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2026年7月はじめ現在、日経平均は7万2000円台と、史上最高値圏にあります。
株で含み益が膨らみ、うれしい悲鳴を上げている方も多いのではないでしょうか。ですが、私はこういうときこそ、あえて「守り」を考えます。相場が良いときほど、次に来るかもしれない調整や景気後退に備えておく——これが、長く相場に居続けるための私の流儀です。
今日ご紹介するのは、景気が悪くなっても配当が止まりにくい「ディフェンシブ高配当株」を5銘柄です。私は高配当ポートフォリオの半分ほどを、こうした守りの銘柄で固めています。派手に値上がりはしませんが、不況でも配当が入り続ける安心感は、何ものにも代えがたいものです。しかも今回は、財務の数字の堅さではなく、「不況でも需要が落ちない事業モデル」という視点で選びました。
株高の今こそ、「守り」の高配当株を考える
現在の相場は、AI・半導体株が牽引する形で、日経平均が最高値圏を走り続けています。勢いは本物ですが、同時に「そろそろ高すぎるのでは」という警戒感も、市場のあちこちで聞かれるようになりました。
相場がいいときに、あえて次の調整に備える。これは長期投資家にとって、とても大切な発想です。そこで役に立つのがディフェンシブ株です。食品・医薬品・生活必需品・インフラなど、景気の波に業績が左右されにくいセクターの銘柄を指します。人は不況でも、ご飯を食べ、薬を飲み、電車に乗ります。だからこれらの企業の売上は、好況でも不況でも、大きくは変わらないのです。
ディフェンシブ株は、AI株のような派手な値上がり益は狙いにくいのが正直なところです。しかし、不況が来ても配当が続くという安心感こそが、その最大の価値です。攻めのインデックスで成長を取り込みながら、守りのディフェンシブ高配当で土台を固める——この二刀流が、私の長期投資のかたちです。
私が高配当株投資とインデックス投資を組み合わせる「二刀流」の考え方については、こちらの記事もご覧ください。
今回の銘柄選定5基準
5銘柄の選定にあたり、以下の基準を設けました。
- 不況でも需要が落ちにくい事業(食品・医薬・生活必需品・インフラなど)
- 配当利回り2.5%以上
- 連続増配、または安定配当の実績(減配リスクが低い)
- 財務が健全、または安定したキャッシュフローを持つ
- 大型だけでなく、中小型のニッチなディフェンシブも織り交ぜる
その結果、食品飲料・たばこ・医薬・生活密着サービス・私鉄インフラという、5つの異なる事業から1社ずつを選びました。連続増配や安定配当の実績も重視しています。
ディフェンシブ高配当5銘柄 一覧表
| 銘柄名(コード) | セクター | 時価総額 | 株価 | 配当利回り | 配当の特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| キリンHD(2503) | 食品・飲料 | 約2.2兆円 | 約2,730円 | 約2.78% | 安定配当・累進的 |
| JT(2914) | たばこ | 約12.0兆円 | 約5,990円 | 約4.04% | 高い配当性向 |
| 武田薬品(4502) | 医薬 | 約8.2兆円 | 約5,170円 | 約3.94% | 長期の非減配 |
| ハードオフ(2674) | リユース | 約362億円 | 約2,590円 | 約3.54% | 増配基調 |
| 大阪ガス(9532) | ガス・インフラ | 約2.0兆円 | 約5,300円 | 約2.45% | 累進配当(減配なし) |
①食品・飲料:キリンホールディングス(2503)
なぜ不況に強いのか:キリンHD(2503)は、ビールや清涼飲料で知られる食品・飲料の大手です。人は不況になっても、喉の渇きを潤し、食事を楽しみます。飲食料品は、景気が悪くなっても需要がゼロにはならない、典型的な生活必需の領域です。さらに同社は医薬・ヘルスサイエンス分野(協和キリンなど)にも事業を広げており、飲料一本足ではない安定感があります。
配当・財務の安定性:配当利回りは約2.78%。長年にわたり減配せず、安定配当から累進的な増配へと株主還元を強化してきた実績があります。ブランド力に裏打ちされた安定したキャッシュフローが、配当の土台を支えています。
リスク・懸念点:①国内のビール市場は人口減少で長期的に縮小傾向にあり、成長性は限定的です。②海外事業(とくに新興国)の政情や為替の変動が業績に影響することがあります。③ディフェンシブ株全般に言えることですが、金利上昇局面では相対的に評価が下がりやすい点にも留意が必要です。
②たばこ:日本たばこ産業/JT(2914)
なぜ不況に強いのか:JT(2914)は、言わずと知れたたばこの製造・販売の最大手です。たばこは嗜好品であり、依存性という特性から、景気が悪くなっても需要が急には落ちにくいという、際立ったディフェンシブ性を持っています。むしろ不況期でも喫煙者は買い続ける傾向があり、売上の安定性はディフェンシブ株の中でもトップクラスです。海外たばこ事業の比率が高く、グローバルに稼ぐ構造も強みです。
配当・財務の安定性:配当利回りは約4.04%と、今回の5銘柄で最も高い水準です。高い配当性向を維持する株主還元方針で知られ、高配当株投資家にとっての定番銘柄となっています。安定したキャッシュフローが、この高い配当を支えています。
リスク・懸念点:①たばこ市場は世界的に規制強化と喫煙率低下が進んでおり、長期的な数量減少は避けられません。②過去には業績や為替を背景に減配した年もあり、「絶対に減配しない」とは言い切れません。③健康志向の高まりやESG投資の観点から、機関投資家に敬遠されるリスクもあります。高利回りの裏にあるこれらのリスクは、必ず理解しておくべきです。
③医薬:武田薬品工業(4502)
なぜ不況に強いのか:武田薬品(4502)は、日本最大の製薬会社です。病気は、景気とは関係なく発生します。不況だからといって、必要な薬の服用をやめる人はいません。医薬品は、生命に直結する究極の生活必需品であり、需要が景気に左右されにくい代表的なディフェンシブ領域です。同社はグローバルに事業を展開し、消化器・希少疾患・血漿分画製剤など幅広い領域で収益を上げています。
配当・財務の安定性:配当利回りは約3.94%(1株あたり年間204円予想)。武田薬品は長期にわたり減配をしていないことで知られ、安定配当を強く意識した経営を続けています。高配当かつ非減配という点で、守りの中核に据えやすい銘柄です。
リスク・懸念点:①主力薬の特許が切れると、後発薬(ジェネリック)の台頭で売上が急減する「特許の崖」というリスクがあります。②大型買収に伴う有利子負債の負担が重く、財務改善が長期的な課題です。③米国の薬価政策や医薬品への関税といった、政策変更の影響を受けやすい点にも注意が必要です。
④生活密着サービス:ハードオフコーポレーション(2674)
なぜ不況に強いのか:ここからは中小型のニッチなディフェンシブです。ハードオフ(2674)は、中古品の買取・販売(リユース)チェーンを全国に展開する企業です。この事業モデルの面白いところは、不況になるとむしろ追い風が吹く点にあります。景気が悪くなると、人々は節約のために「安く買える中古品」を求め、同時に「不用品を売って現金化」しようとします。つまり、買う人も売る人も増えるのです。景気後退が需要を生む、逆張り型のディフェンシブと言えます。
配当・財務の安定性:配当利回りは約3.54%、時価総額は約362億円と、5銘柄で最も小さい中小型株です。着実な増配基調を続けており、フランチャイズ展開による安定した収益構造を持っています。個人投資家にとって、発掘感のある一社です。
リスク・懸念点:①中小型株のため出来高が少なく、売買のタイミングによっては株価が動きやすい流動性リスクがあります。②リユース業界はメルカリなどの個人間取引(CtoC)と競合しており、その拡大が逆風になる可能性があります。③好況が長く続きすぎると、逆に中古需要が伸び悩む局面もあり得ます。
⑤ガス・インフラ:大阪ガス(9532)
なぜ不況に強いのか:大阪ガス(9532)は、関西を地盤とする都市ガスの最大手です。全国への事業展開に加え、米国のシェールガスなど海外エネルギー事業にも進出しています。ガスは、電気と並ぶ生活の基盤インフラです。景気が悪くなっても、人は料理をし、風呂を沸かし、暖房を使います。電気やガスは、どんな不況でも需要が止まらない、真の意味でのディフェンシブ領域です。人の移動が止まれば打撃を受ける事業とは違い、家庭の生活そのものに直結しているため、需要が驚くほど安定しているのが強みです。
配当・財務の安定性:配当利回りは約2.45%、時価総額は約2.0兆円です。大阪ガスは「原則として減配をしない」累進的な配当方針を掲げ、DOE(自己資本配当率)3.5%程度を目標にしています。2026年3月期に年間配当を120円へ引き上げ、2027年3月期は130円予想と、増配基調が続いています。コロナ禍でも減配しなかった安定配当の実績があり、守りの中核に据えやすい銘柄です。
リスク・懸念点:①原料となるLNG(液化天然ガス)の価格変動が業績に影響します(ただし長期契約である程度緩和されています)。②脱炭素・カーボンニュートラルの潮流が、長期的にはガス事業への逆風になる可能性があります。③ディフェンシブ株全般に言えることですが、金利上昇局面では相対的に評価が下がりやすい点にも留意が必要です。
まとめ:派手に儲からないが、退場しないための「守り」
今回の5銘柄を整理すると、①キリンHDは飲食料という生活必需、②JTは需要の落ちにくい嗜好品、③武田薬品は景気と無関係の医薬、④ハードオフは不況が追い風のリユース、⑤大阪ガスは生活を支えるガスインフラ——どれも「人が生きる限り、需要が消えない」事業を持つ企業です。
正直に言えば、ディフェンシブ株は派手に儲かる銘柄ではありません。相場が絶好調のときは、AI株を横目に少し退屈に感じることもあります。でも、その退屈さこそが武器なのです。次に相場が調整する局面が来ても、これらの銘柄は配当を出し続け、あなたを相場から「退場」させないための守りになってくれます。攻めのインデックスと、守りのディフェンシブ高配当。私はこのバランスで、これからも長期投資を淡々と続けていきます(AI株に乗り遅れた悔しさは、配当通知を眺めてそっと紛らわせています)。
なお、ディフェンシブ株といえども、配当利回りの高さだけで飛びつくのは危険です。「なぜ利回りが高いのか」を見極める視点については、こちらの記事で詳しく解説しています。
※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年7月3日時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。
著者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。