日常化する不透明な時代において、これら「新・重厚長大」銘柄は、ポートフォリオの土台を支える「強靭な盾」となり、同時に資産を次のステージへと押し上げる「鋭い矛」となるでしょう。
かつて「コスト」と呼ばれた防衛予算は、いまや日本の技術覇権を取り戻すための「投資」へと姿を変えました。この巨大な潮流(メガトレンド)に、あなたは投資家としてどう向き合うでしょうか。
(※投資は自己責任でお願いいたします。株価や配当利回りは執筆時点のデータを基にしており、将来の成果を保証するものではありません。)