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配当利回りのランキングを上から順に眺めて、いちばん数字の大きい銘柄から買っていく——投資を始めたばかりの頃の私も試したやり方でした。利回り7%という数字に飛びついて、その後の減配と株価下落でまとめて痛い目を見たことは、いまでもよく覚えています。
それ以来、ランキングの上位には「何か理由があって利回りが高くなっている」と疑ってかかるようになりました。株価が下がって利回りが上がって見えるだけではないか、一時的な配当ではないか——そう考えるのが、私にとっての基本姿勢になっています。
ただ、あるとき思いました。疑うのはいいとして、実際にランキング上位を買った人は、1年後にどうなっているのでしょうか。理屈で警戒するだけでなく、数字で確かめたことは一度もありませんでした。
そこで今回、ちょうど1年前に公開された配当利回りランキングを起点に、上位10銘柄のその後を追いかけてみました。
追跡の方法
起点にしたのは、株探が2025年9月23日に公開した「まだ間に合う、9月配当【高利回り】ベスト30『プライム』編」という記事です。9月に配当の権利がある東証プライム上場銘柄を、配当利回りの高い順に並べたランキングで、今回はその上位10銘柄を対象にしました。
記事に載っている配当額と利回りから逆算すると、使われている株価は2025年9月22日の終値と一致しました。そこで、この日の終値を「当時の株価」とし、2026年9月18日の終値と比べています。配当については、当時の記事の数字、その後に実際に支払われた1年分の配当、そして今期の会社予想の3つを確認しました。
途中で株式分割があった銘柄は、分割後の基準にそろえて比較しています。この1年の間に上場廃止やTOBで追跡できなくなった銘柄は、10社の中にはありませんでした。
結果一覧
| 順位 | 銘柄名(コード) | 当時の利回り | 当時の株価 | 現在の株価 | 騰落率 | 配当の変化 | 現在の利回り |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ディアライフ(3245) | 4.77% | 1,322円 | 1,090円 | -17.5% | 63円→実績63円→今期予想64円 | 5.87% |
| 2 | ノエビアHD(4928) | 4.77% | 4,720円 | 4,810円 | +1.9% | 225円→実績230円→今期予想230円 | 4.78% |
| 3 | キャリアデザインセンター(2410) | 4.24% | 2,360円 | 2,885円 | +22.2% | 100円→実績100円→今期予想160円 | 5.55% |
| 4 | ストライク(6196) | 3.94% | 1,523円 | 1,453円 | -4.6% | 60円→実績60円→今期予想65円 | 4.47% |
| 5 | アトラエ(6194) | 3.79% | 818円 | 887円 | +8.4% | 31円→実績31円→今期予想39円 | 4.40% |
| 6 | LIFULL(2120) | 3.51% | 209円 | 232円 | +11.0% | 7.33円→実績10.41円→今期予想6.72円 | 2.90% |
| 7 | アイザワ証券G(8708) | 3.41% | 1,409円 | 1,783円 | +26.5% | 48円→実績117円(予想なし) | 6.56%※ |
| 8 | パラカ(4809) | 3.35% | 1,999円 | 2,026円 | +1.4% | 67円→実績67円→今期予想72円 | 3.55% |
| 9 | 丸三証券(8613) | 3.28% | 977円 | 1,291円 | +32.1% | 32円→実績70円(予想なし) | 5.42%※ |
| 10 | いちよし証券(8624) | 3.22% | 869円 | 1,686円 | +94.0% | 28円→実績89円(予想なし) | 5.28%※ |
何が起きていたか
正直に書くと、私の予想は外れました。ランキング上位を1年追いかければ、減配した銘柄がいくつか出てくるだろうと思っていたのです。ところが、この1年で実際に支払われた配当が、当時の数字を下回った銘柄は1社もありませんでした。
むしろ増えた銘柄のほうが目立ちます。ノエビアHDとLIFULLは当時の予想より多く支払い、証券3社は当時の数字を大きく上回る配当を出しました。今期の予想まで見ても、減配を見込んでいるのはLIFULLの1社だけで、キャリアデザインセンターのように160円へ大きく増やす予定の会社もあります。
株価はどうだったでしょうか。下落したのは10社中2社で、ディアライフが-17.5%、ストライクが-4.6%でした。残りの8社は上がっています。
もうひとつ確かめたかったのが、「当時の利回りの高さは、株価が下がった結果ではなかったか」という点です。ランキングの1年前、2024年9月末の株価と比べると、株価が下がって利回りが押し上げられていた銘柄は3社ありました。アイザワ証券Gは約20%、ノエビアHDは約9%、アトラエは約4%、それぞれ株価が下がった状態でランキングに入っていました。
ただ、この3社はその後いずれも株価が上がり、配当も維持か増配でした。株価下落で利回りが高く見えていたこと自体は事実ですが、今回の1年間については、それがそのまま悪い結果にはつながっていません。
逆に、ディアライフとストライクは、ランキング入りの時点で株価がむしろ上がっていた銘柄です。ディアライフは1年前から株価が6割ほど上昇しており、ストライクも配当を倍に増やした直後でした。下落したのは、株価下落で利回りが高く見えていた銘柄ではなく、上昇の後にランキング入りした銘柄のほうだった、という結果になります。
もっとも、この結果には前提があります。後で詳しく書きますが、この1年は株式市場全体が大きく上がった1年でした。配当の維持も株価の上昇も、市場の追い風に助けられた面が大きいと考えています。
印象に残った銘柄
いちよし証券(8624):株価が約2倍、配当は3倍に
10社の中で最も大きく動いたのが、いちよし証券です。株価は869円から1,686円へと94.0%上昇しました。配当も、当時の記事では28円でしたが、2026年3月期は89円が支払われています。前の期までは3期続けて34円でしたので、大きな増配でした。2026年3月期の最終利益は前期の約2.8倍の43.9億円で、相場の活況がそのまま業績と配当に出た形です。
証券3社に共通していたこと
アイザワ証券G、丸三証券、いちよし証券の3社は、どれも業績に応じて配当を決める方針で、事前に年間の配当予想を出していません。ランキングに載っていた配当額は当時の中間配当の数字(年間予想は未公表)にすぎず、市場が好調だったこの1年は、結果として当時の数字の2〜3倍の配当が支払われました。ただ、この仕組みは逆方向にも働きます。相場が冷え込めば、同じように配当が大きく減ることは十分にありえます。
ディアライフ(3245):配当は守られ、株価は下がった
ディアライフは、配当は当時の63円のとおりに支払われ、今期も64円を予想しています。配当という点では、ランキングを見て買った人の期待どおりでした。一方で株価は1,322円から1,090円へ17.5%下がり、受け取った配当を加えても、1年間の損益はマイナスです。配当が守られることと、損をしないことは別の話だと、あらためて感じた例です。
LIFULL(2120):唯一の減配予想
LIFULLは、当時7.33円を予想していた配当を最終的に10.41円支払いました。ただし今期は6.72円と、前期より減らす予想を出しています(同社IR)。利益に連動して配当を決める方針のため、利益の見通しが下がれば配当も下がります。株価は11.0%上がりましたが、現在の利回りは2.90%まで下がり、ランキングに載っていた頃の水準ではなくなっています。
ランキング上位を買った人に、何が起きたか
では、2025年9月22日に10社へ同じ金額ずつ投資していたら、どうなっていたでしょうか。簡単に計算してみました。
株価の騰落率を10社で平均すると+17.5%でした。これに、1年分の年間配当を受け取ったと仮定した配当利回り(当時の株価に対する実際の年間配当)の平均5.6%を加えると、合計でおよそ+23.1%になります。税金や手数料は考慮しておらず、配当の受け取り時期も単純化した概算です。
数字だけ見れば悪くない結果です。ただ、同じ期間に市場全体はもっと上がっていました。2025年9月22日から2026年9月18日までに、日経平均は+42.9%、TOPIXは+29.3%でした。TOPIXは配当を含まない数字ですので、配当込みで比べると差はさらに開きます。ランキング上位10社は、プラスではあったものの、市場全体には届かなかったことになります。
もうひとつ、結果の中身にも偏りがあります。証券3社を除いた7社の平均は、配当込みで+7.5%でした。10社全体の成績を押し上げたのは、相場の活況で業績が伸びた証券会社で、それ以外の銘柄は市場ほどには上がっていません。
利回りの数字だけで選ぶことの落とし穴については、こちらで詳しく書いています。
この検証の限界
この結果を、そのまま一般化するのは危険だと思っています。理由は3つあります。
まず、1年という期間は短すぎます。配当の維持や減配は、景気が悪くなったときにはっきり差が出るものです。今回の1年間は、その試練がほとんどない時期でした。
次に、起点にしたのは1つのランキングだけです。しかも「9月に配当の権利がある東証プライム銘柄」という限られた範囲のランキングで、証券会社が3社も入る顔ぶれでした。別の時期、別の条件のランキングを起点にすれば、まったく違う結果になった可能性があります。
そして何より、この1年は市場全体が大きく上がった1年でした。日経平均が4割以上上がる環境では、多くの銘柄の株価も業績も押し上げられます。今回の「減配ゼロ」という結果も、この追い風と切り離しては考えられません。
まとめ:ランキングは入口で、その先を見るのは自分
1年前の利回りランキング上位10社を追いかけた結果、実際の減配は0社、今期の減配予想は1社、株価が下がったのは2社でした。10社に均等に投資していれば、配当込みでおよそ2割の利益になっていたことになります。
ただ、同じ期間に市場全体はそれ以上に上がっていましたし、成績の多くは業績連動型の証券会社が稼いだものでした。ランキングを見て買うことが悪いのではなく、ランキングの数字だけでは、その先に何が起きるかはほとんど分かりません。今回の検証で私が得た結論は、そういうものです。
ランキングは、知らなかった銘柄に出会うための入口としては便利です。そこから先で、配当の方針や利益の中身、株価の位置を自分で確かめます。その順番だけは、これからも変えないつもりです。
あなたは、ランキングを見てそのまま買ったことはありますか。私はあります(そして、そのとき買った銘柄はこのランキングには1社も入っていませんでした)。
増配を発表した企業の過去を検証した記事もあります。
※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。記事内の試算は一定の前提に基づく概算であり、税金・手数料等は考慮していません。データは2026年9月時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。
著者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。