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「投資で一番後悔している失敗は何ですか」——もしそう聞かれたら、私は迷わずこう答えます。それは、流行りのテーマ株に、次々と飛びついたことです。
太陽光発電、土のいらない新しい農業、米国における大麻ビジネス、お掃除ロボット……。
「これから来る」と言われた銘柄を、私は数年にわたって買い続けました。幸い、いつも少額ずつの投資だったので、致命的な痛手にはなりませんでした。でも、お金の損得以上に大事なことを、私はこの回り道で学びました。今日は、その恥ずかしい失敗の数々と、そこから得た教訓を、できるだけ正直にお話しします。
「これから来る」に、私は何度も飛びついた
話は、コロナ禍の直後にさかのぼります。2021年のはじめ、新しく就任した米国のバイデン大統領が環境政策を前面に打ち出し、市場では米国の太陽光発電関連株が大きな注目を集めていました。「脱炭素の時代が来る」という空気に乗って、私もその波に飛び乗りました。
最初は、少し上がりました。やった、と思ったのも束の間です。その後、金利の上昇局面でクリーンエネルギー株は総崩れとなり、私の保有株もすぐに大きく暴落しました。これが、私の投資人生で一番の後悔として残っています。
それだけでは終わりませんでした。今度は、ある投資会社のレポートを読んでは、そこで「有望」とされた銘柄を次々に買っていきました。土を使わない水稲栽培システムを手がける新興企業、大麻関連のビジネスを展開する米国企業、自動で部屋を掃除するロボットで知られるあの会社(iRobot)。どれも「これから世界を変える」という、わくわくする触れ込みでした。けれど、その多くは報われませんでした。
正直に告白すると、当たったものもありました。ヘリコプターの自動運転を手がける企業に投資したときは、大きく儲かったのです。でも、断言できます。あれは完全に「たまたま」でした。同じことをもう一度やれと言われても、再現できる自信はまったくありません。そして厄介なことに、こうして時々当たってしまうからこそ、私はこの「飛びつく癖」からなかなか抜け出せなかったのです。
失敗の共通点は「自分で理解していなかった」こと
これらの失敗を、今になって振り返ってみます。すると、ある一つの共通点に気づきました。それは、どれもこれも「他人の確信」に乗った投資だったということです。
政策への期待、投資会社のレポート、そしてあるインフルエンサーが書いた本——買う理由は、いつも自分の外側にありました。太陽光業界のことも、大麻ビジネスの実態も、私自身は深く理解していませんでした。「専門家がそう言っているから」「みんなが盛り上がっているから」。それが、私の買う動機のすべてだったのです。
あるインフルエンサーの本に書かれた通りに、米国の有名な大型株にもいくつか投資しました。これは通算では儲かったので、失敗とは言い切れません。でも、自分で深く納得して買ったわけではないので、米国市場が開いている時間になると値動きが気になって仕方なく、夜ごとに神経質になっていました。「他人が確信しているから」買ったものは、いざ下がったときに、自分の頭で判断ができません。だから、ただ狼狽するしかなかったのです。
以前、スーパーで若いカップルが話題の半導体株を語っているのを聞いて「立ち止まろう」と感じた、という記事を書きました。流行りに乗ろうとするとき、人は自分の頭で考えることをやめてしまう——あの違和感の正体も、結局はこれと同じだったのだと思います。
流行りに乗ることへの違和感については、キオクシアを例にこちらの記事でも書いています。
高い授業料を払って学んだ、3つの教訓
これらの回り道で払った授業料は、決して安くはありませんでした。でも、おかげで3つの大切な教訓を得ることができました。
教訓1:他人の「物語」ではなく、自分が理解できるものに投資する
レポートやインフルエンサーが語る「これから来る」という言葉は、とても魅力的な物語です。聞いているだけで、未来が約束されているような気分になります。でも、自分が腹の底から納得していないものは、いざ下落したときに持ち続けることができません。太陽光株のときの私が、まさにそうでした。だから今は、「自分が事業内容を自分の言葉で説明できない会社は買わない」というルールを徹底しています。物語ではなく、理解で買う。これが一つ目の教訓です。
教訓2:「待つ」も投資の一部——待機資金を持つ
昔の私には、悪い癖がありました。少し下がったと思ったら、すぐに手元の資金を全力で投じてしまうのです。特に、まだ給料がそれほど高くなかった頃は、高配当株を値段もろくに確かめずに、見つけた端から買っていました。その結果、もっと安く買えるチャンスが来ても、手元に資金が残っていない、ということがよくありました。
今は違います。割安になるまでじっくり待ち、必ず待機資金を残すようにしています。相場が大きく下げたとき、狙っていた銘柄をまとめて買えるように、資金管理を徹底するようになりました。何もしないで「待つこと」も、立派な投資行動の一つなのだと、今ならよく分かります。
教訓3:派手な急成長より、退屈でも続けられる仕組みを早く持つべきだった
これが、一番大きな教訓かもしれません。もし私が、インデックス投資(長期・積立・分散)をもっと早く投資の主軸に据えていれば、米国の相場時間ごとに神経をすり減らすこともなく、もっと気長に構えていられたはずです。流行り株の興奮は、長くは続きません。一方で、退屈なインデックスの積立は、何年も、何十年も淡々と続いていきます。「退屈さ」こそ、長期投資における最大の武器だった——これに気づくのが、私はあまりにも遅すぎました。
正直に言うと、今もまだ完璧ではありません
ここまで偉そうに教訓を語ってきましたが、最後に正直に告白させてください。私は、今もまだ完璧な投資家ではありません。現在進行形で、迷っていることがあります。
それは、投資する商品を広げすぎているかもしれない、という迷いです。私は今、日本株・米国株のほかに、金(ゴールド)、債券(米国総合債券・先進国債券・新興国債券)、そして日米のREIT(不動産投資信託)のETFにも投資しています。これらは「ポートフォリオのスパイス」のつもりで持っているのですが、「もっとシンプルにできるのではないか」と、ずっと心のどこかで思い続けています。教訓1で「理解できるものに」と言いながら、自分でも少し手を広げすぎている自覚があるのです。
ただ、難しいのは、ここ最近の金の上昇相場を見ると「やっぱり持っていてよかった」とも思えることです。だから、簡単には答えが出ません。投資に、誰にでも当てはまる完璧な正解はないのだと思います。私自身、今もこうして試行錯誤の真っ最中です。偉そうに失敗談を語っておきながら、お恥ずかしい限りなのですが。
失敗が教えてくれた、私の投資の軸
数えきれないほどの失敗を経て、私が今たどり着いている軸。それが、インデックス投資と高配当株投資の「二刀流」です。どちらにも共通しているのは、「自分で理解し、自分のルールで続けられる」という点です。誰かの確信に乗るのではなく、自分の納得で続けている。だからこそ、相場が荒れても、夜は眠れます。
私の一番の後悔は、流行り株で損をしたこと、そのものではありません。この軸にたどり着くのが、遅すぎたことです。でも、こうも思います。あの回り道で授業料を払ったからこそ、「他人の確信は、自分を救ってくれない」と骨身にしみて理解できた。だから今の軸がある。そう考えれば、無駄な失敗など一つもなかったのかもしれません(と、自分を慰めておきます)。
最後に、あなたに一つだけ問いかけさせてください。あなたが今持っているその銘柄は、誰の確信で買ったものですか。自分の確信でしょうか。それとも、誰かの確信でしょうか。一度立ち止まって考えてみると、見えてくるものがあるかもしれません。
私がたどり着いた「インデックス×高配当株の二刀流」については、こちらの記事で詳しく書いています。
※本記事は情報提供および筆者個人の経験・見解を目的としており、特定銘柄や投資手法を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。なお、NISAなどの制度の詳細は金融庁のNISA特設サイトをご確認ください。データは2026年7月1日時点の情報に基づいています。
著者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。