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株主優待が廃止されたとき——「楽しみにしていた食品の詰め合わせが届かなくなった」「QUOカードだと思っていたらなくなっていた」。そんな経験をした投資家は少なくないのではないでしょうか。私もそのひとりです(笑)。
以前の記事で「株主優待が廃止されやすい銘柄の見分け方」を書きました。読んだ後に「そういえばうちの保有銘柄は大丈夫か……」と確認した方も多いのではないでしょうか。今回はその逆アプローチです。廃止されにくい優待を積極的に選ぶという視点で、私が優待銘柄を選ぶときに使っているシンプルな基準を紹介します。
その基準とは、「自社製品を優待として出している企業を選ぶ」ことです。QUOカードや商品券の優待は汎用的で使いやすい反面、企業にとっては「現金を出しているのと同じ」コスト構造になります。一方、自社製品の優待は別の論理で動いています。今回は、その論理をひも解きながら、廃止されにくい自社製品優待を持つ5銘柄を紹介します。
株主優待を選ぶとき、私はまず「その会社の商品を自分が好きか」を確認します。ビールが好きだからビールメーカーの株を買う——という投資哲学です(笑)。6月の権利確定シーズンを前に、参考にしていただければ幸いです。
クオカードより食品。自社製品優待が廃止されにくい3つの理由
理由①:企業のコスト負担が現金より低い
QUOカードや商品券(現金同等物)の優待は、額面通りの現金コストがかかります。一方、自社製品の優待は製造原価(売価の3〜5割程度)で提供できます。業績が少々悪化してもコスト負担が軽いため、廃止圧力がかかりにくいのです。
理由②:優待が「マーケティング」になる
自社製品を株主に届けることは、株主を「商品の実際のユーザー」に育てることを意味します。「使ってみたら美味しかったから追加購入した」「家族に紹介した」という口コミ効果が生まれます。企業にとって優待コスト以上のリターンがあるため、廃止するインセンティブが弱くなります。
理由③:廃止するとファン株主が去る
食品・飲料の自社製品優待には、その商品が好きな人が株主になりやすい傾向があります。廃止すると「商品のファンかつ株主」という最も熱量の高い投資家層が離れる可能性があり、経営陣も廃止に踏み切りにくいのです。
参考データとして:2025年に優待を廃止した企業68社のうち、55.8%がTOBやMBOによる上場廃止が原因でした。上場継続企業に限れば廃止は30社にとどまり、新設175社が大きく上回っています(東京商工リサーチ調べ)。自社製品優待は、この「廃止少数派」の中でもさらに廃止されにくいカテゴリです。
株主優待が廃止されやすい銘柄の見分け方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
今回の選定基準:自社製品+配当+財務の3点セット
今回の5銘柄は、以下の基準で選定しています。
- 優待内容が「自社製品の現物提供」または「自社サービスの直接提供」(QUOカード・外部商品券・外部ポイントのみは除外)
- 配当利回り2%以上、または配当+優待の総合利回りが2%以上
- 直近決算で赤字でない・業績が安定している
- 上場廃止リスク(完全子会社化の予兆)がない
なお、JT(日本たばこ産業・2914)、花王(4452)、アサヒグループHD(2502)、ヤマハ(7951)は、いずれも現時点で優待制度を廃止済みのため除外しています。「有名大企業でも廃止される」という事実が、自社製品優待を積極的に選ぶ理由の一つでもあります。
5銘柄まとめテーブル
| 銘柄名(コード) | 優待内容 | 配当利回り | 優待+配当利回り | 権利確定月 |
|---|---|---|---|---|
| 宝ホールディングス(2531) | 自社グループ製品詰め合わせ(日本酒・焼酎・みりん等)1,000円相当〜 | 約1.8%※ | 約4.5%〜 | 3月 |
| キリンホールディングス(2503) | 自社飲料製品(1年以上:500円相当、3年以上:2,000円相当) | 約3.0% | 約3.2〜3.8% | 12月 |
| ピックルスホールディングス(2935) | 漬物・発酵食品の自社商品詰め合わせ | 約2.5% | 約3.5%(100株) | 2月 |
| カルビー(2229) | 自社製品(ポテトチップス等)1,500円相当(100〜499株) | 約2.3% | 約2.8% | 3月 |
| カゴメ(2811) | 自社製品(野菜ジュース・ケチャップ等)2,000円相当 | 約2.3% | 約2.8% | 6月 |
※宝HDは約1.8%と選定基準の2%をやや下回りますが、優待との合計で2.5%程度になるため採用しています。データは2026年5月13日時点の概算値です。
①酒類・みりん:宝ホールディングス(2531)
宝ホールディングス(2531)は、「宝焼酎」「松竹梅白壁蔵『澪』」「タカラcanチューハイ」「本みりん」などを展開する酒類・調味料メーカーです。株主優待は、グループ会社製品の詰め合わせ(100株以上1年以上保有で1,000円相当、1,000株以上で3,000円相当)。酒類・みりん・清涼飲料水など複数のカテゴリから選択できる設計になっています。
2026年3月基準日からは、長期保有優遇制度を新設しました。1年以上保有を対象の最低条件とし、3年以上継続保有の株主には優待が拡充される仕組みです。「長期保有優遇の導入」は、優待制度を長く維持していくという経営陣のシグナルと読むことができます。廃止への動きとは真逆の方向です。
【配当・財務の安定性】配当利回りは約1.8%(会社予想)。焼酎・みりん事業は国内需要が落ち着いているものの、バイオ・医薬品事業(グループ会社:宝酒造バイオ)が新たな収益柱として育ちつつあります。財務面でも過度な有利子負債はなく、安定した配当継続が見込まれます。
【リスク・懸念点】①アルコール飲料市場は国内の飲酒人口減少というトレンドが逆風。長期的な事業環境の変化が業績に影響し、優待縮小の可能性もゼロではありません。②みりん・調味料事業はシェアが高いが、大手食品メーカーとの競争も続いています。
②ビール・飲料:キリンホールディングス(2503)
キリンホールディングス(2503)は「一番搾り」「午後の紅茶」「キリンレモン」「いろはす」など、日本人に馴染み深いブランドを多数持つ飲料メーカーです。株主優待は、1年以上継続保有で500円相当の自社製品、3年以上継続保有で2,000円相当に拡充される長期保有優遇型です。
「3年以上持ち続けると優待が4倍になる」という設計は、株主に長期保有を促すだけでなく、経営陣にとっても「廃止すると3年以上保有してきた長期株主が大量離脱する」という強いブレーキになります。長期保有優遇型の自社製品優待は、廃止されにくい構造のうえに、長く持つほど優待が充実するという「ダブルのメリット」があります。
【配当・財務の安定性】配当利回りは約3.0%(予想配当76円)。医薬品グループ(協和キリン)や健康食品事業(プラズマ乳酸菌)など、飲料以外の収益柱を持つことで業績が多角化されています。配当は連続増配トレンドにあり、財務の安定感は高配当株として安心感があります。
【リスク・懸念点】①ビール類市場は国内での縮小が続いており、売上高成長には海外展開が必要。②医薬品事業(協和キリン)の業績変動が連結業績を左右する面があり、予期せぬ薬価改定や研究開発の遅延が影響する可能性があります。
③漬物・発酵食品:ピックルスホールディングス(2935)
「ご飯がススムキムチ」でおなじみのピックルスホールディングス(2935)は、漬物・発酵食品に特化した中小型株(東証スタンダード上場)。株主優待は、100株以上保有で自社グループ商品(漬物・キムチ・糀甘酒など)の詰め合わせです。
「ご飯がススムキムチが好きで株主になった」——そういう投資家が一定数いる銘柄で、廃止されると熱量の高いファン株主が離れる典型例。自社製品優待の「理由③」が最もわかりやすく当てはまります。また、乳酸菌「ピーネ12」を使った発酵食品や糀甘酒など健康志向製品の優待品は、株主が「商品に詳しくなる・追加購入する」きっかけにもなります。
【配当・財務の安定性】配当利回りは約2.5%。2026年2月期は経常利益が前期比59.8%増の大幅増益見通しで、業績は急改善中です。配当+優待の総合利回りは約3.5%(100株保有時)。時価総額は小型株の範疇ですが、漬物市場という安定したニッチで高シェアを維持しています。
【リスク・懸念点】①時価総額が小さく、株式の流動性が低い点は注意が必要。大口の売買は株価に影響しやすいため、長期保有前提の投資家向きです。②漬物市場は競合も多く、原材料(野菜・塩)価格の上昇が利益率を圧迫するリスクがあります。
④スナック菓子:カルビー(2229)
「ポテトチップス」「かっぱえびせん」「じゃがりこ」——日本を代表するスナックメーカー、カルビー(2229)が2026年3月末から初めての株主優待制度を導入しました。100株以上500株未満の保有で1,500円相当の自社製品、500株以上で5,000円相当が届きます。
「導入したばかりだから廃止リスクが最小」という論理は直感的にわかりやすい。企業が株主優待を新設するのは、個人株主層を増やし、長期安定株主に来てもらうための意思決定です。新設と同時に廃止を決める経営陣は通常存在しません。また、カルビー製品は「家族全員が知っている」商品群のため、株主がファンになりやすい構造も兼ね備えています。
【配当・財務の安定性】優待新設と同時に、配当を期末60円予想から66円へ増額(配当利回り約2.3%)。自社株買いも発表するなど、株主還元の強化が鮮明になっています。食品大手として財務基盤は安定しており、優待制度の継続には問題ない水準です。
【リスク・懸念点】①2026年3月期は業績下方修正を発表しており(前年同期比経常利益29.8%減)、短期的な業績圧力がある点は正直に付記しておきます。優待と増配で還元を強化しつつも業績が弱い局面のため、今後の回復が確認できるまでは様子見も一手です。②原材料(じゃがいも・植物油脂)の価格上昇が利益率を圧迫しやすい構造があります。
⑤野菜・トマト製品:カゴメ(2811)
「野菜生活100」「カゴメトマトジュース」「カゴメケチャップ」——トマト製品・野菜飲料で国内トップシェアを誇るカゴメ(2811)。株主優待は、100株以上を半年以上保有する株主に、2,000円相当の自社製品セット(野菜ジュース・ケチャップ・トマト缶詰など)を年1回(6月末権利確定)贈呈しています。
カゴメの優待が廃止されにくい理由は「代替品がない」点にあります。カゴメの野菜ジュース・トマト製品は、同社が長年かけて確立したブランドです。優待でそれらを株主に届けることは、株主を「カゴメ製品のファン兼ユーザー」として育てる最良の施策。配当単体での利回りは約1.8%と選定基準の2%をやや下回りますが、優待と合わせた総合利回りは約2.5%に達します。
【配当・財務の安定性】カゴメは農業法人との協業・スマート農業への投資など独自の事業領域を持ち、食品会社の中でも差別化が明確です。連続増配ではないものの、配当を長期的に維持してきた実績があります。自己資本比率は健全な水準で、財務面での安心感は高い部類です。
【リスク・懸念点】①国内市場での少子化・人口減少が野菜飲料の中長期的な需要に影響する可能性があります。②トマト農産物価格の変動が製造コストに影響し、業績の変動要因になります。③配当利回りが単体で2.0%前後のため、優待がなければ利回り水準としての魅力が薄れる点は認識しておく必要があります。
まとめ:自社製品優待は「投資家と企業のwin-win」
今回の5銘柄を整理すると:
- 宝ホールディングス:長期保有優遇の新設で「廃止しにくい方向に舵を切った」実績が証拠
- キリンHD:3年以上保有で優待が4倍になる設計が、廃止への最大のブレーキ
- ピックルスHD:「ご飯がススム」ファン株主を手放せない小型株の自社製品優待
- カルビー:「新設したばかり」が最強の廃止リスク対策。スナック界の王者による初優待
- カゴメ:代替品のない独自ブランド製品で、株主をリアルユーザーに育てる
自社製品優待は、投資家が「商品のファン」になり、企業が「熱量の高い長期株主」を獲得できるwin-winの仕組みです。QUOカードのように「もらってうれしいが、その銘柄でなくてもいい」という感覚ではなく、「この会社の商品が届くから持ち続けたい」という保有動機を生み出します。廃止される理由を探すより、廃止されたくない理由が企業側にもある銘柄を選ぶ——これが長く持ち続けられる優待銘柄の選び方だと思っています。
……と書きながら、私は今年も届いた優待の食品を食べながらこの記事を書いています。おいしい。廃止しないでほしい(笑)。
配当利回りの正しい選び方については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年5月13日時点の情報に基づいており、株価・配当利回り・優待内容は変動します。なお、株主優待は企業の判断により予告なく変更・廃止される場合があります。
著者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産3,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。