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4月下旬から始まる決算ラッシュ。配当狙いの個人投資家が一番ワクワクする季節のはずが、今年は開幕前からひと波乱ありました。
2月28日に米・イスラエル・イランの軍事衝突が始まり、ホルムズ海峡の通航量が激減。三井住友DSアセットマネジメントの分析によると、1日93.7隻あった通航数が8.4隻にまで激減し、WTI原油は一時119ドル台へ急騰しました。日経平均は開戦後10営業日で8.5%下落と、久しぶりの強烈な下落相場を食らいました(私も短信どころではなかった)。
4月8日にトランプ大統領が「2週間停戦」を発表したことで市場はいったんリスクオン。ただし4月11〜12日のイスラマバードでの米イラン交渉は合意なしで終了し、4月13日現在もWTI原油は102〜103ドル台で高止まり中。先行きは依然として霧の中です。
こうした環境下で、今年の決算シーズンを読む視点は変わります。「上場企業全体が最高益」という楽観シナリオは一旦棚上げ。今回は「逆風下でも業績を保てる、あるいは恩恵を受けるセクター」を軸に、増配期待の5つのセクターと事前の見抜き方を解説します。
2026年決算:「全体最高益」から「セクター選別」へ
2月末時点では「5年連続の最高益更新見通し」という強気な数字が出ていました。しかし開戦後の環境は大きく変わっています。
現在の市場が直面している主な逆風を整理すると:
- 原油高コスト増:WTIが100ドル超で推移。輸送・素材・航空・化学など、原油を多く使うセクターはコスト圧力が継続
- ホルムズ海峡リスク:4月13日時点で停戦交渉は合意に至らず。通航正常化の見通しは不透明
- 米国関税の影響:製造業・輸出関連への下押し圧力
- 円安の二面性:輸出企業には追い風、輸入企業には逆風
だからこそ今年の決算では「どのセクターが逆風に耐性があるか」「どのセクターは原油高の恩恵を受けるか」という個別の耐性・感応度を見ることが重要です。
増配サプライズが期待できるのは、こうした逆風下でも業績を維持・拡大できる事業構造を持つセクターです。
増配サプライズを事前に見抜く5つの条件
事前に「増配の可能性が高い銘柄」を絞り込む条件を整理します。今回はマクロ環境を踏まえて1条件を追加しました。
- 第3四半期で通期予想を上方修正済み:2026年2月発表の第3四半期決算で、すでに通期業績を上方修正した企業は、本決算でさらなる上振れ&増配を発表する可能性が高い。
- 累進配当を宣言している:「減配しない・維持または増配する」と経営陣がコミットしている企業は、業績が好調なら増配がほぼ確実。
- 連続増配記録を持っている:10年・20年以上の連続増配記録がある企業は、記録維持へのインセンティブが強く、業績が許す限り増配を続ける傾向がある。
- 配当性向が30〜50%程度で増配余地がある:配当性向が低いほど「まだ増やせる余地がある」ことを意味する。上限ギリギリより余裕のある企業のほうが増配の持続性が高い。
- 中東情勢の影響を受けにくい、または恩恵を受ける事業構造か:原油輸入コストの影響が大きい企業は業績下振れリスクがある。資源・エネルギー関連はむしろ追い風。このフィルターを必ず加える。
注目セクター一覧
| セクター | 中東情勢の影響 | 増配期待の主な理由 | 注目される代表銘柄例 |
|---|---|---|---|
| エネルギー(資源) | ★直接の恩恵(最大の追い風) | 原油高で業績上振れ・累進配当 | INPEX、ENEOS、出光興産等 |
| 総合商社 | ◯ LNG・資源価格高止まりで恩恵 | 累進配当の浸透・資源+非資源の両輪 | 三井物産、三菱商事等 |
| 金融(銀行・保険) | △ 直接の影響は限定的 | 金利上昇局面での収益拡大 | 東京海上HD、ふくおかFG等 |
| 半導体・AI関連 | △ 中東リスクと直接無関係 | AIサーバー向け需要の急拡大 | イビデン、アドバンテスト等 |
| 製造業向け人材派遣 | ▲ 製造業の設備投資鈍化リスク | 製造業活況の恩恵(条件付き) | メイテックグループ等 |
セクター別解説
① エネルギー(資源):今回最大の「追い風」セクター
今回の環境で最も強い追い風を受けているのがエネルギーセクターです。WTI原油の100ドル超が続く中、資源開発会社の業績は上振れしやすい構造にあります。
INPEXは2025〜2027年度の中期経営計画において年間90円を起点とする累進配当を明示。業績が好調であればこの水準からの増配が期待できます。ENEOSや出光興産も株主還元を強化する方針を掲げており、エネルギーセクター全体として増配ムードが高まっています。
配当・財務の安定性:累進配当を宣言している銘柄が多く、中長期の安定性は高い。原油高が続く局面では業績が上振れしやすく、増配余地が生まれやすい。
リスク:停戦交渉が進展して原油価格が急落するシナリオに注意。4月8日の一時停戦発表後、石油株は一時的に売り先行となりました。「有事の原油高」は停戦で終わる可能性もある。
エネルギーセクターの具体的な銘柄分析はこちら。
② 総合商社:LNG・資源高で業績が二重に膨らむ
ホルムズ海峡の混乱でLNG・原油価格が高止まりする局面は、資源権益を多く持つ総合商社にとって収益拡大のチャンスでもあります。
三菱商事・三井物産ともに「累進配当(減配せず、業績に応じて増配)」を明確にコミット。三井物産は中期経営計画2026の3年間にわたって累進配当方針を掲げており、資源高が続く局面での増配確度は高いと考えられます。
さらに非資源事業(食料・物流・インフラ等)も拡大しており、資源価格が落ち着いても収益が支えられる「両輪構造」になっています。
配当・財務の安定性:累進配当の宣言があるため、業績が許す限り増配の可能性が高い。財務余力も大きい。
リスク:停戦による資源価格急落、中国経済の減速懸念。関税の影響を受ける事業もあり、個別銘柄ごとにエクスポージャーの確認が必要。
累進配当銘柄の全体像はこちらの記事で詳しく解説しています。
③ 金融(銀行・保険):中東リスクの影響は限定的、金利上昇が追い風
銀行・保険セクターは、中東リスクの直接的な影響が比較的限定的な位置づけです。むしろ日銀の利上げ基調が続く中、収益拡大の恩恵を受けやすい構造にあります。
東京海上ホールディングスは2026年3月期の年間配当を1株あたり210円と発表済み。6期連続の増配で、2020年3月期(75円)から6年で2.8倍に達する水準です。連続増配記録の維持へのインセンティブも強く、業績が許せばさらなる増配の可能性があります。
配当・財務の安定性:大手損保は自然災害リスクはありますが、グローバルでの分散が進み財務基盤は堅固。連続増配の実績も長い。
リスク:中東リスクによる金融市場の混乱が債券評価損につながる可能性。円高進行が海外保険収益に影響する場合もある。
当ブログでは東京海上HDについて詳しく解説した記事もあります。
④ 半導体・AI関連:中東リスクと無関係にAI需要が拡大
AIサーバー向けの半導体・電子部品需要は中東情勢とは直接無関係に拡大しており、「逆風下でも強い」ポジションにあります。
アドバンテストは半導体テスト装置の需要拡大を受け、2026年3月期の中間配当を29円(前年19円から大幅増)に引き上げています。プリント基板大手のイビデンもAIサーバー向けの高付加価値製品が好調で、業績の上方修正が相次いでいます。
配当・財務の安定性:業績連動型の配当が多く、好業績が続く限り増配余地は大きい。中東リスクに対して相対的に耐性がある数少ないセクターの一つ。
リスク:世界景気の減速懸念が上昇しており、IT投資の優先度が下がるリスクがある。半導体サイクルの波に乗りやすく、下降期には業績が急悪化することも。原油高によるコスト増の間接影響も無視できない。
⑤ 製造業向け人材派遣:慎重に見守る局面へ
製造業向けエンジニア派遣は、昨年まで「製造業活況の恩恵を享受できる高利回りセクター」として注目されていました。ただし現在の環境では、慎重なスタンスが必要です。
原油高・関税影響・世界景気減速懸念が重なる中、製造業各社の設備投資計画が保守的に修正されつつあります。エンジニア派遣の需要は製造業の稼働率・投資意欲に直結するため、本決算で業績見通しの下方修正が出てくる可能性もゼロではありません。
配当・財務の安定性:好況期の業績・配当は魅力的。ただし景気循環の影響を受けやすく、製造業が縮小する局面では配当の持続性に注意が必要。
リスク:製造業の設備投資縮小→エンジニア需要急減のシナリオが現実味を帯びてきた。高い配当利回りが維持されるかは、本決算での業績・配当方針の確認が必須。
まとめ:今年の決算ガチャは「シナリオ分け」で臨む
今年の決算シーズンは「停戦進展(リスクオン)」と「戦闘長期化(リスクオフ)」の二つのシナリオが同時進行しています。
4月11〜12日のイスラマバード交渉が合意なしで終わった現時点では、どちらに振れるかは予測困難です。だからこそ事前準備が大事になります。
今回紹介した5つの増配条件をおさらいすると:
- 第3四半期で通期予想を上方修正済み
- 累進配当を宣言している
- 連続増配の記録を持っている
- 配当性向が30〜50%程度で増配余地がある
- 中東情勢の影響を受けにくい or 恩恵を受ける事業構造か
停戦が進展すれば商社・エネルギー株は短期的に売られる可能性があります。逆に長期化すれば、その二セクターが引き続き恩恵を受けます。金融・半導体・AI関連は比較的どちらのシナリオでも底堅い可能性があります。
どんな局面でも、1セクターへの集中投資はリスクが大きいです。複数セクターへの分散を意識した上で、決算発表を待ちましょう。
銘柄選びの大前提となる「高配当株の落とし穴」については、こちらの記事もあわせてどうぞ。
…と偉そうに書きつつ、私も毎年決算ガチャに一喜一憂しています。今年は中東情勢という読めない変数まで加わって、かつてないほど緊張感があります。反省は決算発表後に。
※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年4月13日時点の情報に基づいています。地政学情勢は急速に変化する場合があります。
運営者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産3,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。目標は、全読者が自分でも銘柄分析ができる投資リテラシーを身につけること。