インフレに負けない高配当株5選:値上げできる「価格転嫁力」で選ぶ

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スーパーでもコンビニでも、値上げがすっかり当たり前になりました。少し前まで100円で買えたものが、いつの間にか120円、130円。お財布は同じなのに、買えるものが減っていく——そんな実感を、日々の買い物で味わっている方も多いのではないでしょうか。総務省統計局の消費者物価指数を見ても、物価の上昇は一過性ではなく、しっかり定着しています。

インフレが続くと、現金の価値は静かに目減りしていきます。銀行預金に置いたままのお金は、金額こそ減りませんが、「買える量」で見れば、実質的に少しずつやせ細っているのです。

では、こういう時代に強いのは、どんな企業でしょうか。私の答えは明快です。「値上げできる力」を持つ企業です。今日は、この価格転嫁力を持ち、なおかつ配当もしっかり出してくれる高配当株を、5銘柄ご紹介します。

「価格転嫁力」が、インフレ時代の勝敗を分ける

価格転嫁力とは、原材料費や人件費などのコスト上昇分を、販売価格に上乗せできる力のことです。言葉にすると簡単そうですが、実際にこれができる企業は、そう多くありません。値上げをすれば、たいていのお客さんは「じゃあ、もっと安い他社製品でいいや」と離れてしまうからです。

ところが、値上げしてもお客さんが離れない企業が存在します。その源泉になるのが、ブランド力・代替不可能性・寡占的地位の3つです。「どうしてもこのブランドがいい」「これに代わるものがない」「そもそも作れる会社が限られている」——こうした強みを持つ企業は、堂々と値上げをしても、需要を失いません。

価格転嫁できない企業は、コストが上がるほど利益が圧迫されていきます。逆に、価格転嫁できる企業は、コスト上昇を価格に乗せることで利益を維持し、さらには拡大させることもできます。インフレという同じ環境が、企業を残酷に選別していくのです。だからこそ、値上げ力のある企業の株を持ち、その配当を受け取ることは、インフレ時代の有力な資産防衛策になります。現金で持つより、値上げできる企業のオーナーになる、という発想です。

不況でも需要が落ちないディフェンシブ高配当株については、こちらの記事で紹介しています。あわせてご覧ください。

景気後退が来ても配当が止まらない:不況に強いディフェンシブ高配当株5選

今回の銘柄選定5基準

5銘柄の選定にあたり、以下の基準を設けました。

  1. 価格転嫁力がある(ブランド力・代替不可能な製品・寡占的地位のいずれか)
  2. 配当利回り2.5%以上
  3. 実際に値上げを実現し、業績が改善または高水準にある
  4. 連続増配、または安定配当の実績がある
  5. 大型の有名銘柄だけでなく、中小型のニッチトップも織り交ぜる

成長株として派手に伸びる銘柄ではなく、あくまで「値上げできる力があり、かつ配当もしっかり出す」という掛け算で絞り込んでいるのが、今回のポイントです。

価格転嫁力×高配当 5銘柄 一覧表

銘柄名(コード)価格転嫁力の源泉時価総額配当利回り配当の特徴
ブリヂストン(5108)タイヤ世界最大手・寡占約4.8兆円約3.47%5期連続増配
日本ハム(2282)食肉・ハムのブランド力約5,900億円約2.85%安定配当
リンナイ(5947)給湯器・ガス機器の寡占約5,100億円約2.9%24期連続増配
ハウス食品(2810)カレー・シチューの寡占約3,600億円約2.55%安定配当
ブルドックソース(2804)ソースの老舗ニッチ約230億円約2.5%安定配当(中小型)
※配当利回りは2026年7月上旬時点の各種金融情報サイトの数値です。時価総額は概算。株価・利回りは変動しますので、購入前に必ず最新値をご確認ください。

①タイヤ世界最大手:ブリヂストン(5108)

価格転嫁力の源泉:ブリヂストン(5108)は、タイヤで世界最大手級のシェアを誇るグローバル企業です。タイヤは、車が走る限り必ず消耗し、定期的に交換が必要な「代替の効かない必需品」です。しかも、安全に直結する部品だけに、「多少高くても信頼できるブランドを選びたい」という心理が働きます。とりわけ高性能なプレミアムタイヤの分野では、ブランド力がそのまま価格支配力になります。原材料であるゴムや原油のコストが上がっても、それを価格に乗せやすい構造を持っているのです。

配当・財務の安定性:配当利回りは約3.47%と、今回の5銘柄で最も高い水準です。同社の配当方針のもと、近年は増配を続けており、直近でも増配を予定しています。世界中で稼ぐ分散された収益基盤が、安定した配当の土台になっています。

リスク・懸念点:①天然ゴムや原油といった原材料価格の変動が、利益率に影響します。②タイヤの新車向け需要は自動車生産に連動するため、世界的な景気後退局面では販売が落ち込むリスクがあります。③海外売上比率が高く、為替の変動が業績を大きく左右します。

②食肉・ハムのブランド:日本ハム(2282)

価格転嫁力の源泉:日本ハム(2282)は、国内食肉最大手であり、ハム・ソーセージのトップメーカーです。とくに「シャウエッセン」に代表される主力ブランドは、多くの家庭で「これでなければ」という指名買いをされる強さがあります。プライベートブランドの安い商品がいくらでもある中で、ブランド力で選ばれ続けているという事実こそ、価格転嫁力の証明です。食肉という生活必需の領域を押さえている点も、需要の安定につながっています。

配当・財務の安定性:配当利回りは約2.85%で、配当性向は4割強と、無理のない範囲での還元を続けています。食肉事業の好調により、直近の業績は増収増益となっており、安定配当を支える収益力があります。

リスク・懸念点:①飼料価格や食肉相場の変動が、コスト構造に直接影響します。②輸入原料の比率が高く、円安が進むと調達コストが膨らみます。③鳥インフルエンザや家畜の疫病といった、業界特有のリスクも常に抱えています。

③給湯器・ガス機器の寡占トップ:リンナイ(5947)

価格転嫁力の源泉:リンナイ(5947)は、給湯器やガスコンロなどのガス機器で、国内トップシェアを誇る寡占的なメーカーです。給湯器は、壊れたら生活が立ち行かなくなる必需品でありながら、作れるメーカーが限られている寡占市場です。消費者が価格だけで気軽に他社へ乗り換えられる製品ではなく、信頼性と品質が重視されます。この寡占的地位が、原材料高を価格に転嫁する力の源泉になっています。名古屋に本社を置く、東海地方を代表する優良企業でもあります。

配当・財務の安定性:配当利回りは約2.9%。特筆すべきは、24期連続増配という輝かしい実績です。四半世紀近くにわたり、一度も減配せず配当を増やし続けてきたという事実は、経営の安定性と株主還元への強い意志を物語っています。無借金に近い健全な財務も強みです。

リスク・懸念点:①給湯器の需要は住宅着工数や買い替えサイクルに左右され、景気の影響を受けます。②銅やステンレスなどの原材料価格の上昇が、利益を圧迫する可能性があります。③海外事業の拡大に伴い、為替や現地の景気変動の影響も受けるようになっています。

④カレー・シチューの寡占ブランド:ハウス食品グループ(2810)

価格転嫁力の源泉:ハウス食品(2810)は、カレールウやシチューのルウで、国内で圧倒的なシェアを持つ食品メーカーです。「バーモントカレー」をはじめとする定番ブランドは、多くの家庭の食卓に何十年も定着しており、強力なブランド力を持っています。カレーは家庭料理の定番であり、多少値上げされても「いつものルウ」を買い続ける消費者が大半です。この安定した指名買いが、価格転嫁を可能にしています。香辛料や機能性食品など、幅広い事業展開も収益を支えています。

配当・財務の安定性:配当利回りは約2.55%です。派手さはありませんが、食品メーカーらしい安定したキャッシュフローを背景に、堅実な配当を継続しています。生活に密着したブランドを持つ企業ならではの、業績の安定感が魅力です。

リスク・懸念点:①スパイスや小麦、油脂といった原材料の価格高騰が、利益を圧迫します。②国内の食品市場は人口減少により長期的に縮小傾向にあり、成長の余地は限られます。③海外事業(アメリカの豆腐事業など)では、為替変動や現地競合との競争リスクがあります。

⑤ソースの老舗ニッチトップ:ブルドックソース(2804)

価格転嫁力の源泉:最後は、中小型のニッチトップです。ブルドックソース(2804)は、その名の通りソースの老舗専業メーカーで、100年を超える歴史を持つブランドです。とんかつやお好み焼きにかけるソースは、味の好みが固定化しやすく、「慣れ親しんだあの味」から乗り換えにくいという特性があります。ニッチな市場ながら、確固たるブランドと固定客を持つことで、価格転嫁の力を発揮できるのです。時価総額が小さく、機関投資家の注目も薄いため、個人投資家にとっての発掘感があります。

配当・財務の安定性:配当利回りは約2.5%です。派手な成長は期待しにくいものの、老舗らしい堅実な経営と安定配当が魅力です。無理な事業拡大をせず、本業のソースで着実に稼ぐスタイルは、長期保有のインカム投資家に向いています。

リスク・懸念点:①野菜や果実、砂糖といった原材料の価格上昇が、利益率に影響します。②中小型株のため出来高が少なく、売買のタイミングによっては株価が動きやすい流動性リスクがあります。③ソース市場は成熟しており、大きな需要拡大は見込みにくい点も、正直に理解しておく必要があります。

まとめ:値上げできる企業の、配当を受け取る側に回る

今回の5銘柄を整理すると、①ブリヂストンはタイヤの世界的ブランドと寡占、②日本ハムは食肉ブランドの指名買い、③リンナイは給湯器の寡占と24期連続増配、④ハウス食品はカレーの定番ブランド、⑤ブルドックソースはソースの老舗ニッチ——どれも「値上げしても、お客さんが離れない」という共通点を持っています。

インフレという環境は、値上げできる企業とできない企業を、残酷なまでに選別していきます。ならば私たちは、値上げに苦しむ消費者の側に立ち尽くすのではなく、値上げできる企業のオーナーになり、その配当を受け取る側に回るのが賢明ではないでしょうか。現金の価値が目減りする時代に、ブランドや寡占という「実物的な強み」を持つ企業の株を持ち、配当というかたちでインフレの果実を受け取る。これも、攻めのインデックスと守りの高配当を組み合わせる、私の二刀流の一部です(とはいえ、私も値上げされたカレールウを、今日もしっかり買っているのですが)。

なお、配当利回りの高さだけで飛びつく危険については、こちらの記事で詳しく解説しています。

配当利回りランキングの罠と正しい選び方


※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年7月10日時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。


著者プロフィール

クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。

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