私の投資哲学まとめ:数字を追いながら、数字に振り回されないために

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投資を始めたばかりの頃の私は、1日に何度も株価アプリを開いていました。通勤電車で開き、昼休みに開き、寝る前にもう一度開く。当時は、それが「真剣に投資に向き合っている姿」だと思い込んでいました。

今の私は、月に一度しか見ません。株価アラートの通知はすべて切りましたし、含み益の画面もほとんど開かなくなりました。それでも資産は、あの頃よりずっと着実に増えています。見る回数を減らしたことが、結果的に投資を前に進めてくれた——これは、自分でも意外な発見でした。

2017年に投資を始めてから今日まで、私はずいぶん遠回りをしてきました。流行りのテーマ株に飛びついては損をし、他人の確信に乗っては狼狽し、そのたびに考え方を組み替えてきました。このブログで書いてきた読み物系の記事は、その試行錯誤の記録でもあります。今日は、これまで書いてきた投資哲学の記事13本を、4つの柱にまとめてご紹介します。心の置き方、スタイルの設計、配当と人生、そして原体験。順番に読んでいただければ、私がどこでつまずき、何を手放して、今どこに立っているのかが見えてくるはずです。

私の投資哲学を貫く「3つの軸」

13本を並べてみると、書いた時期はばらばらでも、同じ考え方が繰り返し出てきます。私の投資を貫く軸は、突き詰めると3つになります。

軸1:数字を追う。でも、数字に振り回されない

銘柄を選ぶときは、過去10年の配当推移を1年ずつ並べ、配当性向や自己資本比率、営業キャッシュフローまで徹底的に確認します。ここは一切、手を抜きません。「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」が、私の出発点だからです。一方で、日々の株価という数字には、ほとんど関心を払いません。同じ「数字」でも、配当や財務は企業が積み上げてきた事実であるのに対し、株価は他人の気分で毎秒動く数字だからです。大事なのは、見るべき数字を選ぶこと。追うべき数字と、無視してよい数字を分けられるかどうかが、精神的な安定を大きく左右すると感じています。

軸2:予測より、設計

相場がどう動くかを、私は当てにいきません。何度か当てようとして、そのたびに失敗してきたからです。代わりにやっているのが、どちらに転んでも困らない仕組みをあらかじめ組んでおくことです。インデックスと高配当株の二刀流も、9つの資産クラスへの分散も、1銘柄あたり資産の2.5%という上限も、すべては予測しなくても済むようにするための設計です。上がっても下がっても、自分の取るべき行動があらかじめ決まっている。この状態を作っておくと、相場が荒れた日でも、驚くほど落ち着いていられます。

軸3:足し算ではなく、引き算

投資を始めると、人はつい足し算をしたくなります。情報源を増やし、銘柄を増やし、アラートを増やし、確認回数を増やす。より多く知っているほうが有利に戦える気がしてしまうからです。私も長いあいだ、その足し算をやっていました。けれども実際は、増やすほど心は乱れ、判断は雑になっていきました。私の投資が回り始めたのは、引き算を覚えてからです。通知を切り、確認を月1回にし、含み益を見ない。減らすことで、本当に大事な一点——配当が続いているかどうか——に集中できるようになりました。

柱1:心の置き方——引き算の哲学

最初の柱は、心の置き方です。投資の成否を分けるのは、銘柄選びの巧拙よりも、相場が荒れたときに余計な行動をしないでいられるかだと私は思っています。ここに並ぶ4本は、そのために私がやめたこと、やめられなかったことの記録です。

まずは、含み益との距離の取り方から。高配当株投資家にとっての含み益は、手に入れようとした瞬間に配当の源泉を失うという、少し厄介な性質を持っています。だから私は、評価額ではなく配当の入金履歴のほうを見るようにしています。

なぜ私は「含み益」を見ないようにしているのか:高配当投資の心の置き方

次は、その心構えを「仕組み」に落とし込んだ話です。30個仕掛けていた株価アラートをある日すべて切りましたが、恐れていたような不都合は、一度も起きませんでした。

株価アプリの通知を切った話:情報を減らすほど、投資はうまくいく

3本目は、流行に乗らない理由について。スーパーで若いカップルが話題の半導体株を語っているのを耳にして、「靴磨きの少年」の逸話を思い出した日の話です。660%上昇した銘柄を、私はなぜ買わなかったのか。正直に書きました。

靴磨きの少年とキオクシア:なぜ私は660%上昇株に乗らないのか

そして4本目が、いちばん恥ずかしい記事です。太陽光、大麻ビジネス、お掃除ロボット——「これから来る」と言われた銘柄に、私は何年も飛びつき続けました。そこで学んだのは、他人の確信は、いざ下がったときに自分を助けてくれないということでした。この授業料が、今の軸の出発点になっています。

私が投資で一番後悔している失敗:他人の「確信」に乗り続けた数年間

柱2:投資スタイルの設計

2つ目の柱は、設計です。相場を当てにいく代わりに、私は仕組みのほうを作り込んできました。ここに並ぶ4本は、「予測しないで済むようにするには、どう組めばいいか」という問いへの、私なりの答えです。

中心にあるのが、インデックス投資と高配当株投資の二刀流です。インデックスは将来の自分へのプレゼント、高配当株は今の自分への還元。1本だけ読むとしたら、これをおすすめします。

インデックス投資と高配当株投資、両方やっている私が本音で語る【なぜ”二刀流”なのか】

次は、銘柄数の話です。気づけば80銘柄を超えていて、「多すぎる」と言われますし、自分でも時々そう思います。それでも分散をやめないのは、1銘柄の減配が全体に与える影響を、精神的に許容できる大きさまで薄めておきたいからです。

私が高配当株を80銘柄以上持つようになった理由:投資哲学の変遷

分散は日本株の中だけの話ではありません。米国株から暗号資産まで9つの資産クラスに広げており、「広げすぎたのでは」という迷いも含めて正直に書きました。

9つの資産に分散する私が、それでもバランスファンドを買わない理由

設計の最後は、暴落への備えです。買い増しは2段階に分けて決めており、相場全体を見るときは日経平均ではなくTOPIXを確認します。指数が派手に下げていても、中身が一部の値がさ株だけであれば、私は動きません。

暴落を待つ現金、私は日経平均ではなくTOPIXを見ています

柱3:配当と人生

3つ目の柱は、配当そのものです。配当は数字であると同時に、生活を静かに変えていくものでもあります。ここに並ぶ3本は、受け取ったお金をどう扱い、育てた木といつ別れるのかという、少し人生寄りの話です。

まずは配当の使い道から。「再投資が正解」と言われますが、私は全部は再投資していません。ドルは将来の自分のために再投資し、円は今の自分と家族のために使っています。

配当金は再投資すべきか、使うべきか:私が通貨で使い道を分ける理由

次は、配当が数十円から月3万円に育つまでに、私の中で何が変わったかという話です。「いつ辞めてもいい」と思えるようになった結果、かえって仕事に前向きになれました。お金を追いかけた先で、お金への執着から少し自由になった——そんな逆説の記録です。

配当が増えて変わった、お金と幸福の距離感

そして、あまり正面から書いてこなかった「売る」話です。剪定・水やり・植え替えという盆栽の手入れになぞらえて、どういうときに売り、どういうときは絶対に売らないのかを整理しました。

高配当株を売るということについて:私の高配当ポートフォリオは「盆栽」です

柱4:原体験——なぜこう考えるようになったか

最後の柱は、原体験です。投資哲学は理屈から組み立てられるというより、忘れられない経験から後づけで言語化されていくものだと思っています。

ひとつは、20代を過ごした中東のある国で見た光景です。資産を持つ者だけが豊かになり、しかもそれを守る仕組みが十分に整っていない社会を目の当たりにして、お金への価値観が根底から揺さぶられました。

中東のある国で学んだ「お金の真実」:なぜ日本は恵まれているのか

もうひとつは、含み益が42%を超えた東京海上を、それでも売らないと決めた日の話です。買った目的が変わっていないなら、株価が変わっても売る理由はない——この感覚が、私の長期投資の骨格になっています。

東京海上がバークシャーに選ばれた。含み益+42%でも「冷静に持ち続ける」と決めた理由

この哲学の「限界」も、正直にお伝えします

ここまで4つの柱を紹介してきましたが、この考え方が万能だとは、まったく思っていません。正直に、3つの限界をお伝えします。

限界1:とにかく時間がかかります。 配当を積み上げ、分散を効かせ、静かに待つ——この方法で資産が大きく動くには、年単位の時間が必要です。数年で資産を何倍にもしたい方には、まったく向いていません。私の配当が数十円から月3万円になるまでにも、何年もかかりました。

限界2:集中投資していれば得られたリターンを、確実に逃しています。 数年前に総合商社やメガバンクへ集中していれば、資産は今よりずっと大きかったはずです。ただ、これは結果を知っている今だから言えることでもあります。この後知恵バイアスへの自覚が、分散を続ける支えになっています。

限界3:これはあくまで、私に合ったやり方です。 80銘柄の管理を苦にせず、退屈さに耐えられるという私の性質があって成立している方法です。少数精鋭で深く理解するスタイルが合う方も、当然いらっしゃいます。そのままなぞるのではなく、素材として使っていただければと思います。

まとめ:あなたの投資哲学は、どんな形をしていますか

4つの柱を振り返ります。柱1は心の置き方——見る回数を減らし、感情と行動を切り離すこと。柱2は設計——予測ではなく、どちらに転んでも困らない仕組みを組むこと。柱3は配当と人生——受け取ったお金を、将来と今にどう配分するか。柱4は原体験——なぜ自分がそう考えるようになったのか。

この4つを貫いているのが、冒頭の3つの軸です。数字を追いながら、数字に振り回されない。予測より、設計。足し算ではなく、引き算。ずいぶん地味な結論ですが、10年、20年と続けるうえでは、この地味さこそが効いてくるのだと思っています。

気になる記事があれば、どうぞ好きなところから読んでみてください。そして、もしよろしければ考えてみていただきたいのです。あなたの投資哲学は、どんな形をしていますか。 それは誰かから借りてきたものでしょうか、それとも自分の失敗から育ててきたものでしょうか(ちなみに私は「引き算が大事だ」と偉そうに書いておきながら、銘柄数だけは相変わらず足し算を続けていて、そろそろ100に届きそうです)。


※本記事は情報提供および筆者個人の経験・見解を目的としており、特定の投資手法や銘柄を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年8月3日時点の情報に基づいています。


著者プロフィール

クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。

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