5年で配当が1.7倍以上に:年平均増配率で選ぶ高配当株5選

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配当利回りは、便利な数字です。3%、4%と並べれば、どれがお得か一目で分かった気になります。ただ最近、私はこの数字の弱点をよく考えるようになりました。配当利回りは、今この瞬間を切り取った数字にすぎないということです。

たとえば利回り3%の株を買ったとします。その会社が10年間同じ配当を出し続けたら、10年後も利回りは3%のままです。ところが配当が毎年増えていけば、買った値段に対する利回り(YOC)は年を追うごとに上がっていきます。

だとすれば、見るべきは今の利回りだけではありません。これまでどれだけのペースで配当を増やしてきたか——その実績も同じくらい大事なはずです。今日は「年平均増配率」という物差しで、5銘柄を選んでみました。

年平均増配率という見方

年平均増配率とは、配当が1年あたり平均何%のペースで増えてきたかを示す数字です。計算はシンプルで、次のようになります。

年平均増配率 =(直近の年間配当 ÷ 5年前の年間配当)の5乗根 − 1

たとえば5年前に50円だった配当が、いま90円になっているとします。単純な倍率では1.8倍ですが、年平均に直すと約12.5%です。「5年で1.8倍」より「年平均12.5%」のほうが、他社と比べやすくなります。

ここで、以前書いた記事に触れさせてください。年率5%で増配が続いた場合に20年後どうなるかを試算したことがあります。今回調べてみて、年率5%どころか、10%を大きく超えるペースで配当を増やしてきた企業が複数あることが分かりました。

増配率が長期でどれだけ効いてくるかは、こちらの記事で試算しています。

配当は増配率で化ける:100万円の20年後を計算してみました

増配率だけを見てはいけない理由

ただし、この指標には落とし穴があります。銘柄を選ぶ前に、先にお伝えしておきます。

落とし穴1:一度減配してから元に戻しただけでも、増配率は高く見えます。たとえば配当100円の会社が50円に減配し、その後100円に戻したとします。直近5年だけを切り取れば「2倍に増配」ですが、実際には元の水準に戻っただけです。増配率という数字は、この違いを教えてくれません。

落とし穴2:特別配当や記念配当が含まれていると、増配率が跳ね上がります。創立◯周年の記念配当が乗った年を直近として計算すれば、実力以上の数字が出ます。翌年にはその分がなくなるため、見かけの増配率だったことが後で分かります。

落とし穴3:もともとの配当が少額だと、率が大きく出ます。5円が10円になれば増配率100%ですが、増える金額はわずか5円です。率の大きさと恩恵の大きさは一致しません。

こうした落とし穴を避けるため、今回は「過去10年で一度も減配していないこと」を必須条件にしました。全銘柄について配当を年度順に並べ、前年と1年ずつ比較しています。記念配当の有無も確認しました。

今回の選定基準

整理すると、次の5条件です。

  1. 過去5年の年平均増配率が8%以上……今回の主軸です
  2. 配当利回り2.5%以上……増配ペースが速くても、今の水準が低すぎては受け取る実感が湧きません
  3. 過去10年で減配・無配転落がないこと……年間配当を年度順に並べ、前年と比較して1年ずつ確認しました
  4. 特別配当・記念配当による見かけ上の増配でないこと
  5. 直近で赤字・大幅減益でないこと

なお、この記事は「これから増やせる余地」を見る配当性向の記事とは、逆の視点です。あちらが未来の可能性なら、こちらは実際に増やしてきた過去の事実を見ています。両方を見ると立体的になります。

年平均増配率で選んだ5銘柄

銘柄名(コード)5年前の配当直近の配当年平均増配率配当利回り時価総額
三菱UFJ FG(8306)25.00円86.00円28.0%2.60%約43.7兆円
野村不動産HD(3231)16.50円40.00円19.4%4.79%約8,435億円
東京センチュリー(8439)34.50円80.00円18.3%3.53%約1.25兆円
芙蓉総合リース(8424)80.00円158.00円14.6%3.83%約4,083億円
ヒューリック(3003)36.00円62.00円11.5%3.81%約1.35兆円
※配当は「5年前=2021年3月期、直近=2026年3月期」の実績(ヒューリックのみ12月決算のため2020年12月期→2025年12月期)。年平均増配率は(直近÷5年前)の5乗根−1で算出。株価・利回り・時価総額は2026年8月時点のYahoo!ファイナンスの数値です。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306):年平均28.0%

どんな会社か・なぜ増配できているのか:皆さんご存じ、国内最大の金融グループです。増配を支えているのは、金利のある世界への転換です。長く続いた超低金利のもとでは預貸金利ざやが圧迫されていましたが、日銀の利上げによって収益環境が大きく改善しました。直近の第1四半期も純利益が前年同期比48.2%増と好調です(同社IR)。

配当の推移:18円→19円→22円→25円→25円→28円→32円→41円→64円→86円と推移し、10年間で一度も減配していません(2021年3月期のみ横ばい)。5年前の25円が86円になり、年平均増配率は28.0%。配当利回りは2.60%です。

リスク・懸念点:①増配ペースの鈍化は避けられないと考えるべきです。直近の急増は金利上昇という追い風によるもので、この環境が続く保証はありません。②銀行業は景気後退時に与信費用が膨らみます。③利回り2.60%は今回の5社で最も低く、株価上昇が先行している面もあります。

野村不動産ホールディングス(3231):年平均19.4%

どんな会社か・なぜ増配できているのか:マンション「プラウド」で知られる総合不動産です。分譲事業に加え、賃貸やアセットマネジメントなど継続収益の比率を高めてきたことが、安定した増配の土台になっています(同社IR)。

配当の推移:13円→14円→15円→16円→16.5円→19.5円→24円→28円→34円→40円と、10年間ずっと増え続けています。5年前の16.5円が40円になり、年平均増配率は19.4%。配当利回り4.79%は今回の5社で最も高い水準です。

リスク・懸念点:①不動産は金利上昇が逆風になります。借入コストの増加と、住宅ローン金利の上昇による販売への影響の両面があります。②分譲事業は物件の引き渡し時期によって業績が振れやすく、増配ペースが一定とは限りません。

東京センチュリー(8439):年平均18.3%

どんな会社か・なぜ増配できているのか:総合リース大手で、航空機や情報機器のリース、再生可能エネルギー事業などを手がけています。リース事業は契約期間にわたって収益が積み上がる構造で、将来の収益がある程度読めることが安定配当の裏付けになっています(同社IR)。

配当の推移:25円→28.5円→31円→34円→34.5円→35.75円→35.75円→52円→62円→80円。減配は一度もありません(2023年3月期が横ばい)。5年前の34.5円が80円になり、年平均増配率は18.3%、配当利回りは3.53%です。

リスク・懸念点:①自己資本比率15.5%と、リース業の特性上レバレッジが高い構造です。金利上昇は調達コストの増加に直結します。②航空機リースは景気や国際情勢の影響を受けやすく、過去には市況悪化で苦しんだ時期もありました。

芙蓉総合リース(8424):年平均14.6%

どんな会社か・なぜ増配できているのか:みずほグループ系の総合リース会社です。不動産、環境エネルギー、医療・介護など幅広い分野へ事業を広げ、収益源を分散させてきました。直近の決算では売上高が過去最高を更新しています(同社IR)。

配当の推移:43.33円→48.67円→62.67円→68.33円→80円→95円→114.33円→146.67円→151.67円→158円と、10年間一度も減ることなく増え続けています。5年前の80円が158円になり、年平均増配率は14.6%。配当利回り3.83%、PER8.45倍と割安感もあります。

リスク・懸念点:①自己資本比率13.1%と今回の5社で最も低く、金利上昇局面では調達コストの影響を受けやすい構造です。②ROEは4.41%と、増配ペースの割に資本効率は高くありません。

ヒューリック(3003):年平均11.5%

どんな会社か・なぜ増配できているのか:東京都心の駅近物件を中心に保有する不動産会社です。旧富士銀行の店舗網を引き継いだ好立地の物件が土台にあり、賃貸収入という安定したキャッシュフローが増配を支えています。

配当の推移:17円→21円→25.5円→31.5円→36円→39円→42円→50円→54円→62円と、10年間ずっと増配を続けています。5年前(2020年12月期)の36円が62円になり、年平均増配率は11.5%、配当利回りは3.81%です。

リスク・懸念点:①不動産の売却益が利益に含まれるため、期によって業績が振れます。②自己資本比率26.0%で、金利上昇は借入コストの増加につながります。③都心の不動産価格が調整すれば、保有資産の価値にも影響します。

増配は「約束」ではありません

ここまで増配率の高い企業を並べてきましたが、最後に大事なことを書いておきます。過去に増配を続けてきたからといって、これからも続く保証はどこにもありません。

今回の5社を見ても、増配を加速させた要因ははっきりしています。三菱UFJは金利上昇、不動産2社とリース2社は好調な市況と資産の積み上げです。つまり、環境が変われば増配のペースも変わります。年平均28%というペースが今後も続くと考えるのは、さすがに楽観的すぎるでしょう。

私が増配率を見るときに本当に確認したいのは、率そのものではありません。その増配を支えるだけの収益力が、事業のどこから生まれているのかという点です。だから今回も、各社について「なぜ増配できているのか」を先に書きました。理由が説明できない増配は、続くかどうかを判断できないからです。

増配率は、あくまで判断材料の一つです。配当利回り、配当性向、財務の健全性——他の数字と組み合わせて、はじめて意味を持つと思っています。

まとめ:利回りは今の数字、増配率は積み重ねの記録

配当利回りが「今この瞬間の写真」だとすれば、増配率は「これまでの歩みの記録」です。どちらも必要ですが、長く持つつもりなら、後者の重みは思っている以上に大きいのではないでしょうか。

今回の5社は、いずれも過去10年で一度も減配せず、直近5年は年平均11%を超えるペースで配当を増やしてきました。5年前と比べると、配当は1.7倍から3.4倍になっています。もし5年前にこれらを買っていれば、買値に対する利回りは今頃かなりの水準になっていたはずです。

あなたの保有株は、5年前と比べてどれだけ配当が増えましたか。証券口座の配当履歴をさかのぼると、案外はっきり見えてきます(ちなみに私が調べたところ、増えている銘柄と、5年間まったく動いていない銘柄の差が想像以上で、少し反省しました)。

これから増やせる余地という別の視点でも、銘柄を選んでいます。

配当性向で選ぶ「伸びしろ株」:VIG的な発想の増配期待5銘柄


※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。記事内の増配率は過去の実績に基づく計算であり、将来の増配を保証するものではありません。データは2026年8月時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。


著者プロフィール

クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。

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