深海レアアース元年:『眠れる国富』を国益に変える先駆者企業たち―レアアースシリーズ②

2026年1月、日本の資源安全保障の歴史において、後世に語り継がれるであろう「転換点」が訪れています。小笠原諸島・南鳥島沖の排他的経済水域(EEZ)において、地球深部探査船「ちきゅう」を用いた水深6,000メートルからのレアアース泥連続揚泥試験が、いよいよ重大な局面を迎えているのです。

これまで「日本には資源がない」という言葉は、私たちの常識であり、逃れられない呪縛でもありました。しかし、その前提は今、深海の底から覆されようとしています。南鳥島周辺に眠るレアアースの推定価値は、約165兆円。これは日本の国家予算の約1.5年分に匹敵する、文字通りの「眠れる国富」です。

2026年、この膨大な富はもはや遠い未来の夢物語ではありません。極限環境を克服する技術的ブレイクスルーと、日米同盟を軸とした強力な国策の進展により、「資源貧国」から「海洋資源大国」への転換を賭けた、実益を伴うカウントダウンが始まっています。

今回は、この深海レアアース事業が日本の資源政策において意味すること、そして投資家として欠かせない厳選3銘柄を紹介します。

水深6,000m、指先に軽自動車が乗る『極限』への挑戦

■ 600気圧の絶望:なぜこれまで「夢物語」だったのか

南鳥島レアアース開発が長年、困難とされてきた最大の理由は、その想像を絶する「極限環境」にあります。

水深6,000メートルの海底における静水圧は約60MPa(約600気圧)。これは例えるなら、「指先の上に軽自動車が1台乗る」ほどの凄まじい重圧です。並の掘削機材であれば投入した瞬間に圧壊し、金属疲労や腐食も地上の数倍というスピードで進行します。この物理的な壁こそが、巨大な利権を前にしてもなお、人類の手を拒み続けてきた正体です。

■ 「点」から「線」へ:物理の壁を突破した統合システム

しかし2026年1月現在、探査船「ちきゅう」はこの難題を、複数の先端技術を組み合わせた「統合揚泥システム」によって克服しつつあります。

  • 進化したライザーパイプ: 石油掘削の知見をベースに、特殊合金とカーボン複合材を組み合わせた高強度・軽量ライザーを採用。これにより、自身の重みでパイプが破断するリスクや、激しい潮流による振動を劇的に抑え込むことに成功しました。
  • セラミックの盾: 過去の試験で最大の失敗要因だったのが、泥に含まれる硬質粒子によるポンプの摩耗でした。これを、最新のセラミックコーティング技術と独自のスクリュー機構によって解決。24時間を超える連続稼働でも性能が維持されることが実証されました。

■ 商業化への「技術的基盤」の確立

これまでのように「少しだけサンプルを持ち帰る(点)」というフェーズは、2025年で終わりました。

2026年に行われている連続揚泥の成功は、広大な海底から安定して資源を吸い上げ続ける「線」の技術、すなわち商業採掘に向けた持続可能なプラットフォームが完成したことを意味しています。この「極限を制御する技術」の独占こそが、参入を狙う他国を寄せ付けない、日本企業にとっての巨大な「堀」となるのです。

日米共同開発 ——「西側諸国の生命線」となる南鳥島

■ トランプ・高市合意:国策から「同盟戦略」へ

このプロジェクトは現在、一国の資源開発という枠を完全に超え、「西側諸国の共同防衛戦略」へと格上げされています。

2025年末の日米首脳会談において、高市早苗首相とドナルド・トランプ大統領は「南鳥島レアアースの日米共同開発」に合意。これにより、これまで日本単独では懸念されていた「経済性」と「安全保障」の課題が、一気に解消に向かっています。

  • 米国の戦略資本が流入: 米国国防総省(DoD)からの出資や、米MPマテリアルズ社との技術提携が具体化。これにより、開発スピードは劇的に加速しました。
  • 約束された「巨大な出口」: 米国の軍需産業やテスラを筆頭とするEVメーカーへの優先供給枠(オフテイク契約)が設定。長期的な収益見通しが強固になったことで、投資対象としての解像度が一段と高まりました。
  • 日米連携の「資源防衛」: 宇宙(衛星)と海上の両面における日米の哨戒活動により、資源奪取を狙う他国の動きを封じ込める体制が構築されています。

■ 中国の焦りと「資源の武器化」への反撃

中国による「資源の武器化(エコノミック・コアシオン)」というカードを無効化する究極の対抗手段こそが、この南鳥島です。

これに焦りを感じる中国は、海洋調査船「向陽紅」などを日本のEEZ内に頻繁に送り込み、事前通告なしの調査を常態化させるなど、挑発のレベルを引き上げています。しかし、この現場の緊張感こそが、南鳥島が西側サプライチェーンにとって「代わりの効かない生命線」であることの裏返しに他なりません。

「他国が喉から手が出るほど欲しがり、日本と米国が全力で守る」――この構図こそが、南鳥島プロジェクトに付随する「国家レベルのプレミアム」の正体なのです。

厳選3銘柄 —— 深海の富を『現実』に変える技術先駆者たち

投資家として注目すべきは、この前人未到のプロジェクトを支える「替えの効かない技術」を持つ企業群です。彼らは単なる受注企業ではなく、事実上の「技術独占体」として君臨しています。

三井海洋開発(6269)

【役割:採掘システムの統合インテグレーター】 同社は、海底油田で培った浮体式生産設備(FPSO)のノウハウをレアアース採掘に転用した、本プロジェクトの絶対的な主役です。

  • 投資シナリオ: 2026年1月の連続揚泥成功により、同社の技術は「実証済み(Proven)」の段階に達しました。今後は2030年の本格操業に向けた専用採掘船の大型受注が、中長期的な収益の柱として期待されます。
  • 国策プレミアム: 石油価格に左右される「エネルギー関連株」という従来の枠組みから、国家の安全保障を担う「資源インフラ企業」へと市場評価(PERのリレイティング)が大きく変化する過渡期にあります。

東洋エンジニアリング(6330)

【役割:スラリー輸送システムの設計・管理】 JAMSTECとの共同研究の成果を背景に、粘り気のある泥を詰まらせずに6,000m吸い上げる「スラリー輸送」の核心技術を握っています。

  • 投資シナリオ: 2026年、プロジェクトが「研究」から「建設・実装」フェーズへ移行したことで、コンサルティング的な設計料収入に加え、実際の機材調達管理による利益貢献が始まるフェーズに突入しています。

東亜建設工業(1885)

【役割:選鉱・島内処理インフラの構築】 引き揚げられた膨大な泥から不要な水分を分離し、輸送コストを劇的に下げる「ハイドロサイクロン技術」に圧倒的な強みを持ちます。

  • 投資シナリオ: 2027年度の試験採鉱フェーズでは、南鳥島内での選鉱・脱水実証がプロジェクト全体の経済性を決める鍵となります。海洋土木という伝統的セクターから「次世代資源インフラ」という高付加価値領域への進出は、同社の株価にとって強力な再評価材料となるはずです。

経済安全保障プレミアム ——「中国産」に勝てるこれだけの理由

「深海からの採掘は、コストが見合わないのではないか?」 投資家が抱くこの至極真っ当な疑問に対し、2026年現在の回答は極めて明快です。南鳥島には、既存の市場秩序を覆すだけの「圧倒的な優位性」が存在します。

■ 品位の圧倒的な差:1トンの泥に眠る価値

南鳥島のレアアース泥は、現在世界の供給を牛耳る中国の陸上鉱山と比較して、20倍以上の品位(REY濃度5,000ppm超)を誇る「超高品位泥」です。

1トンの泥から抽出できるレアアースの量が圧倒的に多いため、揚泥にかかるコストを差し引いても、最終的な「実質単価」では十分に国際競争力を持ち得ることが最新のシミュレーションで明らかになっています。

■ 「クリーン・レアアース」:汚名なき資源

陸上のレアアース鉱山開発において、常に最大の障壁となるのが放射性物質(トリウム等)の処理です。しかし、南鳥島の泥はこれらをほとんど含みません。

環境負荷を極限まで抑えた「クリーン・レアアース」としてのブランド価値は、サプライチェーンの透明性を求める現代のESG投資、あるいはAppleやテスラといったトップ企業の調達基準において、中国産には真似できない強力なアドバンテージとなります。

■ 「経済安全保障」という名のセーフティ・ネット

さらに、民間企業が直面する市況のボラティリティ(価格変動)リスクは、政府の「経済安全保障推進法」に基づく補助金制度や、安定供給を目的とした政府保証によって保護されています。

コストの壁は今、個別の企業努力を超えた「国家的な必然」によって取り払われつつあります。もはや南鳥島は「掘る価値があるか」を議論する段階ではなく、「いかに早く、安定的に供給体制を構築するか」という実行フェーズにあるのです。

21世紀の『宝の島』が、日本株の景色を変える

■ 「技術的不可能」が「国家の必然」に屈する時

2026年1月、私たちは「技術的な不可能」が「国家的な必然」によって突破される、歴史的な分岐点に立っています。かつては採算性や技術障壁を理由に「夢物語」と切り捨てられてきた深海採掘は、今や西側諸国の存立を賭けた「現実の防衛線」へと変貌を遂げました。

■ 日本株のポートフォリオに組み込む「盾」と「矛」

投資家が直視すべき核心は、この165兆円の富が「日本のEEZ(排他的経済水域)内」という不可侵の領域に存在し、かつ「日米同盟」という強固な盾に守られながら開発が進んでいるという事実です。

2026年を「南鳥島レアアース元年」として、インフラ、技術、精錬の各工程で主導権を握る先駆者たちは、単なる一企業の枠を超え、日本の国力増強と連動した長期的な成長余地を手にしました。

■ 「泥が上がった」という事実の重み

不透明な世界情勢と、資源を武器化する大国の思惑。その荒波の中で、これほど強固な「物理的論拠」を持つ投資テーマは他にありません。「泥が上がり始めた」という事実は、収益化へのカウントダウンが始まったことを告げるサインです。

ゴールドラッシュの狂騒の中で、最後に笑うのは誰か。 21世紀の日本において、それは深海の底に眠る「国富」を地上へと引き揚げる、確かな技術に賭けた者たちかもしれません。

(※投資は自己責任でお願いいたします。株価や配当利回りは執筆時点のデータを基にしており、将来の成果を保証するものではありません。)