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2026年6月16日、日銀は政策金利を0.75%から1.0%へ引き上げることを決定しました。1995年以来、実に31年ぶりの高水準です。中東情勢の緊迫による原油高がインフレを加速させるリスクを抑えるため、市場の大方の予想どおり追加利上げに踏み切った形です。
「利上げ=三菱UFJ・三井住友FGを買う」という発想はわかります。でも、正直なところメガバンクの株価は、この利上げを織り込む形で会合前から大きく上昇していました。そこで今回の記事では、「メガバンクの裏にいる中小型金融」に目を向けます。地方銀行・信販・保証・証券の中から、時価総額おおむね3,000億円前後で金利上昇の恩恵を受けやすい5銘柄を厳選しました。
なお、以前に「4月会合直前!日銀利上げで得する日本株セクター全体の地図」という記事でセクター単位の解説を行いました。今回はその一歩先、個別の中小型銘柄に絞った発掘編です。会合スケジュールは日本銀行公式サイトの公表予定ページでも確認できます。
メガバンクはもう織り込み済み。妙味は”その裏”の中小型にある
2026年の利上げ観測が本格化して以降、三菱UFJFGや三井住友FGは株価が大きく上昇しており、PBRも修正されてきました。金利上昇の恩恵を見越した資金が大手に集中した結果、割安感は薄れています。そして利上げが実際に決定されたことで、その水準訂正はさらに進みました。一方で、同じ「金利上昇の恩恵」を受けるはずの中小型金融には、まだ機関投資家の注目が十分に向いていない銘柄が残っています。
実際、6月の利上げ決定を受けて、今回取り上げる中小型金融株の多くも株価を切り上げました。ただ上昇の度合いには濃淡があり、メガバンクほど買いが集中しきっていない銘柄も残っています。ここからは、その一つひとつを見ていきます。
地方銀行は金利上昇で預貸金利ザヤ(貸出金利と調達コストの差)が広がり、利息収入が増加します。信販・クレジット会社は貸付金利の引き上げが可能になります。証券会社は金利上昇局面で市場参加者の取引が活発化し、手数料収入が増えやすい構造です。保証会社はローン保証のニーズが高まります。主役(メガバンク)の裏でしっかり稼げるツルハシ銘柄が今回のテーマです。
日銀利上げで恩恵を受けるセクター全体の地図については、こちらの記事で詳しく解説しています。
今回の選定基準
以下の4条件でスクリーニングしました。
- 時価総額おおむね3,000億円前後(中小型・機関投資家の注目が薄い)
- 金利上昇の恩恵を受ける金融業態(地方銀行・信販・保証・証券)
- 配当利回り3.0%以上または明確な増配傾向
- 直近決算で黒字・財務状況が健全
メガバンクや大手リース(三菱HCキャピタル、東京センチュリー等)はすでに別記事で紹介済みのため、今回は除外しています。
中小型金融ツルハシ5銘柄一覧
| 銘柄名(コード) | サブセクター | 時価総額 | 株価 | 配当利回り | 一言 |
|---|---|---|---|---|---|
| 南都銀行(8367) | 地方銀行 | 3,173億円 | 約1,922円 | 2.91% | 増益・増配で利ザヤ拡大 |
| オリコ(8585) | 信販・クレジット | 1,571億円 | 約914円 | 4.38% | 銀行保証・決済で金利感応 |
| プレミアグループ(7199) | オートクレジット保証 | 823億円 | 約2,022円 | 3.17% | 中古車ローン保証市場を独走 |
| 岡三証券グループ(8609) | 中堅証券 | 2,476億円 | 約1,071円 | 約4.7% | 取引活性化で手数料増 |
| 東海東京フィナンシャルHD(8616) | 独立系証券 | 2,121億円 | 約814円 | 約6.1% | 記念配当込み・来期は要確認 |
※データは2026年7月時点。株価・配当利回りは変動します。岡三証券グループと東海東京FHDの2027年3月期の配当予想は本記事更新時点で未発表のため、利回りは2026年3月期の実績配当(東海東京は記念配当込み)をもとに算出しています。
① 南都銀行(8367):奈良地盤で増益・増配・利ザヤ拡大の好循環
南都銀行は、奈良県を主要地盤とする地方銀行です。奈良県内では高いシェアを誇り、地域密着型の預金・貸出業務が安定したビジネス基盤を形成しています。金利上昇局面では、預金調達コストを上回るペースで貸出金利が改善する「利ザヤ拡大」が直接の収益増につながります。これまでの超低金利で圧迫されてきた預貸金利ザヤが、利上げによって回復し、利息収入が増加します。
2026年3月期の決算は、経常収益が前期比12.2%増の1,156億円、経常利益が同26.1%増の248億円と大幅な増収増益を達成しました。配当も前期比45円増と大幅に引き上げており、株式分割後の2027年3月期予想は1株当たり56円(実質増配)の見通しです。利上げが決定した現在、株価は約1,922円まで上昇し(配当利回り約2.91%)、時価総額は約3,173億円(2026年7月時点)と、株価上昇の結果おおむね3,000億円の目安をやや上回る水準まで買われてきました。金利上昇シナリオが現実になったことが、素直に評価された形です。
リスク・注意点:奈良県は観光業への依存が高く、地域経済のボラティリティが業績に影響することがあります。また、人口減少が進む中、貸出先の確保や不良債権管理が中長期的な課題です。地方銀行全般に共通するリスクとして、出来高が少ない日に株価が大きく動きやすい点にも注意が必要です。利上げ自体は実現しましたが、ここまでの株価上昇で短期的な過熱感が出ている可能性はあり、次回12月会合に向けた追加利上げ期待が後退する局面では調整もあり得ます。
② オリコ(オリエントコーポレーション・8585):銀行保証事業で金利上昇に乗る信販
オリコは、クレジットカード・ショッピングローン・オートローンを主力とする信販会社です。近年は「銀行保証事業」(銀行が実行した住宅ローンや個人ローンの保証を代行する)の拡大が業績をけん引しており、金利上昇局面では貸付金利の引き上げを通じた収益改善が期待されます。また、銀行保証事業は保証先の銀行が金利上昇の恩恵を受けることで保証需要も高まります。
2026年3月期(通期)の業績は、営業収益が前期比増収増益。決済サービス・銀行保証事業が業績を支えています。時価総額1,571億円(2026年7月時点)、株価約914円、配当利回り4.38%(2027年3月期予想配当40円)と高配当水準を維持しています。かつて業績不振で知られた時期と比べ、事業構造の改善が大きく進んでいます。
リスク・注意点:消費者向け貸付を持つ信販会社は、景気後退局面では貸し倒れ(不良債権)が増加しやすいリスクがあります。金利上昇は収益機会である一方、借り手の返済負担増による延滞率の上昇につながる可能性もあります。利上げが実現した今後は、貸付金利の引き上げ効果が決算にどう表れてくるかが焦点になります。
③ プレミアグループ(7199):中古車ローン保証のニッチな覇者
プレミアグループは、中古車ディーラーを通じたオートクレジット(中古車ローン)の保証・販売金融を主力とする「その他金融業」に分類される会社です。中古車市場は新車価格の高騰を背景に需要が根強く、中古車ローンの保証を担うプレミアグループには安定した保証手数料収入が積み上がっています。また、金利上昇局面ではローン自体の貸付利回りが上昇し、収益性の改善が見込めます。
時価総額823億円と5銘柄中最もコンパクト。ROE(実績)は27.5%と非常に高い収益性を誇ります。株価約2,022円、配当利回り3.17%(2027年3月期予想配当64円)(2026年7月時点)。2026年3月期の第3四半期(累計)では、ファイナンス事業は一時的に伸び率が鈍化したものの、保証サービス・自動車モビリティサービスが堅調に伸び、複合的な収益構造を維持しています。
リスク・注意点:中古車市場の動向に業績が左右される面があります。中古車価格の下落や市場縮小は保証残高の減少につながります。また、同社の主力事業は「その他金融業」に分類されるため、銀行・証券に比べて業態の理解に情報が必要な面もあります。2026年3月期の第3四半期は営業利益が前年比5.8%減と一時的に軟調であった点も注意が必要です。利上げそのものは追い風ですが、中古車という市況商品を土台にしている以上、金利以外の需給要因にも収益が左右される点は意識しておきたいところです。
④ 岡三証券グループ(8609):金利上昇で取引活性化・高利回り中堅証券
岡三証券グループは、愛知県名古屋市に本拠を置く中堅証券会社グループです。株式・債券・投資信託の売買仲介を主軸とし、全国に支店網を持つ独立系証券会社として長い歴史があります。金利上昇局面では株式市場の活性化・債券の新規発行増加・資産運用の見直し需要の高まりが重なり、証券業にとって手数料収入の増加機会になります。
時価総額2,476億円、株価約1,071円、配当利回り約4.7%(2026年7月時点。2026年3月期の配当50円ベース。2027年3月期の配当予想は7月31日の決算発表待ち)と高い利回り水準です。2026年4月に発表した前期決算では過去最高益と増配が確認されており、株主還元への姿勢が明確です。規模がコンパクトな分、大手証券に比べて割安感が残っています。
リスク・注意点:証券業は株式市場の動向に収益が大きく左右されるシクリカル(景気循環型)な業態です。相場の低迷・取引縮小局面では収益が急減するリスクがあります。また、インターネット証券の台頭で対面型証券の手数料収入には構造的な逆風があります。利上げは実現したものの、その効果は株式市場が活況を保つことが前提であり、相場が崩れれば手数料収入は逆回転します。
⑤ 東海東京フィナンシャルHD(8616):中部地域密着の独立系証券・高利回りに注意点あり
東海東京フィナンシャル・ホールディングスは、愛知県名古屋市に本社を置く独立系証券グループです。東海・北陸地方を中心とした地域密着営業を強みとし、プライベートバンキング・資産管理ビジネスに注力しています。富裕層向けの資産運用・投資一任サービスに強みを持ち、金利上昇局面で運用ニーズが高まる環境は追い風になります。
時価総額2,121億円、株価約814円。配当利回りは2026年3月期の実績配当50円(記念配当込み)ベースで表面上約6.1%と高く見えますが、この50円には記念配当(1株当たり16円)が含まれています。普通配当ベースは34円で、2027年3月期の配当予想は7月31日の決算発表で明らかになりますが、記念配当がなくなれば利回りは低下する見込みです。それでも普通配当ベースで4%前後の水準が維持されれば、高配当銘柄として十分な水準です。
リスク・注意点:記念配当の消滅による配当の大幅低下と、それに伴う株価下落が最大のリスクです。来期の普通配当額を必ず確認してから投資判断を行ってください。また岡三証券同様、株式市場の動向に業績が左右されるシクリカルな面があります。「高利回り」の数字だけを見て飛びつくのは危険な銘柄で、7月31日に出る来期の配当予想を必ず確認してから判断してください。
まとめ:利上げ観測を追い風に、中小型金融の”発掘余地”を狙う
今回ご紹介した5銘柄を一言でまとめると、利ザヤ拡大の直接恩恵なら南都銀行、信販・保証の金利感応性ならオリコ・プレミアグループ、取引活性化による手数料増なら岡三証券・東海東京FHDという棲み分けになります。いずれも時価総額3,000億円前後の中小型で、メガバンクよりも機関投資家の注目が薄く発掘余地がある点が共通しています。
利上げは、実際に決定されました。ここからはその効果が各社の決算にどう表れてくるかを見ていくフェーズです。市場の目線は早くも次回12月会合での追加利上げに向かいつつありますが、追加利上げ期待が後退すれば、金利上昇を織り込んで買われてきた金融株が調整する場面もあり得ます。「利上げが決まったから安泰」と考えず、決算の実績を一つずつ確認しながら、ポジションサイズを管理することをおすすめします。分散投資の観点から、金融株だけに集中することも避けてください。
金利上昇局面で円高・円安どちらにも対応できるポートフォリオの作り方については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
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※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年7月時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。次回会合を含め、日銀の政策判断は変更される場合があります。
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。