※当記事には広告・プロモーションが含まれます。
2026年6月12日、SpaceXがナスダックに上場しました。初値は公開価格を大きく上回り、時価総額は一時2兆ドルに迫る——史上最大級のIPOとして、宇宙という言葉に再び熱気が集まっています。こうしたニュースを見ると、「宇宙関連株を買ってみたい」と思う方も多いのではないでしょうか。
ただ、私は赤字の宇宙ベンチャーには手を出しません。ロケットや衛星そのものを作る「主役」は夢がありますが、値動きが激しく、財務的にも不安定なものが多いからです。私が探すのはいつも同じ——主役を足元で支える、堅実な中小型のツルハシ銘柄です。本記事は防衛・AIデータセンター・防災・国産エネルギーに続く、Stock Labツルハシシリーズの第8弾。「SpaceXやJAXAが主役なら、その装備を供給する企業がツルハシ」という切り口で、宇宙・衛星インフラを支える5社を厳選してご紹介します。
宇宙産業78兆円時代。主役の裏で需要が増える「装備」とは
宇宙産業は、いま世界的な拡大局面にあります。世界の宇宙関連市場は、2050年に78兆円規模に達するという長期予測もあり、SpaceXの上場はその入口を象徴する出来事と言えます。日本でも、政府は宇宙基本計画で、4兆円規模の国内宇宙産業を2030年代早期に倍増させる目標を掲げています。
その後押しとなっているのが、10年・総額1兆円規模の宇宙戦略基金です。内閣府が基本方針を定め、JAXAが執行主体となって、企業や研究機関の技術開発を継続的に支援しています。防衛省も光データリレー衛星など宇宙関連の発注を増やしており、宇宙は「夢の世界」から「国策で支える基幹産業」へと姿を変えつつあります。
では、なぜベンチャーではなくツルハシなのか。理由はシンプルです。宇宙ベンチャーの多くは赤字で、テーマ性によって株価が大きく上下します。一方、ロケットや衛星に使われる精密部品・地上局アンテナ・特殊素材・試験装置を供給する既存の中小型企業は、本業で黒字を出し、配当を払いながら、宇宙の成長の恩恵も受けられます。金を掘る人(ベンチャー)より、ツルハシを売る人(装備)——これがStock Labの一貫した哲学です。
同じツルハシの発想で防衛分野の中小型株を発掘した記事もあわせてご覧ください。
今回の銘柄選定5基準
5銘柄の選定にあたり、以下の基準を設けました。
- 時価総額3,000億円以下(中小型)を優先
- 宇宙・衛星インフラとの事業連関が明確であること
- 直近決算で黒字(赤字の宇宙ベンチャーは避ける)
- できれば配当がある・財務が健全であること
- 「主役ではなく、主役を支える装備」を供給していること
その結果選んだのが、精密部品・地上局アンテナ・特殊素材・衛星データ・試験装置という5つのサブセクターから1社ずつの計5銘柄です。いずれも宇宙が本業のすべてではなく、堅実な既存事業を持ちながら宇宙が「成長ドライバー」になっている点が共通しています。
宇宙ツルハシ5銘柄 一覧表
| 銘柄名(コード) | サブセクター | 時価総額 | 株価 | 配当利回り | 一言 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本トムソン(6480) | 精密部品・駆動 | 約1,460億円 | 1,857円 | 約1.61% | NASA火星探査機にもベアリング採用 |
| 電気興業(6706) | 地上局・アンテナ | 約325億円 | 3,180円 | 約3.20% | 通信アンテナ専業、純利益+143% |
| 日本カーボン(5302) | 特殊素材 | 約565億円 | 4,670円 | 約4.18% | ロケット用炭素素材、自己資本63.5% |
| アジア航測(9233) | 衛星データ | 約236億円 | 1,103円 | 約3.99% | 衛星測量・地球観測の老舗、PER9.9倍 |
| IMV(7760) | 検査・試験 | 約386億円 | 2,280円 | 約1.32% | H3ロケットの振動試験を支える |
①精密部品・駆動:日本トムソン(6480)――衛星とロケットを「回す」ベアリングの専業
宇宙ツルハシとしての役割
日本トムソン(6480)は、「IKO」ブランドで知られるニードルベアリングと直動案内(リニアモーション)の専業メーカーです。地味な機械要素部品ですが、「物を正確に回す・滑らかに動かす」という機能は、あらゆる精密機器の土台になっています。
宇宙分野との連関は明確です。人工衛星のアンテナ駆動部や太陽電池パドルの可動部、ロケットエンジンの極低温で高速回転する部分など、宇宙機には高精度・高信頼性のベアリングが欠かせません。同社の製品はNASAの火星探査機にも採用された実績があり、過酷な宇宙環境に耐える品質を証明しています。一度採用されれば簡単には置き換えられない、典型的なニッチポジションです。
業績・財務の安定性
2026年3月期は売上高630億円(前期比+15.9%)、営業利益41億円(同+249.6%)と大幅な増益を達成しました。中国を中心とした半導体製造装置向け需要の回復が追い風です。ただし宇宙向けは売上のごく一部で、主力はあくまで半導体・FA・産業機械向け。宇宙は「象徴的なニッチ」と位置づけるのが正確です。配当利回りは約1.61%(年間配当29.5円)です。
リスク・懸念点
①業績の主役は半導体製造装置向けであり、シリコンサイクル(半導体市況の循環)の影響を強く受けます。②宇宙向けは売上の一部にすぎず、宇宙テーマだけで買うと期待先行になりがちです。③時価総額1,460億円は5銘柄中で最も大きく、「発掘感」は相対的に小さい点に留意が必要です。
②地上局・アンテナ:電気興業(6706)――電波を地上で受け止める専業メーカー
宇宙ツルハシとしての役割
電気興業(6706)は、通信用アンテナを主力とする専業メーカーです。携帯電話の基地局アンテナや放送用アンテナで長年の実績を持ち、衛星と地上をつなぐ通信インフラの「地上側」を担っています。
衛星がどれだけ高性能でも、その電波を地上で受信・送信するアンテナや地上局がなければ宇宙インフラは機能しません。同社はこの「地上の出入口」を専門とする企業です。さらに、6G時代に向けたサブテラヘルツ帯アンテナの実機試験に世界で初めて成功するなど、次世代通信の先端技術でも存在感を示しています。成層圏通信(HAPS)や衛星通信の商用化が進むほど、地上アンテナの需要は底堅く伸びると見込まれます。
業績・財務の安定性
2026年3月期は売上高354億円(前期比+8.8%)、営業利益12億円(同+28.2%)、純利益は18.9億円(同+143.1%)と大幅な増益を達成しました。時価総額325億円の小型株でありながら、配当利回りは約3.20%、PERは約12倍と割安感もあります。インカムとバリューの両面で個人投資家に向きやすい銘柄です。
リスク・懸念点
①売上の中心は携帯基地局向けアンテナで、通信キャリアの設備投資サイクルに業績が左右されます。②アンテナは競合も存在し、価格競争による利益率の圧迫リスクがあります。③衛星通信・宇宙向けの売上比率はまだ一部であり、宇宙テーマの本格的な業績貢献はこれからという段階です。
③特殊素材:日本カーボン(5302)――ロケットの熱に耐える炭素素材
宇宙ツルハシとしての役割
日本カーボン(5302)は、黒鉛電極や炭素繊維、ファインカーボンを手がける炭素素材の老舗メーカーです。鉄鋼向けの黒鉛電極が主力ですが、近年は航空宇宙向けの先進材料に力を入れています。
宇宙連関の核心は、C/Cコンポジット(炭素繊維強化炭素複合材)と炭素繊維断熱材です。これらは軽量でありながら極めて高温に耐える素材で、ロケットノズルなど超高温にさらされる宇宙機の部材に採用実績があります。打ち上げ時の数千度の熱に耐える素材は代替が効かず、まさに「足元を支える装備」です。SiC(炭化ケイ素)連続繊維など、次世代の耐熱複合材の分野でも技術蓄積を持っています。
業績・財務の安定性
2026年3月期は売上高379億円、純利益40.8億円と堅調を維持しました。特筆すべきは財務の健全性で、自己資本比率は63.5%、PBRは約0.98倍と、資産に対して株価が割安な水準にあります。配当利回りは約4.18%(年間配当200円)と、5銘柄の中で最も高く、インカム投資家にとって魅力的な水準です。
リスク・懸念点
①売上の柱は鉄鋼向けの黒鉛電極であり、電炉業界の稼働状況や鋼材市況に業績が左右されます。②宇宙・航空向けのファインカーボンは成長分野ですが、まだ全体に占める比率は限定的です。③炭素・黒鉛分野では中国勢との価格競争があり、市況次第で利益率が変動するリスクがあります。
④衛星データ:アジア航測(9233)――宇宙から見た地球を社会に変換する
宇宙ツルハシとしての役割
アジア航測(9233)は、航空測量と空間情報(GIS)を手がける老舗企業です。人工衛星・航空機・ドローンのセンサーで地表を計測し、そのデータを解析して国土管理や防災に役立てる——いわば「宇宙から得たデータを社会インフラに変換する」企業です。
同社は2005年から地球観測衛星の利活用ビジネスを本格化しており、衛星データの運用・流通・解析で国内最大手クラスの地位を築いています。衛星が増えれば増えるほど、そこから得られる膨大なデータを「使える情報」に変換する企業の役割は大きくなります。災害モニタリングや国土強靱化といった国策テーマとも親和性が高く、宇宙の「川下」を担うツルハシと言えます。
業績・財務の安定性
2026年9月期の中間決算は売上高236億円(前年同期比-3.9%)、営業利益34.5億円(同-10.2%)と、公共事業予算の執行の遅れから減収減益となりました。ただし通期では売上高450億円以上・営業利益30億円以上を目標に掲げています。配当利回りは約3.99%、10期連続非減配を継続中で、増配もしています。PERは約9.9倍と、バリュー・インカムの両面で評価できる水準です。
リスク・懸念点
①官公庁向けの売上比率が高く、予算執行のタイミングで業績が振れやすい構造です(足元の中間減益がまさにその例です)。②衛星データ事業そのものの収益化はこれからの段階で、本格貢献には時間がかかる可能性があります。③測量・調査は天候による外業の遅延が業績に影響することがあります。
⑤検査・試験:IMV(7760)――打ち上げ前に「揺らして確かめる」
宇宙ツルハシとしての役割
IMV(7760)は、振動試験システムで国内最大手のメーカーです。製品が輸送中や使用中の振動・衝撃に耐えられるかを確かめる試験装置を製造しており、自動車・電機・防衛など幅広い分野で使われています。
宇宙分野では、この「揺らして確かめる」技術が決定的に重要です。ロケットの打ち上げ時には激しい振動が衛星にかかるため、打ち上げ前に地上で同等の振動を再現し、機器が壊れないかを検証しなければなりません。同社はH3ロケットの試験に長年関与し、イプシロンロケット搭載の小型衛星や、大学が開発する超小型衛星「ひろがり」の振動試験も支えてきました。さらにJAXAが進める宇宙開発の現場で、航空・宇宙・防衛向けのEMC(電磁適合性)試験対応も強化しています。装備を試験するという意味で、究極の裏方ツルハシです。
業績・財務の安定性
2025年9月期は売上高179億円(前期比+17.0%)、営業利益23.2億円(同+25.3%)と過去最高益を更新しました。2026年9月期も売上高200億円(同+11.5%)と増収を見込み、受注残高は前期末比+32.8%と積み上がっています。自己資本比率は51.0%で財務は健全です。配当利回りは約1.32%です。詳しくは同社のH3ロケット試験への貢献に関するリリースもご覧ください。
リスク・懸念点
①試験装置は顧客の設備投資需要に連動するため、景気循環で受注が変動します。②2026年9月期は増収を見込む一方で利益面は減益予想であり、コスト増の影響に注意が必要です。③宇宙向けは試験事業の一部にすぎず、主力は自動車・電機向けである点を踏まえる必要があります。
まとめ:宇宙は夢のテーマ、でも投資は足元で選ぶ
今回の5銘柄を整理すると、①日本トムソンは衛星・ロケットを「回す」ベアリングの専業、②電気興業は電波を地上で受け止めるアンテナのニッチ専業、③日本カーボンはロケットの熱に耐える炭素素材、④アジア航測は衛星データを社会に変換する老舗、⑤IMVは打ち上げ前に「揺らして確かめる」試験装置の最大手——それぞれが宇宙の主役を足元で支える装備の供給者です。
宇宙は確かに夢のあるテーマです。しかし、夢だけでは投資できません。私が宇宙ベンチャーではなくこうした中小型のツルハシを選ぶのは、本業で黒字を出し、配当を払いながら、宇宙の成長の恩恵も受けられるからです。とはいえ、テーマ株はボラティリティ(値動きの幅)が高いのも事実。宇宙関連というだけで株価が乱高下することもあります。だからこそ、ポートフォリオの一部にとどめるのが私の流儀です。SpaceXの上場に沸く今だからこそ、足元の堅実さを忘れずにいたいものです(とはいえ、私も宇宙のロマンに少しだけ心が躍っているのは内緒です)。
AIデータセンターを足元で支えるツルハシ銘柄を発掘した記事もあわせてご覧ください。
※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年6月19日時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。宇宙関連株は値動きが大きい傾向があるためご注意ください。
著者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。