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道路が突然陥没したというニュースや、水道管が破裂して断水したという報道を見かけるたびに、私は「ああ、また来たな」と思うようになりました。数年前までは珍しい事故というイメージでしたが、最近は季節を問わず、あちこちで起きています。蛇口をひねれば水が出るのは当たり前——その当たり前が、実はかなりの綱渡りの上に成り立っていることに、少しずつ気づかされている感じです。
投資家として見ると、これは「先送りできない課題」がそこにある、ということでもあります。水道は止めるわけにいきませんから、財政が苦しくても、どこかで必ずお金が使われます。需要が景気ではなく必要性で決まる——私が好きなタイプのテーマです。
今日は、この水というインフラを足元で支える「裏方」の会社を、中小型で配当も出している5銘柄に絞って紹介します。派手さはまったくありませんが、地味に仕事が途切れない会社たちです。
なぜ水が「国策インフラ」になったのか
水に関する需要が増えている背景には、大きく3つの流れがあります。
1つ目が水道管の老朽化です。日本の水道管は総延長で約74万kmあり、その多くが高度経済成長期に一気に敷設されました。法定耐用年数は40年ですので、当時埋めた管が次々と更新時期を迎えています。全国の自治体が同時にこの問題を抱えているうえ、財政も人手も足りていません。だからこそ、掘り返さずに直せる工法や、壊れにくい管、漏水を早く見つける仕組みへの需要が伸びています。
2つ目が半導体向けの超純水です。半導体の洗浄には、不純物を極限まで取り除いた水が大量に必要になります。国内で先端半導体の工場建設が進むなか、水を「作る」設備の需要も一緒に増えています。水は原材料そのもの、という世界です。
3つ目がPFAS(有機フッ素化合物)への規制強化です。分解されにくく人体への影響が懸念されるこの物質について、各国で基準が厳しくなっています。従来の設備では基準を満たせないケースがあり、水処理技術を持つ企業にとっては、新しい仕事が生まれる要因になっています。
老朽化・半導体・規制。方向はバラバラに見えますが、いずれも「水をきれいにして、確実に届ける」という同じ仕事に行き着きます。私はこれを、国策の主役ではなく主役を支える装備の側だと捉えています。
私が実践する「ツルハシ投資法」の全体像は、こちらの完全ガイドでまとめています。
今回の選定基準
テーマが良くても、投資対象として成立しなければ意味がありません。今回は次の4つで絞り込みました。
- 水インフラの裏方である……管路の更新、計測、処理設備、プラント運営など、水を支える事業を持つ
- 配当利回り2.5%以上……テーマが盛り上がらなくても、配当をもらいながら待てる
- 過去10年で大きな減配・無配転落がない……年度ごとの配当推移を1年ずつ確認しました
- 中小型で財務が健全……時価総額はいずれも3,000億円以下に収めています
この分野の主力企業は、配当利回りが2%を下回っていたり、時価総額が数千億円規模に育っていたり、条件に適する銘柄がありませでした。テーマとして魅力的でも、今回の物差しには合わなかった、ということになります。
水インフラの中小型5銘柄・一覧
| 銘柄(コード) | 役割 | 時価総額 | 株価 | 配当利回り |
| 栗本鐵工所(5602) | 水道管(ダクタイル鉄管) | 約926億円 | 1,447円 | 4.15% |
| 愛知時計電機(7723) | 水道メーター・計測 | 約467億円 | 3,030円 | 3.96% |
| 月島ホールディングス(6332) | 下水・汚泥処理プラント | 約1,041億円 | 2,595円 | 3.39% |
| 前澤工業(6489) | 上下水道の処理設備・バルブ | 約357億円 | 1,719円 | 2.79% |
| メタウォーター(9551) | プラントの運営・維持管理 | 約1,381億円 | 3,120円 | 2.56% |
各銘柄の詳細解説
① 栗本鐵工所(5602):地面の下を支える水道管メーカー
水インフラでの役割:水道用のダクタイル鉄管を主力とする鉄鋼メーカーです。地面の下に埋まっていて誰の目にも触れませんが、水道管が更新されるということは、そのぶん新しい管が必要になるということ。老朽化した管を入れ替える工事が全国で続く限り、需要が途切れにくい立ち位置にあります。道路や橋の維持補修も手がけており、インフラ更新というテーマにまとめて乗れるのも特徴です。
配当・財務の安定性:今回の5銘柄で最も高い配当利回り4.15%。過去10年の配当を年度順に確認すると、10円から60円(予想)まで一度も減配することなく増え続けています。特に直近3年の伸びが大きく、還元姿勢が強まっているのが分かります。自己資本比率は60.7%、PBRは0.93倍と割安感もあります。
リスク・懸念点:①水道管の更新は自治体の予算次第という面があり、財政状況によって発注ペースが鈍る可能性があります。②鉄鋼メーカーですので、鋼材やエネルギー価格の上昇が利益率を圧迫しやすい構造です。
② 愛知時計電機(7723):漏水を「見える化」する計測の会社
水インフラでの役割:水道メーターをはじめとする計測機器のメーカーです。人手不足のなか、検針を自動化するスマートメーターへの置き換えが各地で進んでいます。さらに、流量の細かな変化から漏水を早期に見つける使い方もあり、「管を全部替える予算はないが、壊れそうな場所は知りたい」という自治体のニーズに応えられる点が強みです。一度導入されれば長く使われる、息の長いビジネスでもあります。
配当・財務の安定性:配当利回りは3.96%、自己資本比率74.8%と財務は非常に厚い会社です。ただし正直にお伝えすると、過去10年をたどると2020年3月期に43円台から40円へと小幅な減配がありました。その後は55円、64円、75円、113円と力強く増配しており、直近の還元姿勢はむしろ強まっています。とはいえ「減配ゼロ」ではない点は、押さえておいてください。
リスク・懸念点:①メーターの交換需要は自治体の更新計画に左右され、年度によって業績が振れます。②時価総額が5銘柄で最も小さく、出来高が少ない日には株価が動きやすい点にも注意が必要です。
③ 月島ホールディングス(6332):下水と汚泥を処理するプラントの専門家
水インフラでの役割:下水処理や汚泥処理のプラントを手がける水環境事業と、産業向け設備の事業を持つ会社です。水道は「きれいな水を届ける」だけでは完結せず、使ったあとの水と汚泥を処理して初めて一巡します。この後半部分を担っているのが同社で、目立たないながら都市生活に欠かせない領域です。設備更新と環境関連の投資増加を追い風に、直近は売上・利益とも過去最高を更新しています。
配当・財務の安定性:配当利回りは3.39%。過去10年の配当は17円から88円(予想)まで、減配なしで着実に増えています。特に直近は42円から78円へと大きく伸びており、業績の改善が還元にそのまま反映されている印象です。自己資本比率は48.4%と、この5社の中では中位の水準です。
リスク・懸念点:①プラント事業は大型案件の受注時期によって業績が振れやすく、期ごとの比較が難しい面があります。②産業向け事業は設備投資の動向に左右されるため、企業の投資意欲が冷えると影響を受けます。
④ 前澤工業(6489):上下水道の設備をまるごと手がける専業
水インフラでの役割:上下水道向けの処理設備やバルブを手がける、水道専業に近い会社です。浄水場や下水処理場の設備を設計・施工し、その後のメンテナンスまで担っています。新しく作る仕事だけでなく、既存設備を保守し続ける仕事があるため、景気に関係なく一定の売上が積み上がる構造になっています。時価総額は約357億円と、今回の5銘柄で最も小型です。
配当・財務の安定性:配当利回りは2.79%。過去10年の配当は8円から48円まで、一度も減配せずに伸びています。自己資本比率70.1%と財務も厚く、直近はバルブ事業とメンテナンス事業が好調で全セグメントが増収増益という状況です。小型ながら、堅実さの目立つ一社です。
リスク・懸念点:①官公庁向けの比率が高く、入札の結果や自治体の予算編成に業績が左右されます。②小型株のため流動性が低く、売買のタイミングによっては希望する価格で取引しにくい可能性があります。
⑤ メタウォーター(9551):作るより「運営し続ける」で稼ぐ
水インフラでの役割:浄水場・下水処理場の設備を手がけると同時に、その後の運転・維持管理を長期契約でまとめて請け負う事業に強みがあります。人手も専門知識も足りない自治体にとって、施設の運営ごと任せられる相手は貴重です。設備を売って終わりではなく、十数年単位で続く運営収入を積み上げていくモデルで、景気に左右されにくいのが特徴です。
配当・財務の安定性:配当利回りは2.56%と5銘柄では控えめですが、過去10年の配当は29円から80円(予想)まで減配なしで増加しています。直近も50円から70円、80円と伸びており、業績も売上高・営業利益ともに過去最高を更新中です。自己資本比率は40.6%です。
リスク・懸念点:①長期契約が中心のため、契約更新に失敗すると収益への影響が長く続きます。②自己資本比率は5銘柄で最も低く、大型案件が重なる局面では資金負担が重くなる可能性があります。
まとめ:地味だからこそ、替えが利かない
今回の5銘柄を並べてみると、水インフラの流れがそのまま見えてきます。管をつくる栗本鐵工所、状態を測る愛知時計電機、処理設備をつくる前澤工業、下水と汚泥を処理する月島ホールディングス、そして運営し続けるメタウォーター。上流から下流まで、それぞれが違う持ち場を担っています。
いずれも中小型で、配当利回りは2.5%以上。愛知時計電機に一度だけ小幅な減配がありましたが、それ以外の4社は過去10年、減配していません。水道という仕事は、派手な成長が期待できる分野ではありません。ただ、止めることもできません。地味だからこそ替えが利かない——私が水関連株に感じている魅力は、結局そこに尽きます。
国策の主役に賭けるのではなく、主役を足元で支える装備の側に回る。配当を受け取りながら、インフラ更新という長い流れを待つ。そういう付き合い方に向いたテーマだと思っています。
同じくインフラを支える国産エネルギー株については、こちらでも紹介しています。
※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年7月時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。
著者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。