2026年9月の権利落ち日、株価は配当分だけ下がったのか検証

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9月25日の記事で、「権利落ち日には配当以上に株価が下がる」という株クラの定説を、2025年9月と2026年3月の2回分のデータで確かめました。結果は、市場全体の動きを差し引くと、下げはおおむね配当くらい。記事では「定説は今回のデータでは確認できませんでした」と書きました。

書いたあとで、ひとつ気になりました。2回だけで言い切ってよかったのか、と。ちょうどその記事を出した翌週が、今年の9月の権利落ち日でした。同じ方法でもう1回測れば、答え合わせができます。

というわけで、2026年9月の権利落ち日(9月29日)も、前回とまったく同じ物差しで測りました。先に言っておくと、今回は前回と少し違う結果が出ています。

前回の記事はこちらです。測り方の理屈や税金の話は、こちらで詳しく書いています。

権利落ち日、株価は本当に配当分だけ下がるのか調べました

今回(C回)の条件

日付と市場全体の動き

今回の権利付き最終日は9月28日(月)、権利落ち日は9月29日(火)です。直前の9月21日から23日は祝日と休日が続いていたので、日本取引所グループの休業日一覧で、9月28日から10月2日までがすべて営業日であることを確かめました。

この日の市場全体は、TOPIX連動ETF(1306)で見ると、前の営業日の終値に比べて始値で+0.07%、終値で-0.65%でした。前回のA回(2025年9月)とよく似た、おだやかな日です。

対象にした銘柄

前回と同じく、権利確定の直前に株探が公開した「まだ間に合う、9月配当【高利回り】ベスト30『プライム』編」(2026年9月22日19時30分公開、数値は9月18日現在)の上位30社を使いました。このランキングも、年間ではなく、今回の権利で受け取れる1回分の配当(中間配当か期末配当。記念・特別配当を含む)で利回りを出しています。

念のため、ランキングの配当と利回りから逆算した株価を、9月18日の実際の終値と全銘柄で照らし合わせました。差は最大でも0.18%で、全銘柄が一致しています。また、各社の決算短信や配当予想のお知らせで、9月28日の時点で今回分の配当予想が出ていたことと、その金額がランキングと同じであることを確かめました。

測り方(前回と同じ)

・理論上の下落幅=今回の1株配当
・実際の下落幅=権利付き最終日の終値から、権利落ち日の始値まで、または終値まで
・吸収率=実際の下落幅÷1株配当(100%なら理論どおり、100%を超えれば配当以上に下がった)
・市場補正=TOPIX連動ETF(1306)の同じ時点の変化率を差し引く

除外と注記

・アトラエはランキングに入っていましたが、除外しました。会社が期末配当の基準日を9月30日から10月31日に変えていて(同社の9月10日の開示)、9月29日はこの会社にとって権利落ち日ではないからです。実際、この日の株価は889円から913円に上がっていました。今回の対象は29社になります。
・丸三証券、東海東京、アイザワ証券Gは、業績に連動して配当を決め、権利確定日の直前に配当の予定額を公表する証券会社です。今回は3社とも9月15日から18日にかけて中間配当の予定額を公表していたので、対象に含めました。
・ネクソンの415円は、9月10日に発表された特別配当(基準日9月30日)です。年に1回の大きな配当なので、ランキングでも利回りが飛び抜けていました。
・株式分割のあったストライク(2026年4月に1株→3株)とティラド(2026年7月に1株→10株)は、どちらも今回より前の分割で、ランキングの配当も株価も分割後の基準になっています。
・上場廃止やTOBで追跡できなくなった銘柄はありませんでした。
・株主優待は、前回と同じく株探のランキングで「最低単位・短期保有でも優待の権利が得られる」印がついていた銘柄を「優待あり」としています。今回はSHOEIと新日本製薬の2社です。

結果:C回(2026年9月)

補正前市場補正後
吸収率(始値)平均/中央値101.9%/100.0%104.0%/100.8%
吸収率(終値)平均/中央値121.5%/125.7%101.5%/104.4%
終値で配当以上に下がった社数21社18社
権利付き最終日(2026年9月28日)終値と権利落ち日(9月29日)を比較した29社の集計。市場補正はTOPIX連動ETF(1306)の同時点の変化率による。
C回(2026年9月)全29社のデータを見る
銘柄(コード)1株配当吸収率(補正前・終値)吸収率(補正後・終値)優待
ネクソン(3659)415円107%102%-
エアトリ(6191)160円51%45%-
ディアライフ(3245)64円111%100%-
キャリアデザ(2410)160円117%105%-
インソース(6200)35円100%87%-
ノエビアHD(4928)230円137%123%-
ストライクG(6196)65円51%37%-
パラカ(4809)72円88%69%-
タスキHD(166A)34円174%153%-
ニーズウェル(3992)14円179%157%-
エクセディ(7278)175円126%104%-
ジャフコG(8595)66.5円98%76%-
LIFULL(2120)6.72円-15%-38%-
スクロール(8005)51円127%104%-
フージャース(3284)37円165%142%-
高島(8007)23円113%90%-
三井松島HD(1518)65円71%48%-
SHOEI(7839)60円110%87%あり
ASB機械(6284)240円42%18%-
東亜道(1882)45円133%110%-
ニシオHD(9699)132円148%125%-
新日本製薬(4931)57円174%150%あり
丸三(8613)36円156%132%-
東海東京(8616)25円152%128%-
ティラド(7236)41円117%93%-
日触媒(4114)70円133%109%-
ジャックス(8584)100円150%126%-
アイザワ証G(8708)48円185%161%-
FPG(7148)46.35円224%200%-
権利付き最終日(2026年9月28日)終値と権利落ち日(9月29日)の終値を比較。市場補正後はTOPIX連動ETF(1306)の同時点の変化率で補正。優待は株探ランキングの印による。並びはランキングの順。

まず始値です。29社中5社(ネクソン、ディアライフ、インソース、パラカ、スクロール)は、権利付き最終日の終値からちょうど配当の分だけ低い値段で寄り付いていました。市場補正後の中央値も100.8%で、寄り付きの時点では、ほぼ教科書どおりです。

ところが終値になると、様子が変わります。市場補正後の吸収率は、平均101.5%、中央値104.4%。配当以上に下がったのは29社中18社で、前回のA回(30社中8社)よりはっきり多くなりました。市場補正後の吸収率を始値と終値で比べると、29社中16社は終値のほうが大きく、寄り付きのあと日中にもう一段下げていました。

平均が中央値より低いのは、LIFULL(1株配当6.72円)が権利落ち日にかえって値上がりしたためです。配当がとても小さいと、少しの値動きでも吸収率が大きく振れます。こうした例があるので、今回も平均より中央値を重く見ています。

優待ありの2社は、新日本製薬が150%、SHOEIが87%と、正反対でした。2社だけでは、優待の影響については何も言えません。

3回分を並べてみると

A回
2025年9月
B回
2026年3月
C回
2026年9月
社数30社30社29社
1306の変化(始値)+0.15%-3.32%+0.07%
1306の変化(終値)-0.64%-1.65%-0.65%
補正前・始値(平均)92.9%176.2%101.9%
補正前・始値(中央値)93.7%173.4%100.0%
補正前・終値(平均)103.8%140.2%121.5%
補正前・終値(中央値)98.3%134.7%125.7%
補正後・始値(平均)98.0%102.1%104.0%
補正後・始値(中央値)98.6%96.0%100.8%
補正後・終値(平均)82.8%103.4%101.5%
補正後・終値(中央値)83.7%95.2%104.4%
補正後・終値で配当以上に下がった社数8社14社18社
A回・B回は前回の記事の集計(対象の選び方は前回の記事のとおり)。C回は今回の集計。補正後の値はTOPIX連動ETF(1306)で市場全体の動きを差し引いたもの。

3回を並べて、まず言えるのは、市場の動きを差し引くかどうかで、景色がまるで変わることです。補正前の数字だけを見ると、B回は配当の1.4〜1.8倍も下がっていて、定説どおりに見えます。差し引くと、3回とも始値の吸収率は平均でも中央値でも100%前後に収まりました。

一方で、終値の吸収率は回によってばらつきました。補正後の中央値は、A回が83.7%、B回が95.2%、C回が104.4%です。A回とC回は、どちらも市場全体がおだやかな日でしたが、A回は配当ほど下がらず、C回は配当よりやや大きく下がりました。同じような日でも、回によって結果が逆になることがある、ということです。

3回分の89社をまとめると、補正後の吸収率の平均は始値で101.3%、終値で95.8%、配当以上に下がったのは89社中40社でした。平均すれば「だいたい配当分」という前回の結論は変わりませんが、1回ごとに見れば、配当以上に下がる回もある、というのが今回の上乗せです。

ただし、3回に増えたといっても、まだ3回です。1回ごとの結果がこれだけ違うと、あと何回か測れば平均の数字も動く可能性があります。ランキングも株探の1種類だけ、優待ありの銘柄も3回合わせて10社しかありません。「定説は正しい」とも「間違っている」とも言い切れる段階ではない、と私は受け止めています。

権利落ち後の3営業日

権利付き最終日の終値で買って配当を受け取ったものとして、3営業日後(10月2日)の終値での損益を計算しました。この3日間で、市場全体(1306)は+0.47%でした。

平均中央値
3営業日後の損益(配当込み)-0.78%-0.79%
3営業日後の損益(配当込み・市場補正後)-1.25%-1.25%
権利付き最終日(2026年9月28日)の終値を基準に、10月2日の終値+今回の1株配当で計算した29社の集計。市場補正後はTOPIX連動ETF(1306)の同期間の変化率を差し引いたもの。

配当を含めても、3営業日後の成績は平均でマイナスでした。配当込みでプラスだったのは29社中9社です。株価だけで権利付き最終日の水準まで戻っていたのは、エアトリとストライクGの2社だけでした。

前回は、5営業日後と20営業日後(約1か月後)を測りました。今回の1か月後の数字は、この記事の時点ではまだ出せません。今回の3営業日は期間が短いので、前回の数字とは並べずに、この回だけの結果として置いておきます。

税金と口座の話は、こちらで

株価の下げが配当とほぼ同じでも、配当には税金がかかるので、口座の種類と受け取り方によって手取りは変わります。このあたりは長くなるので、別の記事にまとめています。配当金の受け取り方法の違いはこちらです。

配当金の受け取り方法4種類を比較:NISAで損しない設定はどれか

新NISAと特定口座のどちらで高配当株を持つかは、こちらで比べています。

高配当株は新NISAと特定口座どちらで買う?税金と損失で比べた

まとめ:3回目で、定説が少しだけ反撃してきました

2026年9月の権利落ち日は、寄り付きの時点ではほぼ配当分の下げでした。ところが終値まで見ると、市場の動きを差し引いても中央値で配当の104%下がっていて、配当以上に下がった銘柄が29社中18社ありました。

前回、「定説のほうが外れていました」と書いたばかりです。そのすぐあとの回で、定説寄りの結果が出ました。データを見る習慣をつけたつもりが、データのほうから「1回や2回で決めつけるな」と言われた気分です。

3回を通して言えるのは、権利落ちの下げは平均すればだいたい配当分で、1回ごとには配当より小さい回も大きい回もある、ということくらいです。私にできるのは、自分の予想を引っこめて、次の権利落ち日もまた数字を数えることくらいだと思います。

あなたが今年の9月の権利落ち日に株価を見たとき、その日の終値まで下げ続けていたでしょうか。それとも、寄り付きだけを見て安心したでしょうか。


※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。記事内の計算は株探の日足データ、株探のランキング記事の数値、各社の適時開示に基づく概算であり、手数料等は考慮していません。株価データは2026年10月2日までのもの、その他のデータは2026年10月3日時点の情報に基づいています。


著者プロフィール

クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。

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