FIREはしません。でもFIは欲しい:引退後の生活を少し考えてみた

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投資の話をしていると、「FIRE」という言葉が出てこない日はありません。Financial Independence, Retire Early の頭文字で、日本語では「経済的自立と早期退職」と訳されます。

私はこの言葉が、少し不便だと感じています。4つの単語が1つにまとまっているせいで、前半と後半を切り離して考えられなくなっているような気がするからです。

私が欲しいのは、前半の「Financial Independence(経済的自立)」だけです。後半の「Retire Early(早期リタイア)」は、正直なところ、あまりしたいと思っていません。

今日は、その経済的自立がいつ頃実現しそうなのか、そして実現したら何をしたいのかを、手元の数字を使いながら正直に考えてみます。ふだんは銘柄の話ばかり書いているので、たまにはこういう回があってもいいかなと思っています。

FIREではなく、FIが欲しい

私は現在30代前半で、資産はアッパーマス層と呼ばれる4,000万円台に到達したところです。この水準を出発点にして、今の積み上げのペースを大きく崩さずにいけば、45歳から50歳の間には、フルタイムで働く必要がなくなるのではないかと考えています。

ただ、そこで仕事を全部やめるつもりはありません。私は自分の好きな仕事については、働ける限りずっと続けていきたいと思っています。だから正確に言うと、目指しているのは「働かなくてよくなる状態」であって、「働かない生活」ではありません。

この2つは似ているようで、まったく違います。前者は選択肢が増えることで、後者は選択肢を1つに固定することです。経済的自立と早期退職は、セットである必要がないというのが、私の考え方です。

イメージしているのは、好きなプロジェクトに適度に関わり続ける形です。生活費を稼ぐために引き受ける仕事と、面白いから引き受ける仕事は、まったく別のものだと思っています。前者をやめられる状態になったうえで、後者だけを選んで続けたい。それが私にとってのFinancial Independenceです。

月4万円の配当は、10年後どうなるか

ここからは具体的な数字の話です。現在、妻の投資分も含めて、月4万円ほどの不労所得があります。年間にすると48万円です。金額そのものは決して大きくありませんが、これが増配だけでどこまで育つのかを計算してみました。

前提は「今持っている株の配当が、毎年一定の率で増えていく」というだけのシンプルなものです。新規の買い増しは一切入れていません。

増配率5年後(月額)10年後(月額)15年後(月額)
年5%51,051円65,156円83,157円
年7%56,102円78,686円110,361円
年10%64,420円103,750円167,090円

計算する前、私は感覚的に「10年後には月10万円くらいになっているかな」と思っていました。表を見ると、年率10%程度の増配が続いた場合に月103,750円ですから、ほぼその通りの数字でした。自分の直感がそれほど外れていなかったことに、少し安心しています。

目標額に届くまでの年数も出してみました。

目標額年5%の場合年7%の場合年10%の場合
月10万円約18.8年後約13.5年後約9.6年後
月15万円約27.1年後約19.5年後約13.9年後

ここで強調しておきたいことがあります。この試算は、今持っている株の配当が増配だけで育つ場合の数字です。今後も給与から追加で投資を続けることは、いっさい織り込んでいません。

実際には、毎月の入金を止めるつもりはありません。ですから現実の推移は、この表よりも早く、大きくなる可能性が高いと考えています。逆に言えば、この表は「もし今日から一円も追加投資しなかったら」という、かなり保守的な下限として見ています。

もちろん、増配率が毎年きれいに5%や10%で並ぶことはありません。減配する年もあれば、想定を超えて増える年もあります。あくまで一定の前提を置いた試算であって、将来を保証するものではないという点は、自分にも言い聞かせています。

増配率が長期でどれだけ効いてくるかは、こちらでも試算しています。

配当は増配率で化ける:100万円の20年後を計算してみました

月15万円が、一つの目安

理想を言えば、配当だけで月20万円あれば十分だと思っています。ただ、現実的な区切りとして意識しているのは、その少し手前です。

月15万円まで届けば、今のフルタイムの仕事を辞めることが選択肢に入ってくると考えています。生活費のすべてを賄える金額ではありませんが、「働き方を選べる」ラインとしては、このあたりかなという感覚です。

先ほどの表では、年10%の増配が続いたとしても約13.9年かかる計算でした。私の年齢に足すと、ちょうど45歳から50歳のあたりに重なります。追加投資を続ければもっと早まるはずですが、そこまで含めて計算すると希望的観測が混ざるので、あえて増配だけの数字を見るようにしています。

それから、配当だけがすべてではありません。資産のメインはインデックス投資なので、その取り崩しも将来的な選択肢として考えています。ただ、どういうペースで取り崩すのかは、まだ真剣に詰めていません。取り崩しは配当と違って、自分で意思決定をしなければならない分、心理的な負荷が高い気がしています。この話は、もう少し先の宿題にしておきます。

引退後にしたいこと:農業と狩猟

経済的自立の先に何を見ているのかというと、豪華な暮らしではありません。私が思い描いているのは、自給する生活です。

今は都市部に住んでいて、バルコニーで野菜やハーブを少し育てている以外は、食べるものをすべて買うことに頼っています。スーパーに行けば何でも手に入る環境は、便利であることに間違いありません。ただ、自分が毎日口にしているものが、どこでどうやって作られているのかを、私はほとんど知らないままです。

だから、いつかは自分で食料を作れるようになりたいと思っています。作物が育つ喜びを、知識としてではなく実感として知りたい。そういう気持ちが、年々強くなってきました。

狩猟の勉強も、今年から始めています。日本では狩猟をするために狩猟免許が必要で、網猟・わな猟・第一種銃猟・第二種銃猟の4区分があり、免許を取ったうえで都道府県への狩猟者登録も要ります(環境省「狩猟制度の概要」)。まだ本を読んでいる段階ですが、調べれば調べるほど、生き物を獲って食べるという行為の重さを考えさせられます。

住む場所も変えたいと思っています。都市部から、少し田舎の涼しいところへ。夏の暑さが年々きつくなっていることも、正直なところ理由の一つです。

配当利回りだの営業キャッシュフローだのと、数字ばかり追いかけてきた人間が、その先に土に触れる生活を思い描いているというのは、自分でも少し意外な気がしています。ただ、数字を追いかけているのは、たぶん数字が好きだからではありません。数字が、選択肢を増やしてくれるからです。

それでも、不安がないわけではありません

ここまで前向きなことを書いてきましたが、怖さがないと言えば嘘になります。

一つは、会社員として毎月決まった日に振り込まれてくる収入という「安定」を、自分から手放すことです。配当は増配も減配もしますし、株価は上下します。理屈では分かっていても、給与という土台がなくなった状態を実際に想像すると、やはり足がすくむ感覚があります。

もう一つは、人間関係です。仕事を通じて得ていたコミュニティや、同僚との関係性を失うことへの寂しさは、たぶん想像しているよりも大きいのではないかと思っています。毎日誰かと話す理由があるというのは、それ自体が生活の骨組みになっています。

だからこそ、引退後はコミュニティ作りが大切になると考えています。地域で農業をやるにしても、狩猟をするにしても、一人でできることには限りがあります。むしろそういう活動のほうが、会社にいたときよりも濃い人間関係を作れるのではないかという期待もあります。

そして、何らかの形で社会に貢献することで、自分の存在意義を感じられるのだろうと思っています。経済的自立は、孤立するためのものではありません。お金の心配を減らして、その分だけ人や社会に向き直るための手段だと、今のところは考えています。

まとめ

FIREの「RE」は目指していませんが、「FI」はいつか実現したいと思っています。月4万円の配当が月15万円になったとき、私はたぶん、フルタイムの仕事を手放して、好きなプロジェクトだけを選ぶ生活に切り替えるのだと思います。

そこから先は、農業と狩猟と、コミュニティ作り。今の生活とはずいぶん違う形になりそうです。バルコニーのハーブを何度か枯らしている人間が言うことなので、説得力は薄いかもしれませんが。

数字の話に戻ると、今回の試算はあくまで一定の増配率を置いた計算にすぎません。実際にその通りになるかどうかは分かりませんし、追加投資を続ける前提を入れていない分、下振れも上振れもあり得ます。それでも、こうして紙の上に置いてみると、漠然とした「いつか」が「だいたいこのあたり」に変わります。それだけでも、計算してみた価値はありました。

あなたが経済的自立を果たしたら、何をしたいですか。もし答えがすぐに出てこないなら、それを考えることのほうが、次の一銘柄を探すより先かもしれません。


※本記事は情報提供および筆者個人の経験・見解を目的としており、特定の投資手法や資産配分を推奨するものではありません。記事内のシミュレーションは一定の前提に基づく試算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年8月時点の情報に基づいています。


著者プロフィール

クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。

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