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PBR1倍割れとは、簡単に言えば「会社を今すぐ解散して資産を分配したほうが、株価より価値が高い」という状態です。市場から評価されず、割安に放置されているサインとも言えます。
ただ、私がこの手の銘柄を見るとき、注目しているのは「割安だから、いつか株価が上がるかもしれない」という値上がり期待ではありません。それよりも大切にしているのは、「割安なのに、配当をしっかり出し続けているかどうか」です。
株価がいつ見直されるかは、正直、誰にも分かりません。でも、配当は企業が出し続ける限り、着実に受け取れます。今日は、PBR1倍割れの銘柄の中から、配当の厚い5銘柄を選びました。
なぜ「割安×高配当」を狙うのか
PBR1倍割れの銘柄は、市場から十分に評価されず、放置されている状態にあります。そこに、しっかりとした高配当が乗ると、二段構えの魅力が生まれます。株価が上がらなくても配当がもらえる。もし株価が見直されれば、さらに嬉しい——そんな組み合わせです。
東証は資本効率を意識した経営の実現を上場企業に求めており、割安に放置された銘柄が、将来的に見直される可能性はあります。ただし、私はここで「だから必ず上がる」とは言いません。それは誰にも約束できないことだからです。むしろ大事なのは、「配当を減らさない企業か」という一点です。PBRが低いだけで、何年経っても株価も配当も冴えない「万年割安株」——いわゆるバリュートラップには、絶対にはまりたくありません。
PBRが低いだけで飛びつく「バリュートラップ」の危険については、東証の資本改革を扱ったこちらの記事もご覧ください。
今回の銘柄選定5基準
5銘柄の選定にあたり、以下の基準を設けました。
- PBR1倍割れ(またはそれに近い割安水準)
- 配当利回り3.0%以上
- 過去5〜10年で大きな減配・無配転落をしていないこと(最重要)
- 自己資本比率が高めなど、財務が健全であること
- バリュートラップを避け、実際に事業が堅調であること
今回、候補として検討した中には、鉄鋼や海運、自動車完成車など、コロナ禍やその前後で大きく減配・無配転落した企業が数多くありました。みんかぶの連続増配ランキングなども参考にしながら過去の配当実績を一社ずつ確認し、そうした企業はすべて外しています。
PBR1倍割れ×高配当 5銘柄 一覧表
| 銘柄名(コード) | セクター | PBR | 配当利回り | 自己資本比率 | 配当の安定性 |
|---|---|---|---|---|---|
| 双日(2768) | 総合商社 | 0.99倍 | 約3.46% | 29.9% | 過去5年減配なし・増配基調 |
| 王子HD(3861) | 紙・パルプ | 0.66倍 | 約4.35% | 41.0% | 過去10年減配なし |
| デンソー(6902) | 自動車部品 | 0.96倍 | 約3.79% | 62.9% | 過去10年減配なし |
| 三井化学(4183) | 化学 | 0.94倍 | 約3.40% | 40.2% | 過去10年減配なし |
| 日本トランスシティ(9310) | 倉庫・運輸関連 | 0.77倍 | 約3.47% | 57.9% | 過去10年減配なし |
①総合商社:双日(2768)
なぜ割安に放置されているか:双日(2768)は、三菱商事や伊藤忠商事に比べると規模の小さい総合商社です。金属・化学品・自動車・航空機関連など幅広い事業を手がけていますが、大手商社ほどの知名度や資本効率の高さが評価されにくく、PBR0.99倍という水準に甘んじています。地味な事業ポートフォリオゆえの割安さと言えます。
配当の厚みと安定性:配当利回りは約3.46%。2023年3月期の130円から2026年3月期は165円予想へと、4年連続の増配が続いており、過去5年で減配は確認されていません。株主還元への姿勢は明確です。双日のIR配当情報もあわせてご確認ください。
リスク・懸念点:①自己資本比率は29.9%と、今回の5銘柄の中ではやや低めで、財務レバレッジが効いた構造です。②資源価格や為替の変動が業績に影響しやすく、市況次第では増益ペースが鈍る可能性があります。
②紙・パルプ:王子ホールディングス(3861)
なぜ割安に放置されているか:王子HD(3861)は、板紙・段ボール原紙で国内最大手の製紙会社です。紙需要はペーパーレス化で構造的に縮小傾向にあり、成長期待の乏しさからPBR0.66倍という、今回の5銘柄で最も割安な水準に放置されています。地味で目立たない業種であることも、割安さの一因です。
配当の厚みと安定性:配当利回りは約4.35%と、今回の5銘柄で最も高い水準です。過去10年の配当実績を確認したところ、減配は一度も確認されず、据え置きまたは増配のみで推移しています。特に近年は増配ペースが加速しており、構造改革と生産最適化を進める経営姿勢が、株主還元にも表れています。
リスク・懸念点:①国内の紙需要そのものが長期的に縮小しており、成長ドライバーに乏しい点は否めません。②木材パルプなど原材料価格の変動が、収益に影響を与えることがあります。
③自動車部品:デンソー(6902)
なぜ割安に放置されているか:デンソー(6902)は、トヨタグループの中核をなす世界最大級の自動車部品メーカーです。技術力・財務基盤ともに盤石ですが、自動車産業全体がEVシフトなどの構造変化に直面していることへの警戒感から、PBR0.96倍という割安水準にとどまっています。
配当の厚みと安定性:配当利回りは約3.79%。過去10年の配当実績を確認したところ、2019〜2021年は35円で据え置かれた時期があったものの、減配は一度も確認されませんでした。その後は着実な増配基調に転じています。自己資本比率62.9%という極めて高い財務健全性も、配当の安定性を裏付けています。
リスク・懸念点:①トヨタグループへの売上依存度が高く、グループ全体の生産動向に業績が左右されます。②EVシフトに伴う部品構成の変化が、中長期的な事業構造の見直しを迫る可能性があります。
④化学:三井化学(4183)
なぜ割安に放置されているか:三井化学(4183)は、石油化学から機能性材料まで幅広く手がける総合化学メーカーです。化学セクター全体が原油・ナフサ価格に業績が左右されやすい「市況産業」と見なされがちで、成長性への懐疑からPBR0.94倍という水準に据え置かれています。
配当の厚みと安定性:配当利回りは約3.40%。過去10年の配当実績では、2019〜2021年の50円据え置きを経て、その後は60円、70円、75円と着実な増配が続き、減配は一度も確認されていません。市況の波を受けながらも、株主還元の姿勢を崩していない点が評価できます。
リスク・懸念点:①原油・ナフサ価格の変動が、原材料コストを通じて収益に直接影響します。②化学品市況の悪化局面では、他の市況産業と同様に業績のブレが大きくなる可能性があります。
⑤陸運・倉庫:日本トランスシティ(9310)
なぜ割安に放置されているか:日本トランスシティ(9310)は、三重県四日市を本拠とする、1895年創業の老舗総合物流企業です。倉庫業・港湾運送・陸上運送・国際複合輸送まで幅広く手がけていますが、物流は「社会に不可欠だが目立たない」BtoB事業の典型で、個人投資家からの知名度が低く、PBR0.77倍という割安水準に放置されています。地味な業種ゆえの発掘感がある一社です。
配当の厚みと安定性:配当利回りは約3.47%。過去10年の配当実績を確認したところ、減配は一度も確認されず、長年10円前後で安定していた配当は、「配当性向40%もしくはDOE2.0%のいずれか高い金額を目安とする」方針への転換を機に、2025年3月期には13円から39円へと大幅増配されました。自己資本比率57.9%と財務も健全で、時価総額は約831億円と中小型株ならではの発掘感も兼ね備えています。
リスク・懸念点:①物流業界全体が抱える人手不足や、いわゆる「2024年問題」以降のドライバー人件費上昇が、コスト増要因になり得ます。②港湾運送や特定の荷主企業への依存度が高く、取扱貨物量の変動が業績に影響します。③PBRの低さが今後も続き、株価評価がなかなか見直されない「バリュートラップ」に陥るリスクも否定はできません。
まとめ:PBR1倍割れは、それだけでは買う理由にならない
今回の5銘柄を整理すると、①双日は地味な商社、②王子HDは縮小市場の紙、③デンソーはEV不安を抱える自動車部品、④三井化学は市況産業、⑤日本トランスシティは目立たない物流——どれも、それぞれの理由で市場に見過ごされ、PBR1倍前後の割安水準に放置されています。ですが、共通しているのは、過去5〜10年にわたって減配をしていないという一点です。
PBR1倍割れというだけでは、正直、買う理由にはなりません。それだけなら、株価が万年安いままの「バリュートラップ」に終わる可能性もあります。でも、「割安×配当が厚い×減配しない」の3つがそろえば、株価の見直しをじっくり待つ価値があると、私は考えています。値上がりを当てにいくのではなく、待っている間もしっかり配当を受け取れる——これは、今の自分への還元を大切にする、私の高配当株投資の一角として、十分に機能してくれるはずです(もちろん、私も含み損を抱えながら気長に待つのは得意ではないのですが、配当があると不思議と待てるものです)。
配当利回りの高さだけで飛びつく危険については、こちらの記事で詳しく解説しています。
※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年7月17日時点の情報に基づいており、株価・配当利回り・PBRは変動します。
著者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。