株主優待を廃止した会社の株価は、その後どうなったか調べました

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株クラで優待銘柄の話になると、かなりの頻度で聞く話があります。

「株主優待の廃止が発表されたら、翌朝の寄り付きで即売り。優待目当ての人が一斉に逃げるから、株価は急落して、そのあとも戻らない」

たしかに、優待廃止のお知らせが出た翌日に、株価がストップ安近くまで売られる場面はよく見かけます。ただ、「急落する」と「そのあとも戻らない」は、別々に確かめる必要がある話です。

そこで今回は、2024年10月から2025年9月までの1年間に株主優待の廃止を発表した上場企業を、見つけられた範囲で全社集めて、発表直後と、その後1年の株価を追いかけてみました。

前回の権利落ち日の検証と同じく、計算の説明がかなり長くなります。結果だけ知りたい方は、まとめまで飛ばしてください……!

権利落ち日、株価は本当に配当分だけ下がるのか調べました

最近、優待廃止はどのくらいあるのか

東京商工リサーチの調査(2026年2月25日公表)によると、2025年に株主優待の廃止を発表した上場企業は68社でした。そのうち38社(55.8%)は、TOB(株式公開買付け)やMBO(経営陣による買収)などによる上場廃止に伴うものです。上場を続ける企業に限ると、廃止は30社で、導入(再導入を含む)の175社を大きく下回っています。

つまり、「優待廃止」のニュースの半分以上は、会社そのものが上場をやめるケースです。今回知りたいのは、上場を続けながら優待をやめた会社の株価なので、この区別が大事になります。

なお、今回対象にした30社の開示資料を読むと、22社が廃止の理由として「公平な利益還元」という趣旨の言葉を使っていました。個人株主だけが受け取れる優待より、すべての株主に届く配当などに還元をまとめる、という説明です。

検証の方法

対象にした会社

2024年10月1日から2025年9月30日までに、株主優待制度の廃止を発表した上場企業を対象にしました。優待の内容の変更や縮小、新設は対象外です。

TDnetの過去の開示は約1か月分しか見られないため、候補は次の方法を組み合わせて集めました。

・TDnetの開示を日付ごとにまとめたアーカイブで、期間中の約8.5万件のタイトルを全件検索(「優待」と「廃止」を含むもの)
・株主還元方針や配当方針の変更など、タイトルに「廃止」がない約700件は、IRBANKに残っている開示資料の本文まで確認
・IRBANKの開示検索と、ウェブ上で公開されている優待廃止の一覧で、漏れがないかを突き合わせ

その結果、制度そのものの廃止を発表した会社は、見つけられた範囲で全68社でした。廃止の中身と、同時に発表した内容は、すべて各社の開示資料の本文で確認しています。

除外した会社

発表の前後1か月以内に、TOB・MBO・株式交換(完全子会社化)・株式併合を発表していた38社は除外しました。株価が優待とは別の理由で動くためです。このほか、優待の一部だけをやめた1社と、「休止」や「1期分の見送り」を発表した3社は、制度の廃止ではないので対象に入れていません。

除外した38社のうち34社は、優待廃止とTOBなどを同じ日に発表していました。残る4社は、TOBなどの発表が先で、その後に優待廃止を発表しています。見つけた68社の半分以上で、優待廃止のお知らせは、TOB・MBOや完全子会社化といった非公開化の発表とセットで出ていたことになります。優待廃止のニュースを見かけたときは、同じ日にTOBなどの開示が出ていないかを確かめると、状況を取り違えにくくなります。

残った30社が今回の対象です。

2つのグループ

・A:廃止だけ(16社)
・B:廃止と同時に、増配・配当方針の強化・自社株買いのいずれかを発表(14社)

Bに入れたのは、増配、配当性向の引き上げ、DOEや累進配当の導入、配当の開始、自社株買いを、廃止と同じ日に発表した会社です。ただし、記念配当・特別配当(1回限りのもの)は増配に含めていません。くら寿司(万博出店の記念配当)と東祥(特別配当1円)は、同じ日に発表していましたが、Aに入れています。

DICは、廃止と同じ日に公表した決算説明資料で、2025年度に100億円程度の追加の株主還元を予定していると示していました。方法はまだ決まっていませんでしたが、増配か自社株買いにあたるため、Bに入れています。業績予想の下方修正を同時に発表した会社はありませんでした。

測り方

・起点:発表より前の最後の取引日の終値(取引時間中の発表は前営業日の終値。東証の取引終了は2024年11月5日から15時30分)
・最初の反応:発表後、最初に取引が始まった日の始値と終値
・その後:起点から5営業日後、20営業日後(約1か月)、120営業日後(約半年)、245営業日後(約1年)の終値
・市場補正後:同じ期間のTOPIX連動ETF(1306)の変化率を差し引いた数字
・配当込み:起点から1年の間に権利落ちした配当を足した数字(1306も分配金込みで比較)

30社のうち7社は取引時間中、1社は取引開始前、22社は取引終了後の発表でした。株式分割・併合と、平河ヒューテックの自己株式の無償割当ては、株数を合わせて調整しています。株価はYahoo!ファイナンスの日足、配当は各社の決算短信や配当の開示で1件ずつ確認しました。1306の分配金は野村アセットマネジメントの決算短信で確認しています。

なお、太洋物産は2025年9月25日の発表のため、この記事の執筆時点ではまだ1年(245営業日)が経っていません。1年後の数字は、同社を除いた29社で集計しています。

結果①:発表直後の反応

区分始値終値終値で下がった社数
A 廃止だけ(16社)−8.2%/−5.7%−8.8%/−5.5%14社
B 還元強化と同時(14社)−2.5%/−2.9%−0.2%/+1.5%6社
全体(30社)−5.5%/−3.9%−4.8%/−2.6%20社
起点(発表前の最後の終値)から、発表後最初の取引日の始値・終値までの変化率。左が平均、右が中央値。

廃止だけのAは、16社中14社が最初の取引日の終値で下がりました。終値の平均は−8.8%、中央値は−5.5%です。定説どおり、「発表されたら下がる」はおおむね当てはまりました。

一方、還元強化と同時に発表したBは、終値で下がったのは14社中6社で、中央値は+1.5%とほぼ横ばいでした。寄り付きでは9社が下げて始まりましたが、終値までにプラスへ戻した会社もありました。

この日の市場全体(1306)の動きは小さく、市場補正後の終値でも、Aは平均−9.2%・中央値−5.9%、Bは平均−0.2%・中央値+0.8%と、ほとんど変わりませんでした。

結果②:その後の1年

区分1か月後半年後1年後
A 廃止だけ−17.1%/−10.9%−8.4%/−13.8%−0.6%/−13.9%
B 還元強化と同時+1.9%/+2.0%+17.9%/+8.3%+19.1%/+19.0%
全体−8.2%/−4.1%+3.9%/+2.8%+8.9%/+10.4%
起点からの株価の変化率(配当を含まない)。1か月後は20営業日後、半年後は120営業日後、1年後は245営業日後。左が平均、右が中央値。1年後はAが15社、全体が29社。

Aは、1か月後にかけてさらに下げが広がりました。20営業日後の中央値は−10.9%で、最初の反応より深くなっています。1年後の中央値は−13.9%でした。

Aの1年後の平均(−0.6%)が中央値よりかなり高いのは、平河ヒューテック1社が1年で約3倍(+209.7%)になった影響です。同社を除くと、Aの1年後の平均は−15.6%になります。

Bは、1か月後の中央値が+2.0%、1年後の中央値は+19.0%でした。株価だけで見ても、1年後には起点を上回っている会社のほうが多い結果です。

区分1年後(配当込み)同・市場補正後起点の株価以上だった社数
A 廃止だけ+0.6%/−12.2%−31.9%/−45.0%5/15社
B 還元強化と同時+22.5%/+22.7%−17.1%/−13.8%10/14社
全体+11.2%/+12.5%−24.7%/−25.5%15/29社
配当込みは、1年の間に権利落ちした配当を加えた変化率。市場補正後は、1306の分配金込みの変化率を差し引いたもの。左が平均、右が中央値。右端は株価だけで起点以上だった社数。

配当を含めると、Aの1年後は平均+0.6%・中央値−12.2%、Bは平均+22.5%・中央値+22.7%です。1年後に株価が起点の水準以上だったのは、Aが15社中5社、Bが14社中10社でした。

ただし、市場全体と比べると話が変わります。この1年は相場全体が大きく上がった時期で、1306は起点によって+21%〜+44%(中央値+36%)上がっていました。そのため市場補正後の数字は、AもBも大きなマイナスです。「起点まで戻ったか」と「市場全体に勝てたか」は、まったく別の問いだということが、はっきり出ました。

AとBの違いから分かること

最初の反応では、終値の中央値でAが−5.5%、Bが+1.5%と、約7ポイントの差がありました。1年後(株価だけ)の中央値では、Aが−13.9%、Bが+19.0%と、差は約33ポイントに広がっています。

冒頭の定説に当てはめると、次のようになります。

・廃止だけのA:「急落し、その後も戻らない」に近い動きでした(1年後に起点以上は15社中5社)
・還元強化と同時のB:直後の下げは小さく、1年後に起点を上回った会社のほうが多い結果でした(14社中10社)

ただ、ここから「増配を同時に発表すれば株価は下がらない」とまでは言えません。Bには東京センチュリーやDIC、MonotaROのような規模の大きい会社も含まれていて、AとBでは、会社の規模や業績の流れなど、優待以外の条件もそろっていません。発表の中身の違いだけで差がついたのかは、このデータでは切り分けられません。

また、1年のあいだに優待を戻した会社もありました。くら寿司は廃止の約2か月後に優待の再導入を発表し、アジャイルメディア・ネットワークは別の形の優待を新設、MRKホールディングスは特別株主優待を実施しています。この3社を除いて集計し直しても、1年後(株価だけ)の中央値はAが−11.0%、Bが+19.0%で、傾向は変わりませんでした。

反応が大きかった会社、小さかった会社

発表後最初の取引日の終値(市場補正後)で並べて、上位と下位の5社ずつを挙げます。

銘柄(コード)区分最初の反応(市場補正後)1年後(配当込み)
空港施設(8864)B+8.4%+37.8%
ウエスコHD(6091)B+6.1%+19.5%
ゼンリン(9474)B+4.9%−18.1%
MonotaRO(3064)B+4.8%−16.9%
オイシックス(3182)B+3.3%−9.3%
…
太洋物産(9941)A−15.0%未到達
ラックランド(9612)A−16.0%−18.3%
くら寿司(2695)A−16.5%−17.6%
REVOLUTION(8894)A−26.5%−71.8%
CRG HD(7041)A−27.2%−29.8%
上段が最初の反応の大きい順の上位5社、下段が下位5社。最初の反応は起点から発表後最初の取引日の終値まで、市場補正後。1年後は245営業日後の配当込みの変化率(市場補正前)。

上位5社は、すべてBのグループでした。

・空港施設は、廃止と同時に、配当性向60%とDOE3.0%を目安にした配当方針と、自社株買いの実施を公表しました。
・ウエスコホールディングスは、増配と自社株買いを同じ日に発表しています。
・ゼンリンは、新しい中長期経営計画でDOE5%以上と、5年間累計の総還元性向100%を掲げました。
・MonotaROは、配当性向50%以上を目安にする方針を示しました。
・オイシックス・ラ・大地は、優待をやめて配当を始めると発表しています。

ただし、この5社のうち、ゼンリン・MonotaRO・オイシックス・ラ・大地の3社は、1年後(配当込み)にはマイナスでした。直後の反応がよかったことと、1年後の株価は、別の話です。

下位5社は、すべてAのグループでした。

・CRGホールディングスは、財務体質の強化を理由に、配当を出していない状態で優待を廃止しました。
・REVOLUTIONは、新設した優待を実施する前に廃止しています。
・ラックランドは、配当による還元を充実させる方針としつつ、具体的な方針は後日公表としていました。
・太洋物産は、企業収益の改善を優先するとして廃止を決めています。
・くら寿司は、万博出店の記念配当を同じ日に発表していましたが、翌日は大きく下げました。その約2か月後に、優待の再導入を発表しています。

1年後に大きく動いた会社には、優待とは別の出来事が重なっていました。平河ヒューテックは期間中に通期業績予想を2回修正しています。REVOLUTIONやReYuu Japanは、第三者割当による資金調達などの開示が続きました。1年後の株価は、廃止そのものより、その後の業績や別の出来事の影響を大きく受けていた、と見るのが自然だと思います。

全30社のデータを見る
銘柄(コード)区分最初の反応(終値)1年後(配当込み)
全国保証(7164)A−0.5%+20.9%
東祥(8920)A−2.9%+17.4%
クックパッド(2193)A−5.2%−8.1%
MRK HD(9980)A−14.1%−8.1%
くら寿司(2695)A−15.8%−17.6%
YCP HD(9257)B−0.2%+48.4%
アジャイルメディア(6573)A−5.9%−20.0%
薬王堂HD(7679)A+0.6%+12.5%
CRG HD(7041)A−27.2%−29.8%
MonotaRO(3064)B+2.3%−16.9%
アドソル日進(3837)B+2.0%+71.0%
武蔵精密(7220)A−3.6%−12.2%
DIC(4631)B+1.6%+35.3%
平河ヒューテック(5821)A−1.6%+213.0%
杉本商事(9932)B−5.1%+14.6%
クシム(2345)A−7.9%+24.2%
REVOLUTION(8894)A−25.6%−71.8%
ゼンリン(9474)B+7.3%−18.1%
トランスコスモス(9715)B+1.4%+26.0%
空港施設(8864)B+10.1%+37.8%
東京センチュリー(8439)B−2.2%+52.0%
ポート(7047)B−15.0%+17.1%
オイシックス(3182)B+3.4%−9.3%
やまや(9994)B−12.3%−24.7%
ラックランド(9612)A−15.8%−18.3%
エンビプロHD(5698)B−2.7%+62.3%
エアトリ(6191)A−2.6%−17.9%
ReYuu Japan(9425)A+1.9%−74.5%
ウエスコHD(6091)B+6.4%+19.5%
太洋物産(9941)A−14.4%未到達
発表日順。最初の反応は起点から発表後最初の取引日の終値まで、1年後は245営業日後の配当込み。いずれも市場補正前。

優待目当てで銘柄を選ぶときの見方

ここからは、買う・売るの判断ではなく、今回のデータから言えそうな「見方」を並べておきます。

① 廃止の開示に、代わりの還元が書かれているか
今回いちばん差が出たのは、廃止と同時に増配や配当方針の強化を発表したかどうかでした。優待廃止のお知らせを見たときは、同じ日に配当や株主還元の開示が出ていないかを確かめるだけでも、状況の見え方が変わります。

② 優待が、その会社の唯一の還元だったか
Aのうち、直前の期に配当を出していなかった8社は、最初の反応(終値)の中央値が−11.2%でした。配当を出していた8社は−2.8%です。社数が少ないので傾向と呼ぶには心もとないのですが、優待しか還元がない会社ほど、廃止の影響を受けやすいと考えると理屈は通ります。

③ 1年後の株価は、優待より業績で動く
1年後の数字は、廃止の有無より、その後の業績の修正や資金調達などの出来事に大きく左右されていました。優待の魅力だけで選んだ銘柄ほど、優待がなくなったときに、持ち続ける理由をもう一度考える必要が出てきます。

優待が廃止されやすい会社のサインについては、以前こちらで整理しました。

株主優待が突然消える!事前に見抜く3つのサイン

反対に、廃止されにくい優待の選び方はこちらです。

廃止されにくい株主優待の選び方:自社製品を出している企業5選

この検証の限界

・対象は1年分、30社(A16社・B14社)だけです。1社の動きで平均が大きく変わる規模です。
・「見つけられた範囲で全社」を目指しましたが、決算資料の中だけで廃止を伝えた会社など、拾いきれていない可能性があります。
・この1年は相場全体が大きく上がった時期でした。対象には中小型株が多く、大型株の比重が大きい1306との比較は、その分を割り引いて見る必要があります。
・AとBの差には、会社の規模や業績など、廃止以外の違いも混ざっています。因果関係までは分かりません。
・1年のあいだに優待を戻した会社が3社ありました(除いても傾向は同じでした)。
・取引時間中に発表した7社は、発表の翌営業日を「最初の反応」としています。
・手数料と税金は考慮していません。

まとめ:定説は、半分だけ当たっていました

1年分・30社を調べた結果、優待廃止だけを発表した会社は、翌日の終値の中央値が−5.5%で、1年後も中央値で−13.9%でした。「急落して、その後も戻らない」という定説は、このグループにはおおむね当てはまりました。

一方、増配などの還元強化と同時に発表した会社は、翌日の中央値が+1.5%、1年後の中央値は+19.0%でした。こちらは定説とは逆の結果です。ただし、どちらのグループも、この1年の市場全体の上昇には追いついていません。

つまり定説は、半分だけ当たっていた、ということになります。そして外れた半分を見分ける手がかりは、廃止のお知らせと同じ日に出ている、もう1枚の開示の中にありそうです。

……と、もっともらしくまとめてみましたが、優待廃止のニュースが流れてきたら、たぶん私もまずタイトルだけで反応してしまいます。前回の権利落ちの検証に続いて、今回も「定説より先にデータを見る」を自分に言い聞かせる結果になりました。そろそろ本当に習慣にしたいところです。

あなたは、優待廃止のお知らせを見たとき、同じ日のほかの開示まで確認しているでしょうか。


※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。記事内の計算は、Yahoo!ファイナンスの日足データ(株式分割等の調整後)と各社の開示資料に基づく概算で、手数料・税金は考慮していません。株価データは2026年9月25日まで、開示資料・配当データは2026年9月時点の情報に基づいています。企業の株主還元方針は変更される場合があります。


著者プロフィール

クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。

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