防衛予算倍増の恩恵はどこへ流れる?「陰の受益者」中小型ツルハシ株5選

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「防衛株に投資したい。でも三菱重工は高い……」——そう思っている方、少なくないのではないでしょうか。防衛費のGDP比2%達成が視野に入り、防衛大手の株価はすでに大きく動いています。後から乗ろうとすれば高値掴みのリスクがある。

でもここで視点を変えてみましょう。ゴールドラッシュで最も儲けたのは金を掘った人ではなく、ツルハシを売った人だったという話があります。三菱重工・IHI・川崎重工が防衛装備品の主契約者(プライム)として受注を増やすとき、その下に連なる部品・素材・セキュリティ・インフラ企業にも発注が増えます。しかも、まだ株価の反応が遅い中小型銘柄が残っています。

以前の記事では防衛大手のデュアルユース戦略を取り上げました。今回はその逆アプローチ——防衛予算10兆円超が流れ込む川下の「陰の受益者」、時価総額3,000億円以下の中小型ツルハシ銘柄を5社、テーマ別に掘り下げます。

防衛費2倍で潤うのは三菱重工だけじゃない

2026年度の日本の防衛関連費は総額10兆6千億円規模(GDP比1.9%)。2027年度にGDP比2%達成を目指す方針の下、装備品調達・研究開発・サイバー安全保障・公共インフラ整備と4つの経費領域すべてに国家資金が流れ込んでいます。

防衛大手が受注を増やすと、その先にある「サプライヤーの輪」も確実に活性化します。三菱重工が護衛艦を受注すれば、船体の部品・電子部品・センサー・コネクタを納入する中小メーカー群に発注が下ります。川崎重工が輸送機を製造すれば、飛行制御装置・慣性航法装置・油圧機器の専門メーカーが潤います。

「防衛予算が10兆円になった」は大手だけの話ではなく、その川下に連なる中小・中堅企業に対する、10年単位の安定発注の始まりを意味します。しかも、株価はまだ防衛テーマとして十分に評価されていない中小型銘柄が残っています。

防衛大手(三菱重工・IHI・川崎重工等)のデュアルユース戦略については、こちらの記事で詳しく解説しています。

第二次高市政権が放つ「国策」の矢:防衛・宇宙産業の「デュアルユース」革命

今回の銘柄選定基準

5銘柄の選定にあたり、以下の基準を設けました。

  • 時価総額3,000億円以下(プライム大手を除いた中小型のみ)
  • 防衛省または防衛大手への納入実績・受注がある
  • 配当利回り2.0%以上または増配トレンドあり(成長型のサイバー銘柄・火器銘柄は例外として本文で注記)
  • 直近決算で最終赤字でないこと

「知名度が低い=まだ発掘されていない可能性がある」——それが今回の狙いです。

5銘柄まとめテーブル

銘柄名(コード)テーマ時価総額配当利回りニッチ性
豊和工業(6203)特殊素材・火器約190億円約1.5%※国産小銃の唯一製造メーカー
東京計器(7721)電子機器・センサー約1,300億円約0.5%※防衛向け慣性航法装置・レーダー
FFRIセキュリティ(3692)サイバーセキュリティ約500億円約0.6%※国産サイバー防衛の専業企業
新明和工業(7224)防衛インフラ・特殊機材約1,800億円約2.1%国内唯一の飛行艇・特装車メーカー
日本航空電子工業(6807)通信・電子システム約1,600億円約2.1%飛行制御装置・防衛用コネクタ

※豊和工業・東京計器・FFRIセキュリティは配当利回り2%未満。それぞれ「唯一無二の供給者」「急成長の防衛サイバー専業」という観点から採用しており、高配当目的の方には向きません。

①特殊素材・火器:豊和工業(6203)

「小銃を作っている会社が上場している」——これを知ったとき、思わず二度見しました。豊和工業(6203)は、自衛隊の制式小銃(89式・20式小銃)の国内唯一の製造メーカーです。時価総額わずか190億円。防衛テーマの中でも最も知名度が低い、文字通りの「発掘銘柄」です。

防衛省の小火器調達は豊和工業以外に選択肢がありません。競合が国内に存在しないという意味で、これは究極のニッチ独占です。防衛費増額で小銃・弾薬の調達量が増えれば、受注が増えるのは必然の構造です。2026年3月期Q3では火器事業が好調で、防衛部門の受注増の実績が出始めています。

業績・財務:売上高168億円(Q3累計)。工作機械事業が不振で全体利益は減益ですが、防衛部門は着実に拡大中。配当利回りは約1.5%と選定基準を下回るため、配当目的の方には向きません。あくまでも「国策の純粋受益者」としてのテーマ株という位置づけです。

リスク:①防衛省調達の入札は条件変更・予算カットのリスクがあり、単一顧客依存度が高い。②工作機械部門の不振が続くと全体業績を圧迫する。流動性が低く、大口の売買は注意が必要。

②電子機器・センサー:東京計器(7721)

「計器」とついているが、実体は防衛・海洋向け電子機器メーカーです。東京計器(7721)は、自衛艦・航空機向けのレーダー警戒装置・慣性航法装置・ジャイロコンパスを製造する企業で、防衛省との取引は長年にわたります。

慣性航法装置(INS)は、GPSが使えない環境でも自機の位置・速度・姿勢を計算するための核心的なシステムです。ミサイル・航空機・潜水艦など、精密誘導を必要とする防衛装備品に不可欠で、国産化ニーズが高い分野です。2026年3月期Q3では防衛・通信機器事業が好調で、売上高16.1%増・営業利益93.4%増という大幅な増収増益を達成。数字に裏付けが出始めています。

業績・財務:時価総額1,235億円。配当利回りは約0.5〜1%程度と、今回の選定基準(2.0%以上)を満たしません。高配当を求める方には向かない銘柄です。

ただし、注目すべきは業績の急成長です。2026年3月期Q3では防衛・通信機器事業が売上高16.1%増・営業利益93.4%増という大幅な増収増益を達成。防衛予算の増加が受注数字に明確に反映され始めており、今後の利益成長に伴う増配の可能性は否定できません。

リスク:①防衛予算の配分変更により慣性航法装置の調達量が減少するリスクがある。②船舶・港湾用の計器事業に依存する部分があり、海運市況の変動が業績に波及することがある。

③サイバーセキュリティ:FFRIセキュリティ(3692)

2026年度防衛予算の4つの特別経費の一つが「サイバー安全保障」です。政府が推進する「能動的サイバー防御(Active Cyber Defense)」の実装に向けて、国産のサイバーセキュリティ技術の育成が急務となっています。

FFRIセキュリティ(3692)は、東証グロース上場の国産サイバーセキュリティ専業企業。脆弱性解析・マルウェア解析の研究機関として出発し、防衛省・官公庁向けのセキュリティ分析・研究・教育サービスを提供。政府の「重要技術育成プログラム」関連案件も実施しており、能動的サイバー防御の実装を担う企業の一つです。

業績・財務:Q3累計で売上高28.85億円(+56.9%)、営業利益9.04億円(+365.7%)という急成長。時価総額約640億円の小型株。ただし配当利回りは約0.6%と低く、これは高配当株ではなく成長テーマ株として捉えるべき銘柄です。配当目的の方には向きません。

リスク:①政府のサイバー防衛予算は政策変更の影響を受けやすい。②グロース銘柄のため、市場センチメント悪化時に株価が大きく下落しやすい。③大型競合の参入により競争環境が変わるリスクがある。

④防衛インフラ・特殊機材:新明和工業(7224)

「日本で唯一、飛行艇を作っている会社が上場している」——これもまた、知る人ぞ知る銘柄です。新明和工業(7224)は、海上自衛隊が運用する救難飛行艇「US-2」の国内唯一の製造メーカー。US-2は波高3メートルの荒海にも離着水できる世界唯一の飛行艇であり、海上自衛隊の海難救助活動に不可欠な装備品です。防衛省は2025年度予算概算要求でUS-2の生産継続を決定(1機約219億円計上)。競合が国内に存在しないという意味で、究極のニッチ独占です。

飛行艇の事業だけではありません。自衛隊・警察・消防向けの特装車(高所作業車・レスキュー車両・送水車など)の製造でも圧倒的なシェアを持ちます。さらに、民需分野では産業用高圧洗浄機や流体制御装置など、防衛技術を転用した製品群も展開しています。

防衛費増額の文脈では、「US-2の増産」と「自衛隊・海上保安庁向け特装車両の調達増」という2つのルートで恩恵を受けます。2026年3月期Q3では航空機事業の受注高が前年同期比62.0%増と急拡大しており、防衛予算の増加が受注数字に明確に表れています。

業績・財務:2026年3月期Q3は売上高1,957億円(前年比+4.5%)、営業利益88億円(+6.5%)。配当利回りは約2.1%(予想配当54円、株価2,577円時点)で選定基準の2.0%をほぼ満たします。配当方針はDOE3%程度を目安とした増配基調を採用しており、安定配当への姿勢が明確です。自己資本比率は42.0%と財務の安定性も十分です。

リスク:①防衛省が主要顧客であり、単一顧客集中リスクがある。US-2の調達数が減少・中止になると業績に直接影響する。②特装車事業は国内市場が主体で、景気後退時には自治体の設備投資縮小が逆風になる可能性がある。

⑤通信・電子システム:日本航空電子工業(6807)

「航空電子」という名前から航空会社関連と思われがちですが、日本航空電子工業(6807)はNEC傘下のコネクタ・防衛電子機器メーカーです。飛行制御装置・慣性航法装置・電波高度計など、防衛・宇宙向けの電子機器を製造する一方、スマートフォン・自動車・産業機械向けの高精度コネクタも手がけます。

コネクタは「地味だが絶対に必要な部品」の典型です。防衛装備品の電子システムは、無数の電子部品をつなぐコネクタの品質によって信頼性が決まります。軍用グレードの耐振動・耐衝撃・耐環境性能を持つコネクタは民間品で代替できないため、防衛向けコネクタ市場で確固たるポジションを持つ日本航空電子工業は、典型的なツルハシ銘柄といえます。

業績・財務:時価総額1,600億円。配当利回り約2.1%で選定基準を満たす。NEC子会社として財務基盤は安定しており、防衛予算の増加が飛行制御・航法システムへの需要拡大を通じて業績に反映されやすい構造です。

リスク:①親会社NECの経営方針や防衛事業戦略変更の影響を受けやすい。②コネクタ市場では海外メーカーとのコスト競争があり、民需向け製品の価格下落が利益率を圧迫するリスクがある。

まとめ:防衛テーマは「長期国策」として積み上げる

今回の5銘柄を整理すると:①豊和工業は「国産小銃の唯一の供給者」、②東京計器は防衛向け慣性航法装置・レーダーの専業メーカー、③FFRIセキュリティはサイバー防衛の国産専業として急成長、④新明和工業は国内唯一の飛行艇・特装車メーカーとして防衛省調達を独占、⑤日本航空電子工業は防衛用コネクタ・電子機器のニッチ専業——それぞれ「防衛大手が受注を増やすと確実に恩恵を受ける」という構造を持っています。

防衛テーマは「今年だけ」のブームではなく、少なくとも2027年度のGDP比2%達成まで続く長期トレンドです。焦って一気に集中投資するより、テーマ別に少額ずつ積み上げていく視点が、個人投資家には合っていると思います。

国策テーマのツルハシ銘柄の発掘方法については、レアアースシリーズの記事もあわせてご覧ください。

深海レアアースの「ツルハシ銘柄」を探せ:国策を足元で支える中小型・ニッチトップ6社


※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年5月8日時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。


著者プロフィール

クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産3,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。

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