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日銀の金融政策決定会合(6月15〜16日開催)まで、来週に迫っています。市場では6月利上げを予想するウォッチャーが9割に迫り(日本経済新聞調査)、植田総裁は6月3日の講演でタカ派的な発言を行い、利上げ機運が一段と高まっています。現行の政策金利は0.75%程度。会合で利上げが実施されれば1.0%台に到達する見込みで、実施されれば2025年12月以来の利上げとなります。
「利上げになったら、自分の高配当株が売られるんじゃないか」——最近、そんな不安の声を耳にします。実際、「金利が上がると高配当株は売られる」という話は、投資の世界では広く知られた通説です。でも、本当にそうなのでしょうか?
先週は「日銀利上げで得する中小型の金融株5選」という記事で、利上げの恩恵を受ける個別銘柄をご紹介しました。今回は視点を引いて、「金利上昇は高配当株全体にとって、敵なのか味方なのか」という問いを整理し、ポートフォリオの点検に役立てていただければと思います。「特定の銘柄を買う」という話ではなく、自分が今持っている銘柄をどう見れば良いか、という考え方の整理です。
「金利が上がると高配当株は売られる」の理屈を理解する
まず「金利上昇=高配当株の敵」という通説の理屈を整理しましょう。
金利が上がると、国債や定期預金など「リスクをほとんど取らなくても一定の利回りが得られる商品」が魅力を増します。たとえば長期国債(10年物)の利回りが1%台後半〜2%近くになれば、「わざわざ個別株のリスクを取らなくても、国債でそこそこの利回りが得られる」という判断が働きはじめます。実際、5月には長期金利が一時2.8%まで上昇する場面もありました。
その結果、「リスクを取って高配当株を保有する意義」が相対的に薄れ、高配当株から資金が流出しやすくなります。特に影響を受けやすいのが、電力・通信・REIT(不動産投資信託)などのディフェンシブ高配当セクターです。これらは業績の変動が小さく「安定した配当が得られる・債券に近い性質の株」として保有される傾向があります。金利が上がると本物の債券との利回り差が縮まり、「なぜ株を持つのか」という問いに答えにくくなる——これが通説の根拠です。

加えて、今回の利上げ局面では物価上昇・円安リスクが重なっており、利上げペースが想定より速くなる可能性も意識されています。そうなれば、金利感応度の高い銘柄への影響はより大きくなりえます。
ここまでが一般的な通説です。しかし、話はそれだけではありません。
先週は、その金利上昇で逆に恩恵を受ける中小型の金融株をご紹介しました。あわせてご覧ください。
一方で、利上げが追い風になる高配当株もある
「金利上昇は高配当株の敵」と言い切れない理由が、少なくとも3つあります。
理由1:金融セクターには追い風
銀行・保険・リース・信販などの金融セクターは、利ザヤ拡大により収益が増えやすい構造を持っています。貸出金利と調達コストの差が広がることで利息収入が増え、増配余地が生まれます。高配当ポートフォリオに金融銘柄が含まれている場合、利上げはむしろ「追い風」になります。メガバンク株だけでなく、先週ご紹介した中小型の地方銀行・信販・証券も同様の恩恵を受けます。
理由2:インフレ局面の価格転嫁力
インフレが進む局面では、商品やサービスの価格を上げられる企業(価格転嫁力のある企業)の業績は底堅くなります。配当は利益から支払われるため、業績が堅調な企業の配当は実質的に目減りしにくい傾向があります。商社・食品・内需系製造業などの一部がこれに当たります。
理由3:利上げは「景気が底堅い」サイン
日銀が利上げを判断するのは、「景気や物価がある程度の強さを維持している」という判断が前提です。景気拡大を伴う利上げであれば、多くの企業の業績は堅調であり、高配当株にとってもプラスの環境です。「利上げ=景気が悪い」とは限りません。
つまり、「金利上昇は高配当株に一律に敵」とは言い切れません。セクターや企業の特性によって、敵にも味方にもなります。これが今回の記事で最も伝えたいことです。
保有株を「金利感応度」で3つに分けて点検する
では実践的に、どう点検すればいいのでしょうか。私がやっているのは、保有銘柄を金利感応度で3タイプに分類することです。以下の表をご覧ください。
| タイプ | 代表セクター | 金利上昇の影響 | 点検ポイント |
|---|---|---|---|
| タイプ1:債券代替型 | 電力・通信・REIT・インフラ | 逆風(資金流出しやすい) | 偏りすぎていないか確認 |
| タイプ2:金融型 | 銀行・保険・リース・信販 | 追い風(利ザヤ拡大・増配余地) | バッファとして一定量持てているか |
| タイプ3:業績連動型 | 商社・内需サービス・製造業 | 中立(業績・配当方針次第) | ポートフォリオの軸として機能しているか |
タイプ1:債券代替型(金利上昇が逆風)
電力・通信・REITなどは、「低リスクで利回りが得られる債券の代替」として保有されることが多いセクターです。金利上昇で本物の債券の利回りが上がると、相対的な魅力が薄れ株価が調整しやすくなります。ただし重要なのは、株価が下がっても配当そのものが減るわけではないという点です。企業の配当方針が変わらなければ、保有を続けることで配当収入は維持されます。点検のポイントは「このセクターに偏りすぎていないか」です。
タイプ2:金融型(金利上昇が追い風)
銀行・保険・リース・信販などは、金利上昇が直接の利益拡大要因になります。貸出金利の上昇が調達コストの増加を上回れば、利ザヤが拡大し増益・増配につながります。利上げ局面では「タイプ1の逆風をタイプ2の追い風でカバーする」というポートフォリオバランスが取れます。先週の記事でご紹介した中小型金融株(南都銀行・オリコ・プレミアグループ・岡三証券・東海東京FHD)はこのタイプ2に該当します。点検のポイントは「バッファとして一定量確保できているか」です。
タイプ3:業績連動型(中立)
商社・内需サービス・価格転嫁力のある製造業などは、金利よりも自社の業績や配当方針が株価を左右します。金利感応度が低く、どの局面でも安定した配当収入の柱になりやすいタイプです。長期保有の中心に置くと、金利の方向にかかわらずポートフォリオ全体が安定します。
この3タイプで自分の保有銘柄を仕分けてみると、「タイプ1(電力・通信・REIT)に偏りすぎていた」という方は、タイプ2の金融銘柄をある程度加えることでバランスが取れます。逆に「すでに金融株が多い」という方は、タイプ3の業績連動型でポートフォリオに安定感を持たせる、という発想が活きてきます。
私が利上げ局面で実際にやっている3つの点検
80銘柄超を保有するクアット自身が、今回の利上げ局面でどう動いているかをお伝えします。
点検1:タイプ1(債券代替型)の割合を確認する
電力・通信・REITなどのディフェンシブ高配当株が、ポートフォリオ全体の何割を占めているかを確認します。3割以上がタイプ1に集中している場合は、タイプ2か3の追加を検討します。比率を把握するだけで、利上げへの感応度の大まかな見当がつきます。特定の銘柄を「今すぐ売る」という判断をする前に、まず全体の構造を把握することが先決です。
点検2:「株価下落」と「減配」を切り離して考える
金利上昇でタイプ1の銘柄の株価が一時的に下がっても、配当が維持されているかどうかを基準に判断します。含み損が出ていても、企業が増配方針を継続していれば「配当収入の設計」は崩れていません。株価の短期変動と、配当という実質的なキャッシュフローは別物として考えることが大切です。「株価が下がった=売る」ではなく、「配当が減った=見直す」という判断軸を持つことをおすすめします。
点検3:あわてて売買せず、新規資金の配分で調整する
利上げ前にあわてて既存保有を動かす必要はありません。私が取っている方法は、「新規に投入する資金をタイプ2や3に多めに配分する」というものです。既存保有をむやみに売ると、税金・手数料のコストが発生します。新規資金の配分先を変えるだけで、時間をかけてポートフォリオのバランスを整えることができます。
私のように80銘柄超を保有していると、3タイプは自然に分散されており、利上げが来ても「どこか1か所が悪化しても他がカバーする」という構造が自然に出来上がっています。これが分散投資の実感として最も大きなメリットの一つです。「利上げでも慌てない」というのは強がりではなく、設計の結果です。
まとめ:金利上昇は「点検のタイミング」にすぎない
「金利上昇は高配当株の敵か味方か」への私の回答は、「セクターによって敵にも味方にもなる。だから一括りにして慌てる必要はない」です。
重要なのは、保有銘柄を金利感応度(タイプ1〜3)で点検し、タイプ1に偏りすぎていないかを確認することです。日銀の6月会合(15〜16日)が利上げになっても、見送りになっても、点検を済ませておけば慌てる必要はありません。
「傘を持って出かければ、晴れても雨でも困らない」——これは為替の記事でも書いた発想ですが、金利局面にも同じくあてはまります。利上げ予想が9割に迫る今こそ、ポートフォリオを静かに点検する良いタイミングかもしれません(笑)。
為替(円安・円高)の変動に対応するポートフォリオの作り方も、同じ「どちらに転んでも困らない設計」の考え方で解説しています。
※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年6月12日時点の情報に基づいており、株価・金利・日銀の政策判断には変更の可能性があります。
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。