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「日本のエネルギー自給率は19%です」——この数字を初めて聞いたとき、「え、そんなに低いの?」と思いませんでしたか。私はそう思いました。停電もほぼなく、コンビニもガソリンスタンドも普通にある。なのに、そのエネルギーの8割以上を海外から輸入し続けている。これが資源エネルギー庁が示す日本の現実です。
2026年春、その現実が改めて鮮明になりました。米国・イスラエルとイランの軍事衝突を背景に、世界の海上原油輸送量の約2割を担うホルムズ海峡で事実上の封鎖状態が発生。日本の原油輸入の9割以上がこの海峡経由であり、「中東リスクは遠い話」とは言えない状況が現実のものとなっています。
以前の記事では、原油高で恩恵を受けるINPEX周辺の「ツルハシ銘柄」(商社・海運・掘削系)を取り上げました。今回はその逆の視点——「中東から買い続ける構造そのものを変える」国内自給型エネルギーを担う企業を5社、テーマ別に掘り下げます。GW中にじっくり読んでいただける中長期テーマの記事です。
なぜ今、エネルギー自給率が「投資テーマ」として浮上するのか
①自給率19%という構造的な脆弱性
日本の一次エネルギー自給率は、2023年度実績で15.3%。2026年度はIEEJ(日本エネルギー経済研究所)の見通しで約19.2%まで改善する見込みですが、それでもOECD加盟国の中では依然として最低水準です。石油の9割を中東からの輸入に頼り、その多くがホルムズ海峡を通過します。
「自給率19%」は裏を返せば、海外の政治・軍事情勢が変わるだけで、日本のエネルギー調達コストが大きく跳ね上がるリスクを意味します。コロナ禍・ロシアのウクライナ侵攻・そして今回の中東情勢——エネルギー安保は、もはや政策課題ではなく投資テーマです。
②2026年は政策転換の加速期
政府は2025年2月、「第7次エネルギー基本計画」と「GX2040ビジョン」を閣議決定しました。目標は2040年度の電源構成を再生可能エネルギー40〜50%に引き上げること。さらに2026年度からはGX-ETS(排出量取引制度)が本格運用を開始し、企業がCO₂排出コストを負担する仕組みが動き始めます。
政府は「GX経済移行債」で10年間・20兆円規模の先行投資支援を打ち出しています。洋上風力・原子力・蓄電池・送電網のすべてに国家資金が流れ込む流れは、中長期の投資テーマとして見逃せません。
③ホルムズ海峡危機が「他人事」でなくなった
2026年2月以降、米・イスラエル・イランの軍事衝突によりホルムズ海峡は事実上の封鎖状態に。商船への攻撃が29件確認され、少なくとも10名の船員が死亡しました。日本のエネルギー備蓄は約8か月分とされていますが、紛争が長期化すれば産業への打撃は避けられません。
この危機が示したのは、「輸入に頼り続けるリスク」の現実性です。一方で、危機があるからこそ「国内でエネルギーを作る企業」の価値が改めて見直されます。ピンチをチャンスに変えるのが、投資家の視点というものです(笑)。
原油高で恩恵を受ける輸入エネルギー関連の銘柄については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
テーマ別5銘柄:国産エネルギー自給率を上げる企業
①洋上風力:東亜建設工業(1885)
「洋上風力?工事会社?」と思われるかもしれません。洋上風力発電の設置には、海底の基礎工事・基礎杭打ち・ケーブル敷設など、陸上では使えない海洋土木技術が不可欠です。国内でその技術を持つ企業は限られており、東亜建設工業(1885)はその一つ。海洋土木国内2位のマリコン(海洋建設専門会社)です。
政府は2030年度までに洋上風力を1,000万kW導入することを目標とし、案件が順次発注されています。浚渫・埋立・海底基礎工事の専門技術を持つ東亜建設にとって、これは数年にわたる安定受注の源泉となります。「誰が風車を建てるか」ではなく「誰が海底基礎を作るか」——そのニッチを押さえた企業です。
業績・財務:2026年3月期第3四半期は売上高2,567億円(前年同期比+7.0%)、営業利益197.9億円(同+20.5%)と大幅な増収増益。時価総額は2,688億円の中型株で、配当利回りは約3.0%(年間配当92円)。海外事業の好調も業績を後押ししています。
リスク:①洋上風力案件は公共入札のため、政策変更や入札失注の影響を受けやすい。②海洋工事は天候・海象条件に左右されるため工期遅延リスクが常に存在し、コスト超過につながることがある。海外事業比率が高まれば為替リスクも加わる。
②原子力:木村化工機(6378)
「木村化工機?聞いたことない」という方、多いと思います。それがこの銘柄の魅力でもあります。原子力発電所向けの熱交換器・蒸発器・核燃料再処理装置などを製造する専業メーカーで、東証スタンダード上場・時価総額約280億円の小型株です。知名度は低いが、代替が効かない特殊技術を持つ——いわゆる「発掘系」銘柄の典型例です。
原子力は「賛否両論ある」テーマですが、投資テーマとしては政府の明確な方針があります。第7次エネルギー基本計画では原子力の活用継続を明示。既存炉の再稼働・運転期間延長が進むにつれ、炉内設備の点検・改修・再処理装置への需要は着実に増えます。しかも競合が極めて少ない特殊技術領域です。
業績・財務:2026年3月期Q3は売上高190億円(+1.2%)、営業利益17.5億円(-17.8%)と増収ながら減益。一部工事の進捗ズレが影響したとみられ、通期での回復が期待されます。株価1,282円・配当利回り約3.0%。時価総額280億円という規模感は、発見次第で値動きが大きくなる可能性を内包しています。
リスク:①原子力政策は選挙・世論によって変化し得る。再稼働が遅れれば受注も後退する。②規模が小さいため、大型案件の受注有無によって業績が大きくぶれやすい。流動性(売買量)が低い点も注意が必要で、売りたいときに売れないリスクがある。
③蓄電・系統安定化:GSユアサ(6674)
再生可能エネルギーには「発電量が天候次第で変動する」という致命的な弱点があります。その弱点を補うのが蓄電池です。太陽光・風力の余剰電力を蓄え、需要ピーク時に放出する——この機能なくして、再エネの主力電源化はあり得ません。
GSユアサ(6674)は国内最大の蓄電池メーカー。自動車用バッテリーから産業用蓄電システム・EVバッテリーまで幅広く手掛けます。政府がGX投資の一環として蓄電池サプライチェーンの国産化を推進する中、最大の恩恵を受けるポジションにあります。「国産蓄電池」というだけで、エネルギー安保テーマの文脈で語ることができる唯一の大手上場企業です。
業績・財務:2026年3月期Q3は売上高4,330億円(+1.4%)、営業利益380億円(+19.5%)と増収増益。車載用リチウムイオン電池の改善が利益を押し上げています。配当利回りは1.80%(年間配当90円)とやや低めですが、成長テーマとして捉えればトレードオフです。
リスク:①EV市場の普及ペースが市場予想を下回った場合、車載バッテリー部門が重荷になる。②中国・韓国メーカーとのコスト競争が激化しており、蓄電池の価格下落が利益率を圧迫するリスクがある。利回りが低い分、成長期待が剥落した場合の株価下落余地も大きい。
④地熱・水力:電源開発(J-POWER)(9513)
「地熱発電」——日本は世界3位の地熱資源量を持ちながら、これまで開発が遅れてきた分野です。温泉地との調整・国立公園内の規制緩和など課題は多いものの、政府は段階的な規制緩和を進めています。「ポテンシャルの高さ」と「開発の遅れ」が同居している、これこそが投資機会です。
電源開発(J-POWER)(9513)は、日本最大の卸電気事業者として水力61か所・地熱・風力・バイオマスを運営。国産エネルギーの生産者として、他に並ぶ存在がありません。PBR 0.47倍・PER 7.5倍という割安指標も見逃せないポイントです(2026年4月時点)。
業績・財務:2026年3月期Q3は売上高8,645億円(-9.8%)と減収ながら、営業利益1,314億円(+5.1%)と増益。米国の火力事業売却により国内再エネ事業へリソース転換が進んでいます。配当利回り2.73%で安定的。オーストラリアの蓄電・再エネ事業も拡大中です。
リスク:①電力卸市場(JEPX)の価格変動が業績に直結する。電気が余れば卸値が下落し、収益を直撃する。②石炭火力の資産を多く抱えており、脱炭素化コストが今後増大するリスクがある。③大型株のため株価の上昇余地は中小型株より限定的になりやすい。
⑤電力インフラ整備:中電工(1941)
「送電線工事の会社?地味では?」——確かに目立たない。ですが、再エネ・原子力から生み出した電気を家庭や工場に届けるには、送電網・変電設備の整備が不可欠です。しかも国内の電力インフラの多くは高度成長期に建設されたもので、老朽化による更新需要が今後10年間で急増します。「地味だが仕事は必ず来る」系の銘柄です。
中電工(1941)は中国電力グループの電気工事会社。変電設備工事・配電線工事・通信工事を主力とし、再エネ接続工事の案件も増加中です。自己資本比率78.6%という圧倒的な財務安定性が「守り」の軸足を固めており、配当増配予定と合わせてインカムゲインを意識する投資家にも響くスペックです。
業績・財務:2026年3月期Q3は売上高が微減ながら営業利益176億円(+18.7%)と大幅増益。原価管理と施工効率化の成果が出ています。株価4,555円・配当利回り2.81%・時価総額2,624億円の中型株。
リスク:①中国電力グループへの依存度が高く、親会社の経営判断の影響を直接受けやすい。②技術者不足による施工能力の上限が受注拡大の制約になり得る。人件費上昇が続けば、利益率が圧迫されるリスクもある。
5銘柄まとめテーブル
| 銘柄名(コード) | テーマ | 時価総額 | 株価(目安) | 配当利回り | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東亜建設工業(1885) | 洋上風力 | 約2,600億円 | 3,055円 | 約3.0% | 35.6% |
| 木村化工機(6378) | 原子力 | 約280億円 | 1,282円 | 約2.9% | 56.4% |
| GSユアサ(6674) | 蓄電・系統 | 約6,100億円 | 5,411円 | 約1.5% | 50% |
| 電源開発(9513) | 地熱・水力 | 約7,100億円 | 3,801円 | 約2.7% | 36.4% |
| 中電工(1941) | 電力インフラ | 約2,790億円 | 4,555円 | 約2.8% | 77.1% |
※株価・配当利回りは2026年5月1日前後の目安。データは変動します。投資判断の際は各社のIR資料・最新の株価データを必ずご確認ください。
まとめ:自給率19%は弱点であり、投資機会でもある
エネルギー自給率19%という数字は、日本の弱点です。でも同時に、その弱点を解決しようとしている企業群が確実に存在します。洋上風力を支えるマリコン・原子力設備の専業メーカー・国産蓄電池の雄・地熱・水力の最大事業者・老朽電力インフラを更新する工事会社——どれも派手さはないが、国家プロジェクトの「足腰」を支える企業です。
GW中に次のテーマ株の仕込みをじっくり考えるなら、このエネルギー自給テーマはいかがでしょうか。中東情勢が一時的に落ち着いた今こそ、次のリスクシナリオを想定した準備をしておく——そんなGWの過ごし方も、なかなか株クラらしいと思います(笑)。
国策テーマの個別銘柄の探し方については、こちらのツルハシ銘柄シリーズもご参考に。
※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年5月1日時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。
著者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産3,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。目標は、全読者が自分でも銘柄分析ができる投資リテラシーを身につけること。