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「配当利回り3.5%」と聞いて、どう感じるでしょうか。100万円を投資して、年間35,000円。月に直すと約2,900円です。正直に言えば、私も投資を始めたばかりの頃は「思ったより地味だな」と感じていました。銀行預金よりはずっといいけれど、人生が変わるほどの金額には見えません。
ところが、この見方はある要素を見落としていました。それが増配率です。高配当株の中には、毎年少しずつ配当を増やしてくれる企業があります。今もらえる金額ではなく、「その金額が毎年育っていく」としたら、話はまったく変わってきます。
今日は、この増配率を計算に組み込むと、配当がどこまで化けるのかを実際に試算してみました。しかも「配当を使う場合」と「配当を再投資する場合」の2つの未来を比べています。数字を見たとき、私は思わず「これは地味どころじゃないな」とつぶやいてしまいました。
今回の設定:100万円・利回り3.5%・増配率5%
まず、今回のシミュレーションの前提を整理しておきます。
- 投資額:100万円(一括投資、追加投資はなし)
- 初期の配当利回り:3.5%(1年目の年間配当は35,000円)
- 増配率:年5%(毎年、配当額が5%ずつ増えていく前提)
ポイントは増配率5%という設定です。これは実在する連続増配株の増配ペースを参考にした水準ですが、あくまで仮定であって、将来の増配を保証するものではありません。この点は後半でも改めて触れます。まずは「もし5%の増配が続いたら」という思考実験として読んでみてください。
なお、増配率を加味せず、利回りだけで配当を再投資した場合の10年シミュレーションは、以前こちらの記事で計算しています。今回はそこに「増配率」を掛け合わせ、20年スパンまで伸ばしたのが新しい点です。
パターン①:配当を「使う」だけでも、20年でこう育つ
まずは、受け取った配当を再投資せず、そのまま生活に使ってしまうパターンです。「複利を捨てているのだから、大して増えないだろう」と思われるかもしれません。結果を見てみましょう。
| 年数 | 年間配当額 | 月額換算 | 累計受取配当 |
| 1年目 | 35,000円 | 2,917円 | ― |
| 5年目 | 42,543円 | 3,545円 | 193,397円 |
| 10年目 | 54,296円 | 4,525円 | 440,226円 |
| 15年目 | 69,298円 | 5,775円 | 755,250円 |
| 20年目 | 88,443円 | 7,370円 | 1,157,308円 |
1年目は35,000円。やはり地味です。ところが増配が積み重なると、10年目には54,296円、そして20年目には88,443円——最初の2.5倍にまで育っています。月額に直すと、2,917円だった配当が7,370円になっている計算です。
さらに注目したいのが、いちばん右の列です。これは「使いながら」受け取ってきた配当の累計額で、20年間で1,157,308円。つまり、投資した100万円を超える金額を、すでに受け取り終えていることになります。株式そのものは手元に残したまま、です。何もしていないようでいて、増配がしっかり働いてくれているわけです。
ちなみに私自身は、円建ての配当については「使う派」です。配当で家族と外食に行くことを、投資を続けるうえでの楽しみにしています。私がどう配当を使っているかについては、こちらの記事で具体的に書いています。
パターン②:では、配当を「再投資」したらどうなるか
次に、受け取った配当を毎回同じ利回りの株に再投資し続けた場合です。ここでは増配と再投資による複利が同時に働くことになります。
| 年数 | 年間配当額 | 評価額(元本+再投資分) |
| 1年目 | 35,000円 | 1,035,000円 |
| 5年目 | 48,505円 | 1,207,388円 |
| 10年目 | 72,935円 | 1,519,228円 |
| 15年目 | 109,669円 | 1,988,129円 |
| 20年目 | 164,905円 | 2,693,195円 |
20年目の年間配当は164,905円。配当を使った場合(88,443円)の約1.87倍であり、スタート時点の35,000円と比べると約4.7倍です。月額に直せば約13,700円が、何もしなくても入ってくる計算になります。
さらに評価額(元本+再投資分)は2,693,195円。当初の100万円が、約2.7倍に育っています。これは株価の値上がりを一切見込まず、配当の再投資だけで到達した数字です。
なぜここまで差がつくかというと、複利が二重にかかっているからです。1つは「配当を再投資して株数が増える」複利、もう1つは「1株あたりの配当そのものが増配で増えていく」複利。インデックス投資が”ほったらかし”で効果を発揮するのと同じ理屈が、高配当株の再投資にも働いているわけです。
2つの未来を、グラフで比べてみる
ここまで数字を並べてきましたが、言葉で説明するより、グラフで見たほうが一目瞭然です。

差は歴然です。とくに10年を過ぎたあたりから、再投資したほうのカーブが目に見えて跳ね上がっていきます。複利の効果は、時間が経つほど加速するということが、視覚的にもよく分かります。
これは絵空事ではない:実在する増配株の例
「増配率5%なんて、都合のいい仮定では?」と思われた方もいるかもしれません。そこで、実在する連続増配株の配当が、この10年でどう伸びてきたかを確認してみました(いずれも2026年7月時点のデータで、過去10年に減配がないことを年度ごとに確認しています)。
- 花王(4452)……30期を超えて増配を続ける日本を代表する連続増配銘柄。1株あたり配当は10年で47円から78円へと伸びており、年平均の増配率は約5%。今回の前提とほぼ同じペースです(配当利回りは約2.4%)
- KDDI(9433)……20年以上増配を継続。配当は10年で42.5円から84円へとほぼ2倍になり、年平均の増配率は約7%です(配当利回りは約2.9%)
- 三菱HCキャピタル(8593)……25期を超える連続増配。配当は10年で12.3円から46円へと約3.7倍、年平均の増配率は約14%に達します(配当利回りは約3.7%)
もちろん、これらの企業が今後も同じペースで増配を続ける保証はどこにもありません。実際、花王は直近数年の増配幅が1円ずつと、以前よりペースが鈍化しています。それでも、「増配率5%前後」という前提が、まったくの絵空事ではないことは、実際の数字が示していると思います。
このシミュレーションが「魔法」ではない理由
ここまで景気のいい数字を並べてきましたので、限界についても正直にお伝えしておきます。
1つ目は税金です。今回の試算には税金が含まれていません。課税口座で配当を受け取る場合、配当所得には約20%(20.315%)の税金がかかります。20年目の配当164,905円も、手取りベースでは約13万円台になる計算です。一方でNISA口座であれば配当は非課税になりますので、この差はかなり大きなものになります。
2つ目は増配が永遠に続く保証はないという点です。業績が悪化すれば減配もありますし、最悪の場合は無配に転落することもあります。20年間ずっと5%の増配が続くというのは、かなり楽観的な前提だと言えます。
3つ目は株価変動を含んでいないことです。今回はあくまで「配当額」だけの試算で、株価が下がれば評価額は当然目減りします。ですのでこの数字は、皮算用ではなく「こういう可能性がある」という参考として見ていただければと思います。
まとめ:増配は、配当投資の「隠れた主役」
高配当株を選ぶとき、私たちはどうしても「今の配当利回りが何%か」に目が行きます。でも今回の試算が示しているのは、その利回りが毎年どれだけ育っていくか——つまり増配率のほうが、長期では効いてくるということです。利回り3.5%が地味に見えても、増配が続けば20年後には別物になります。
そして、配当を「使う」も「再投資する」も、どちらも正解です。再投資は資産を最大化しますし、使えば今日の生活が少し豊かになります。大事なのは、そのどちらを選ぶにしても増配を続けられる企業を選んでおくこと。それさえできていれば、時間が味方をしてくれます。
あなたなら、この20年後の配当、使いますか。それとも再投資しますか(私はというと、20年後の自分もきっと「今年の配当は何を食べようか」と考えている気がしています)。
増配し続けている銘柄の見つけ方については、こちらで詳しく解説しています。
※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。本記事のシミュレーションは一定の前提条件に基づく試算であり、実際の投資成果を保証するものではありません。税金・手数料等は考慮しておりません。データは2026年7月24日時点の情報に基づいています。
著者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。