配当控除で税金は戻る?確定申告の3つの方式を所得別に比べた

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配当金の明細を開くたびに、「税額」の欄を見て小さくため息をついています。1万円の配当なら、引かれるのは2,031円。きっちり20.315%が先に差し引かれて、手元に届くのは8,000円弱です。

ところが株クラでは、ときどき「配当は確定申告すると税金が戻る」という話を見かけます。本当なら、毎年のため息が少しは軽くなるかもしれません。

先に答えを言うと、戻る人はいます。ただし所得の水準によっては逆に税金が増えますし、税金とは別の負担が増える人もいます。この記事では、国税庁の公式な説明をもとに確定申告の3つの方式を比べ、課税所得300万円・500万円・800万円の3つのケースで実際に計算してみました。

確定申告の時期(2〜3月)になってから慌てないよう、いまのうちに整理しておきます。

そもそも配当には何%かかっているのか

国内の上場株式の配当からは、受け取る時点で次の税金が差し引かれています(源泉徴収)。

税金の種類税率
所得税15%
復興特別所得税(所得税の2.1%)0.315%
住民税5%
合計20.315%
上場株式等の配当等(発行済株式の3%以上を持つ大口株主等が受けるものを除く)の場合。国税庁 No.1330をもとに作成。

会社員の場合、この20.315%が引かれた時点で、配当の税金はいったん完結しています。何もしなければ、これが「申告不要」という方式です。

なお、2027年分の所得からは、復興特別所得税の税率が1.1%に下がり、新しく防衛特別所得税(1%)がかかります。ただし合計の税率は変わらないため、源泉徴収される額は同じです(国税庁 No.1331)。この記事の計算は、2026年分の制度(復興特別所得税2.1%)で行っています。

確定申告の3つの方式の違い

上場株式の配当の課税方式は、次の3つから選べます。

申告不要総合課税申告分離課税
確定申告しないするする
税率20.315%所得税は累進(5〜45%)+住民税10%20.315%
配当控除なしありなし
売却損との損益通算なしなしあり
合計所得金額含まれない含まれる含まれる
国保などの保険料影響しない影響しうる影響しうる
国税庁 No.1331の表などをもとに作成。総合課税の所得税には復興特別所得税(2.1%)が加わる。

「申告すると戻る」の正体は、総合課税で使える「配当控除」です。配当の一定割合を、所得税と住民税から差し引ける仕組みです(国税庁 No.1250)。

選び方には、いくつか決まりがあります。
・申告する上場株式の配当は、全額を総合課税か申告分離課税のどちらかにそろえます。一部だけ総合課税、残りは申告分離課税、という分け方はできません。
・申告するかしないかは、配当の1回の支払いごとに選べます。ただし、源泉徴収ありの特定口座で受け取った配当は、口座ごとの選択になります(国税庁 No.1330)。
・確定申告で選んだ方式は、あとから修正申告や更正の請求で変えることはできません(国税庁 No.1331)。

住民税も、2024年度(令和6年度)分からは所得税と同じ方式になりました。以前は「所得税は総合課税、住民税は申告不要」のような組み合わせができましたが、今は所得税で選んだ方式がそのまま住民税にも使われます(東京都北区の案内)。

口座選び(新NISAか特定口座か)の段階から税金を比べた記事は、こちらです。

高配当株は新NISAと特定口座どちらで買う?税金と損失で比べた

所得別の計算例:配当10万円ならいくら変わるか

では、総合課税にすると実際にいくら変わるのか。年間の配当が10万円(税引前、国内の上場株式のみ)の会社員で計算してみます。申告不要なら、税金は20,315円です。

総合課税にしたときの、配当10万円にかかる税金は次のとおりです。
・所得税:(配当10万円×所得税率−配当控除10%)に、復興特別所得税2.1%を上乗せ
・住民税:配当10万円×10%−配当控除2.8%=7,200円

配当控除の率は、課税総所得金額等が1,000万円以下の部分について、所得税が10%、住民税が2.8%です(所得税は国税庁 No.1250、住民税は船橋市の案内など)。所得税率の区分は、国税庁 No.2260の速算表で確かめました。

課税所得所得税率総合課税の税金申告不要との差
300万円10%7,200円13,115円軽い
500万円20%17,410円2,905円軽い
800万円23%20,473円158円重い
年間配当10万円(国内の上場株式のみ)の場合。申告不要は20,315円。配当を加えても所得税率の区分が変わらない前提で、端数処理は省略した概算。

内訳を見ると、課税所得300万円の人は、所得税率10%と配当控除10%がちょうど打ち消し合って、所得税は0円になります。残るのは住民税の7,200円だけです。500万円の人は所得税が10,210円、800万円の人は13,273円で、どちらも住民税の7,200円が加わります。

どの所得帯なら軽くなりやすいか

計算すると、所得税率がおよそ22.8%を下回れば、総合課税のほうが軽くなります。税率の区分に当てはめると、次のようになります。

・課税所得695万円未満(所得税率20%以下):総合課税のほうが軽くなりやすい
・課税所得695万円以上(所得税率23%以上):申告不要のほうが軽くなりやすい

課税所得195万円未満(所得税率5%)の人は、配当控除の10%が配当にかかる所得税を上回るので、差はさらに広がります。たとえば課税所得150万円なら、総合課税の税金は約2,100円で、申告不要より約1.8万円軽い計算です。

逆に、課税総所得金額等が1,000万円を超える部分は、配当控除の率が半分(所得税5%、住民税1.4%)になります。たとえば課税所得1,200万円(所得税率33%)なら、総合課税の税金は約3.7万円で、申告不要より約1.7万円重くなります。

配当を加えると税率の区分をまたぐ人(たとえば課税所得690万円の人)は、配当の一部に高い税率がかかるので、表より少し不利になります。

自分の課税所得は、会社員なら源泉徴収票でおおよそわかります。「給与所得控除後の金額(調整控除後)」から「所得控除の額の合計額」を引いた金額です。

申告すると損をしやすい人

税金だけを見ると総合課税が有利でも、申告によって別の負担が増えることがあります。総合課税(申告分離課税も同じ)で申告した配当は「合計所得金額」に含まれるからです。申告不要なら含まれません(国税庁 No.1331)。

・国民健康保険に加入している人:保険料は所得をもとに計算されるので、申告した配当の分だけ保険料が上がることがあります。自営業の人や、退職して会社の健康保険を抜けた人が当てはまることがあります。
・年金を受け取っている人:後期高齢者医療保険料や介護保険料も、同じように所得をもとに決まります(東京都北区の案内)。
・家族の扶養に入っている人:合計所得金額が増えると、扶養している家族の配偶者控除や扶養控除が受けられなくなることがあります。
・外国株やJ-REITの配当が中心の人:外国株の配当とJ-REIT(投資法人)の分配金は、配当控除の対象外です(国税庁 No.1250)。総合課税にしても配当控除がなく、累進税率がかかるだけになりやすい組み合わせです。

ETFは種類によって扱いが分かれます。国税庁の説明では、ETFのうち税法上の「特定株式投資信託」に当たるものは株式の配当と同じ10%の配当控除の対象ですが、その中でも外国の株価指数に連動するもの(外国株価指数連動型特定株式投資信託)は対象外です。手元のETFがどちらに当たるかは、運用会社の資料で確かめられます。

一方、会社の健康保険や厚生年金の保険料は、勤め先から受け取る給与などの「報酬」をもとに決まります(日本年金機構)。配当を申告しても報酬は変わらないので、会社員本人の保険料には影響しません。会社員が総合課税を検討しやすいのは、この点が大きいと思います。

NISA口座で受け取る配当は、そもそも非課税なので、確定申告の対象になりません。ただし非課税になるのは、証券会社経由で受け取る「株式数比例配分方式」を選んでいる場合に限られます(国税庁 No.1535)。郵便局や銀行で受け取る方式のままだと、NISA口座の株でも20.315%が引かれます。

配当の受け取り方式の違いは、こちらで比べています。

配当金の受け取り方法4種類を比較:NISAで損しない設定はどれか

売却損がある年は、申告分離課税という選択肢も

株を売って損が出た年は、もう1つの方式が候補になります。申告分離課税を選ぶと、上場株式の売却損と配当を相殺(損益通算)できます。相殺しきれない損は、翌年から3年間繰り越せます。繰り越すには、損が出た年に申告し、その後も毎年続けて申告する必要があります(国税庁 No.1474)。

たとえば配当が10万円、別の証券会社の口座で売却損が10万円あった年なら、申告分離課税で相殺すると、配当から引かれていた20,315円の税金がなくなる計算です。ただし、申告分離課税では配当控除は使えません。同じ年の配当について、総合課税で配当控除を使いながら売却損とも相殺する、ということはできません。

また、源泉徴収ありの特定口座で配当も受け取っている場合(株式数比例配分方式)は、同じ口座の中の売却損と配当を、証券会社が自動で相殺しています。申告が必要になるのは、別の証券会社の口座の損と相殺したい場合や、損を翌年以降に繰り越したい場合です。なお、口座の売却損を申告するときは、その口座で受け取った配当も一緒に申告します(国税庁 No.1476)。

会社員が実際にやる手順(e-Tax)

2026年分の確定申告の期間は、2027年2月16日(火)から3月15日(月)までです。税金が戻る還付申告は、2月15日以前でも受け付けています(国税庁)。会社員が配当を申告する流れは、おおよそ次のとおりです。

1. 年明けに証券会社から届く「特定口座年間取引報告書」と、勤め先の源泉徴収票を用意する
2. 国税庁の確定申告書等作成コーナーで、所得税の申告書の作成を始める(マイナポータル連携に対応した証券会社なら、報告書の内容を自動で取り込める)
3. 給与の内容を、源泉徴収票を見ながら入力する
4. 配当の入力画面で特定口座年間取引報告書の内容を入力し、総合課税か申告分離課税かを選ぶ
5. 計算結果(戻る額または納める額)を確認し、マイナンバーカードを使ってe-Taxで送信する

総合課税と申告分離課税で迷う場合は、作成コーナーで方式を切り替えて結果を見比べることもできます。判断がつかなければ、所轄の税務署に相談する選択肢もあります。

まとめ:戻る人は戻る。でも手間と保険料も込みで

配当の確定申告で税金が戻るかどうかは、ほぼ所得税率で決まります。年間配当10万円の会社員なら、課税所得300万円で約1.3万円、500万円で約2,900円軽くなり、800万円ではわずかに重くなる、という結果でした。

判断の目安を並べると、こうなります。
・課税所得695万円未満の会社員で、国内株の配当が中心:総合課税で軽くなりやすい
・課税所得695万円以上、または外国株・J-REITが中心:申告不要のままのほうが軽くなりやすい
・国保や後期高齢者医療に加入している人、扶養に入っている人:税金が軽くなっても、保険料や控除で逆転することがある
・売却損がある年:申告分離課税で損益通算する選択肢がある

見落としがちなのが手間です。数千円のために申告書を作るかどうかは、人によって答えが分かれると思います。

毎年、配当明細の20.315%にため息をついてきた身としては、「申告すれば戻る人がいる」というのは少し救いのある話でした。ただ、計算してみると戻る額は思ったより地味です。ため息を減らすには、税金を取り戻すより、配当そのものを増やすほうが先なのかもしれません。

あなたの課税所得は、どの区分に入っていたでしょうか。


※本記事は情報提供を目的としており、特定の申告方法や銘柄の売買を推奨するものではありません。記事内の税額は2026年10月時点の税制に基づく概算で、端数処理や個別の控除は考慮していません。実際の税額や保険料は、所得の内容やお住まいの自治体によって異なります。最終的な判断は、所轄の税務署や税理士にご確認ください。


著者プロフィール

クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。

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