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投資ブログを書いていて、ひとつ困っていることがあります。人に話せるほどの大失敗がないことです。
失敗談は読み物のいちばんの見せ場なのに、慎重な性格のせいか、投資で大きな失敗をした経験は幸いありません。ブロガーとしては、わりと致命的です。
とはいえ、小さな失敗ならいくつもあります。では、その「勉強代」を全部足したら、いくらになるのか。今回は、2020年ごろに個別株を始めてからの6年分を、金額で計算してみました。金額は記憶に基づく概算で、JT株だけは株価と配当のデータで計算しています。
始めたときの状況:予備の資金150万円
インデックス投資(S&P500)は2017年から続けています。個別株を始めたのは2020年ごろで、ちょうど株式投資ブームのタイミングでした。
当時は海外駐在が中心で、貯金が多めにありました。そこで、生活費とは別の「予備の資金」から、個別株に計150万円ほどを出しました。内訳は、記憶では次のとおりです。
・米国の成長株:約30万円
・米国の大型個別株:約70万円
・日本の優待・高配当株:約50万円
このうち日本の優待・高配当株は今も持っているので、今回の勉強代には数えません。
6年分の勉強代の一覧
| 費目 | 時期 | 損益(概算) | 結果 |
|---|---|---|---|
| 本代 | 6年間の合計 | −約2万円 | 役に立ったのは3冊 |
| クリーンエネルギー株(4銘柄くらい) | 2021年初めから約3か月 | ほぼ0円 | 2銘柄は上がり、2銘柄は下がった |
| 「最先端」の成長株・新興株(5銘柄) | 2021年半ばまで | −数万円 | 1銘柄だけ上がり、4銘柄は暴落 |
| 米国の大型個別株(約70万円) | 約1年半。2022年半ばに売却 | +約10万円 | 配当は別。管理に疲れて売却 |
| JT株 | 2020年後半〜2021年2月 | −約800円 | 減配予想が出たタイミングで売却 |
本は、仕手株、米国個別株、成長株、優待、高配当と、いろいろなものを買いあさりました。ただ、仕手株の本はよく分からず、実際に手を出すことはありませんでした。
クリーンエネルギー株は、2021年の初め、バイデン大統領の就任直後に4銘柄くらい購入しました。2銘柄は伸び、2銘柄は下がり、3か月ほどで合計トントンくらいで売っています。期待がすでに株価に織り込まれていたのかもしれません。ファンダメンタル分析の大切さに気づいたきっかけでした。
成長株・新興株は、「最先端」とされた5銘柄です。電気で飛ぶヘリコプターの企業だけが上がり(利益は約1万円)、ほかの4銘柄は暴落しました。損が大きかったのは、IPOしたての水耕栽培の新興企業(約5万円分)とiRobot(約3万円分)です。最初はしばらく伸びましたが、新興株ブームが過ぎるとひたすら下がり、2021年半ばまで持って、どちらも半分以下になった記憶です。購入額が少なかったので、損失も数万円規模で済みました。
流行りのテーマ株に飛びついた話は、以前こちらにも書きました。
米国の大型個別株は、ダウ平均の採用銘柄を中心にした高配当・連続増配株です。マイクロソフトやアップルなどのハイテク株は伸び、3Mは株価が横ばいで配当だけは良く、ウォルマートは順調に伸びました。ナイキも持っていました。ほぼ毎月配当が入る組み合わせで面白かったのですが、銘柄が多くて管理に疲れ、約1年半で売りました。相場が良かったので、売却益は約10万円です(配当を含めると、もっと多くなります)。
ちなみにナイキは、売った2022年半ばには100ドル台でしたが、2026年10月9日の終値は約35ドルです。売ってよかったと、胸をなで下ろしています。
実際の損で足すと、6年分でほぼトントン
マイナスは、本代が約2万円、成長株・新興株が数万円規模、JT株が約800円。プラスは、米国の大型個別株の売却益が約10万円です。クリーンエネルギー株はトントンでした。
差し引きすると、6年分の勉強代は、ほぼトントンという計算になります。記憶に基づく概算なので数万円単位の誤差はありますが、払ったお金で見れば、勉強代は小さく済んだことになります。
ただ、これは「実際に払ったお金」で数えた場合の話です。数え方を変えると、景色ががらりと変わります。
「持ち続けていたら」で数えると、JTがいちばん高かった
JT(日本たばこ産業)の株は、2020年後半に、配当目的で単元未満の20株ほどを購入しました。2021年2月、JTが大きな減配予想を発表します。私には「配当目的で持っている株が大きく減配したら売る」というルールがあったので、それに沿って、含み損のまま売りました。不安で投げたのではなく、決めていたとおりの判断でした。
JTは2021年2月9日の2020年12月期の決算短信で、2021年12月期の年間配当予想を130円と発表しました。前の期の154円からの減配です。
ここでは、株数を20株(単元未満)、売値を発表の翌営業日(2021年2月10日)の終値1,990.5円とします。買値は、2020年7〜12月の終値の範囲(1,812円〜2,213.5円、平均2,031円)で考えます。2,000円前後です。
| 20株(単元未満)の場合 | 金額 |
|---|---|
| 買値(2020年7〜12月の終値の平均2,031円) | 約4万600円 |
| 売った金額(2021年2月10日の終値1,990.5円) | 3万9,810円 |
| a) 実際の損 | 約800円 |
| b) 持ち続けていた場合 | 16万6,320円 |
| うち株価(2026年10月9日の終値7,230円) | 14万4,600円 |
| うち売却後の配当(1株1,086円) | 2万1,720円 |
| c) 機会損失(b − 売った金額) | 12万6,510円 |
売却後の配当は、1株あたり2021年12月期140円、2022年188円、2023年194円、2024年194円、2025年234円、2026年の中間配当136円で、合計1,086円です(各年の決算短信と2026年7月の配当の開示。記念配当・特別配当はありません)。
実際の損は約800円です。それが「持ち続けていたら」と比べると、差は約12.7万円。一覧のどの勉強代よりも大きな金額でした。
売ったあと、JTの年間配当は、減配予想の130円から実際には140円になり、2025年12月期には234円まで増えました。株価は2026年10月9日に7,230円と、売った時の約3.6倍です。
ルールどおりに売ったことを、間違いだったとは思っていません。当時知っていた情報で、決めていた手順に従っただけです。ただ、正しい手順で判断しても、勉強代がかかることはある。ルールは大きな損を防ぐための道具で、利益まで約束してくれるものではない、ということだと思います。あなたなら、あのとき売りましたか。
JT株を手放した話は、こちらにも書いています。
大失敗しなかったのは慎重さか:勉強代を小さくした3つの仕組み
振り返ると、勉強代が小さく済んだのには、仕組みの面での理由がありました。
1. 生活費とは別の予備の資金から出した
個別株に出したのは、生活費とは別の予備の資金でした。値下がりしても、生活費には影響しない形です。
2. テーマごとに少額に分けた
成長株・新興株は、損が大きかった2銘柄でも約5万円分と約3万円分でした。1つ外れても、致命傷にならない大きさです。
3. 合わないと分かったら、仕組みに置き換えた
米国の個別株は管理に疲れて売り、今はVYMとSPYDをETFで、SCHDを日本の投資信託で持っています。SCHDは、日本ではETFとして購入できないためです。「管理を考えると、高配当ETFで十分だった」というのが、今の結論です。
本も、今振り返ると3冊で十分でした。私にとって今も読んでよかったと思うのは、『本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長)、『ほったらかし投資術』(山崎元、水瀬ケンイチ)、『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール)です。『お金の大学』は、今も私のバイブルです。個別株投資の本は、全部買う必要はありませんでした。
インデックス投資と高配当株投資を両方続けている理由は、こちらに書いています。
それとも運か
ただ、慎重さだけで説明するのは、少し都合がよすぎる気もします。
個別株を始めた2020年ごろは、相場が良い時期でした。米国の大型個別株で売却益が出たのも、相場が良かったからです。
2022年の下げ相場は、「金利上昇局面の一時的な下げだろう」と思っていました。下がるのは気持ちよくありませんが、「脳をフリーズさせて、ひたすら積み立てと『貯株』を続ける」と自分に言い聞かせていました。
もしリーマン・ショックの直前に始めていたら、正直、続けられなかったと思います。当時は一般の人が投資をするハードルも手数料も高く、たぶんやめていました。
投資にやさしい今の環境には、感謝しています。その時期に自分の20代が重なったのは、「豪運」でした。
私の投資の考え方の全体像は、こちらにまとめています。
まとめ:慎重さ半分、運半分
6年分の勉強代を実際の損で数えると、ほぼトントンでした。一方で「持ち続けていたら」で数えると、ルールどおりに手放したJT株だけで約12.7万円。いちばん高い授業料は、手放したあとに静かに積み上がっていました。
大失敗しなかったのは、慎重さ半分、運半分といったところです。失敗談がないのが悩みのブロガーとしては、次の暴落で、本当の授業料を払うことになるのかもしれません。
※本記事は筆者個人の経験をもとにしたもので、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨するものではありません。金額は筆者の記憶に基づく概算です。JT株の計算は20株(単元未満)でのもので、株価はYahoo!ファイナンス(株探とYahoo!ファイナンス日本版で照合)、配当は同社の決算短信と適時開示に基づく税引前の金額です。手数料と税金は考慮していません。データは2026年10月時点の情報に基づいています。
著者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。