配送ロボットは街に出たのか:ラストワンマイル自動化の現在地と4社―物流革命シリーズ③

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ネット通販で注文した荷物を受け取るとき、配達してくださる方に「ありがとうございます」と声をかけます。あの一連のやりとりが、いつかロボットに置き換わるのだろうか——そんなことを、ときどき考えます。

「配送ロボットが街を走る時代が来た」という話は、たしかによく耳にするようになりました。ただ、正直に申し上げると、それはまだ限られたエリアでの話です。少なくとも私の生活圏で、ロボットが荷物を運んでいる姿を見かけたことは一度もありません。

それでも、法律の整備は着実に進み、実際の運用も始まっています。「まだ日常ではないが、もう実験だけでもない」——それが今の正確な位置ではないかと思います。今日は、ラストワンマイルの自動化がいまどこまで来ているのかを整理し、この分野に関わる4社を見ていきます。

幹線輸送の自動運転と倉庫の自動化については、こちらの記事で整理しています。

無人トラックはどこまで来たか:社会実装を目前に控えた物流の現在地―物流革命シリーズ①

法整備はどこまで進んだか

まず制度の話から始めます。ここは推測の余地がなく、はっきりしています。

2023年4月に施行された改正道路交通法によって、配送ロボットは「遠隔操作型小型車」という区分に位置づけられました。これが決定的に重要でした。それまでは実証実験のたびに道路使用許可を取る必要がありましたが、この改正で届出制へと移行したのです(警察庁の資料)。

具体的には、一般社団法人ロボットデリバリー協会の安全基準に適合したうえで、都道府県公安委員会に届け出れば、公道を走らせることができます。届出には、使用者、通行する場所、遠隔操作を行う場所、非常停止装置の位置などを記載します。

車体にも要件があります。長さ120cm・幅70cm・高さ120cm以下、最高速度は時速6km以下。そして歩行者に進路を譲る義務があります。時速6kmというのは、人の早歩き程度の速さです。歩道を共有する以上、当然の設計だと思います。

この届出制のもとで日本初の受理を得たのが、パナソニックホールディングスでした。2023年7月に協会の合格証を取得し、8月から運用を開始しています(同社のプレスリリース)。

実際に、どこで走っているのか

では、どこで走っているのか。ここが今日いちばん正確にお伝えしたいところです。

運用が始まった当初の拠点は、神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウンと、東京・丸の内でした。丸の内では2023年8月から公道走行が始まりましたが、当時の規模は2台の同時運行という水準です。街のあちこちを走り回っていたわけではありません。

その後、着実に前進しています。2025年1月には、パナソニックHDが日本で初めて「1人のオペレーターが3地域・合計10台を同時に遠隔監視する」道路使用許可を取得し、実証実験を開始しました。対象は神奈川県藤沢市、大阪府門真市、佐賀県佐賀市です。AIで遠隔オペレーターの負荷を減らすことで、監視できる台数を増やしたとされています(同社の発表)。2022年時点では4台が上限でしたから、進歩は明らかです。

ただし、ここは冷静に受け止めたいところです。10台というのは、日本全国での話です。限られたエリアで、実証として動いている段階であって、街の風景が変わったわけではありません。

関連する数字として、宅配便の再配達率にも触れておきます。国土交通省が年2回実施している調査によれば、再配達率は2025年4月が約8.4%、同年10月が8.3%、そして2026年4月には約7.6%まで下がっています(国土交通省の調査)。着実な改善です。ただし、これが配送ロボットの効果によるものかどうかは、この調査からは分かりません。宅配ボックスの普及や受取方法の多様化など、要因は複数考えられます。

この分野に関わる4社

ここからは、この分野に関わっている企業を見ていきます。数字は2026年8月時点のものです。先にお伝えしておくと、4社のうち2社は無配で、うち1社は最終赤字が続いています配当を目的に見る分野ではない、という点は最初に申し上げておきます。

銘柄名(コード)株価配当時価総額この分野との関わり
パナソニックHD(6752)4,436円利回り1.22%(予想54円)約10.9兆円配送ロボット「ハコボ」を開発・運用
アイサンテクノロジー(4667)1,909円利回り2.36%(予想45円)約106億円高精度3次元地図・点群データ
ACSL(6232)1,754円無配(最終赤字)約342億円国産の産業用ドローン
楽天グループ(4755)864円無配(中間も最終赤字)約1.88兆円EC・物流網・通信インフラ
※株価・時価総額・配当は2026年8月時点のYahoo!ファイナンスの数値です。

パナソニックホールディングス(6752)

配送ロボット「ハコボ」を開発し、届出制のもとで実際に運用してきた企業です。この分野では最も具体的な実績を持っています。株価4,436円、配当利回り1.22%、時価総額約10.9兆円、自己資本比率51.2%。2026年7月末に発表された第1四半期は営業利益が前年同期比110%増と好調で、通期予想も上方修正されました。

注意点としては、同社にとって配送ロボットは事業全体のごく一部にすぎないという点です。家電、車載、住宅設備などを抱える巨大企業なので、ロボット事業が伸びても業績への寄与は限定的です。「配送ロボットの銘柄」として見るには、規模が大きすぎるかもしれません。

アイサンテクノロジー(4667)

測量用ソフトウェアを本業としつつ、自動運転に不可欠な高精度3次元地図を手がける会社です。レーザー計測で取得した点群データを保有しており、全国の高速道路については約3万km分のデータを持つとされています。株価1,909円、配当利回り2.36%、時価総額約106億円、自己資本比率61.7%。

注意点は二つあります。①時価総額約106億円と小型で、株価の値動きが荒くなりやすいことです。②2027年3月期の第1四半期は増収かつ営業黒字に転換したものの、投資有価証券の評価損により最終損益は赤字でした。収益はまだ安定していません。

ACSL(6232)

国産の産業用ドローンを開発する会社です。経済安全保障の観点から国産機体への需要が高まっており、インドにも合弁会社を設立しています。2024年12月期にはインド市場の地上走行ロボットの大型案件が売上に寄与しました。株価1,754円、時価総額約342億円。

ここは特に率直に書きます。同社は現在、無配です。そして最終赤字が続いています。会社予想のEPSはマイナス37.81円、実績ROEはマイナス156.76%です。直近の四半期は北米事業の伸長で営業損失が縮小しましたが、売上高自体は前年同期比で減少しました。PBRは12倍台と、将来への期待が株価に強く織り込まれている状態です。期待が剥がれたときの下落幅も、相応に大きくなりうると考えておく必要があります。

楽天グループ(4755)

EC・物流網・通信インフラを併せ持つ点が、この分野との接点です。2026年1月1日付で楽天マートを含む完全子会社5社を本体に吸収合併し、組織の集約を進めました。株価864円、時価総額約1.88兆円。

こちらも率直にお伝えします。楽天グループは無配です。2026年2月に「剰余金の配当(無配)」を正式に開示しており、復配の時期は未定とされています。2026年12月期の中間決算ではIFRS営業利益が504億円の黒字に転換したものの、親会社株主に帰属する中間損失は109億円と赤字が続いています。自己資本比率は3.4%と非常に低く、財務面は慎重に見ておきたいところです。

私が、この分野をどう見ているか

ここまで整理したうえで、私自身の見方を書いておきます。あくまで一個人の意見として読んでいただければと思います。

私は、この分野をポートフォリオの一部にとどめるようにしています。理由は単純で、実用化のスピードは、たいてい想定より遅れると考えているからです。技術が成立することと、事業として黒字化することの間には、思っている以上の距離があります。10台の実証から全国展開までには、まだ何段階もの壁があるはずです。

それに今回見たとおり、この分野の関連銘柄には無配や赤字の企業が含まれます。私の投資の主力は配当を受け取る高配当株なので、性格がまったく違います。同じ資金を投じるにしても、期待するものも、許容すべきリスクの大きさも別物だと考えています。

そのうえで、こうしたテーマを追いかけること自体には意味があると思っています。制度がどう変わり、どの企業が実際に動いているのかを知っておけば、いざ本格的に普及し始めたときに、慌てずに判断できるからです。買うかどうかは別として、知っておく価値はある。私はそのくらいの距離感で見ています。

国策テーマの「主役」ではなく「装備」を売る企業に注目する考え方は、こちらでまとめています。

ツルハシ投資法とは何か:国策の主役ではなく「装備」を売る企業に投資する

まとめ:三つの層で、進み具合はまったく違う

最後に、シリーズ全体を整理しておきます。物流の自動化には三つの層があり、その進み具合はまったく異なります

幹線輸送(シリーズ①)は、実証を終えて2026年度以降の社会実装を目指している段階。倉庫の中(シリーズ②)は、すでに実用段階にあり、企業の受注や利益として数字に表れています。そしてラストワンマイル(今回)は、法整備が済み、限られたエリアで実運用が始まった段階——ちょうど両者の中間にあたります。

それでも、時速6kmで歩道を進み、人に道を譲るロボットが、たしかに公道を走っている。これは10年前には制度上あり得なかったことです。派手なニュースに乗るのではなく、こうした地味な進み具合を確かめながら見ていくのが、私には合っているように思います。


※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年8月時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。また、技術の実用化時期については各機関の公表資料等に基づくものであり、今後変更される可能性があります。

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