倉庫の自動化はもう実用段階:物流DXを支えるマテハン3社の現在地―物流革命シリーズ②

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通販で注文した荷物が、翌日には玄関に届く。すっかり当たり前になりましたが、あの荷物が倉庫の中でどう扱われているかを想像することは、あまりないと思います。私も投資を始めるまでは考えたこともありませんでした。

その倉庫の中では、いま人の姿が確実に減っています。ここが今日の話のポイントなのですが、高速道路を走る無人トラックはまだこれからの段階である一方、倉庫の中の自動化は、すでに実用段階に入っています。同じ「物流の自動化」でも、進み具合はまったく違うのです。

シリーズ①では幹線輸送の現在地を整理しました。今日はその続きとして、すでに動いている側——倉庫の自動化を支える企業を見ていきます。実用段階にあるということは、業績という形ですでに数字に表れているということでもあります。

幹線輸送の自動運転がいまどこまで来ているかは、こちらの記事で整理しています。

無人トラックはどこまで来たか:社会実装を目前に控えた物流の現在地―物流革命シリーズ①

なぜ倉庫の自動化が進んでいるのか

理由は大きく二つあります。一つは、シリーズ①でも触れた人手不足です。2024年4月のドライバーの時間外労働規制をきっかけに、物流全体で「同じ人数でどう回すか」が切実な課題になりました。運ぶ人が足りないなら、せめて倉庫の中の作業は減らそう、という発想は自然な流れです。

もう一つが、制度の後押しです。2024年5月に公布された改正物流効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)は段階的に施行されており、2026年4月からは、一定規模以上の荷主に「物流統括管理者(CLO)」の選任などが義務づけられる段階に入りました。中長期計画の提出や定期報告も求められ、違反には罰則も設けられています(改正物流効率化法の施行内容の解説)。効率化が「やったほうがいいこと」から「やらなければいけないこと」に変わったわけです。

市場の規模も見ておきます。ここは以前この記事で誤った数字を書いていたので、訂正させてください。調査会社フォーチュン・ビジネス・インサイツによれば、マテリアルハンドリング(マテハン)の世界市場は2024年時点で約2,393億ドル、日本円でおよそ36兆円規模です。そこから年平均6.4%で成長し、2032年には約3,909億ドルに達すると予測されています(deallabによる市場分析)。以前この記事に書いていた市場規模は桁が大きく違っていました。お詫びして訂正します。

世界首位のダイフク(6383)

この分野で世界シェア首位を走るのがダイフクです。自動倉庫だけの会社ではなく、半導体工場のクリーンルーム内で使う搬送システム、自動車工場の生産ライン、空港の手荷物仕分けシステムまで手がけています。

業績は好調です。2026年8月6日に発表された2026年12月期の中間決算では、売上高3,555億円(前年同期比8.9%増)、営業利益567億円(同10.9%増)と、売上・利益ともに過去最高を更新しました。牽引したのは生成AI向けの半導体投資の拡大です。これを受けて通期予想も上方修正され、売上高7,350億円、営業利益1,130億円が見込まれています。さらに受注残高は過去最高の7,400億円超に積み上がりました(同社の決算発表資料)。

株主還元も動いています。中間・期末それぞれ4円ずつ増額され、年間配当は前期比8円増の90円となる見込みです。同社は2030年に売上高1兆円という目標を掲げ、国内の滋賀事業所の拡充や、2026年4月に発表したドイツEISENMANNの買収など、投資にも積極的です。

ただし、注意点もあります。①好調の主因が生成AI向けの半導体投資である以上、その投資サイクルが一巡すれば受注は鈍化します。設備投資は本質的に景気の波を受ける事業です。②株価6,176円に対して配当利回りは1.46%と、今回の3社では最も低い水準です。PERも26倍台と、好調な業績がすでに株価に相応に織り込まれている可能性があります。成長を買う銘柄であって、配当を狙う銘柄ではない、という整理が必要だと思います。

椿本チエイン(6371)とオカムラ(7994)

椿本チエイン(6371)

産業用チェーンで世界首位のメーカーです。マテハンは同社の事業の一部という位置づけですが、倉庫内の搬送・仕分け設備で存在感があります。2027年3月期第1四半期は、子会社化した大同工業の連結効果もあり、売上高が前年同期比30.2%増の850億円と大きく伸びました。

株価2,700円、配当利回りは2.96%(予想配当80円)、PER12.67倍、自己資本比率64.5%と財務は堅固です。チェーンという地味ながら代替の効きにくい製品で稼ぎつつ、マテハンで成長を取りにいく構造は、私の好みに近いところがあります。ただし自動車向けチェーンの比率も高く、自動車産業の生産動向に業績が左右される点は意識しておきたいところです。

オカムラ(7994)

オフィス家具で知られる会社ですが、物流分野では高密度自動倉庫「AutoStore」の国内導入で実績を積んでいます。限られた敷地で保管効率を上げたい都市部のニーズと相性が良い設備です。

株価2,320円、配当利回り4.53%(予想配当105円)と、今回の3社では最も高い利回りです。PER10.41倍、自己資本比率67.6%。2027年3月期第1四半期は売上高が1.9%減となったものの営業利益は10.0%増と改善し、通期予想は据え置きで増収増益を見込んでいます。リスクとしては、主力のオフィス家具事業がオフィス需要という別の循環に左右される点、そして物流設備は工事の進捗によって売上計上時期がずれやすい点が挙げられます。

3社を並べて見る

銘柄名(コード)得意領域株価配当利回り時価総額自己資本比率
ダイフク(6383)自動倉庫・半導体工場向け搬送で世界首位6,176円1.46%約2兆3,458億円59.9%
椿本チエイン(6371)チェーンで世界首位・仕分け設備2,700円2.96%約2,868億円64.5%
オカムラ(7994)高密度自動倉庫(AutoStore)・オフィス家具2,320円4.53%約2,334億円67.6%
※株価・配当利回り・時価総額・自己資本比率は2026年8月7日時点のYahoo!ファイナンスの数値です。

こうして並べると、性格の違いがはっきりします。成長を取りにいくならダイフク、配当を重視するならオカムラ、その中間が椿本チエイン、という整理になるでしょうか。同じ「物流自動化関連」でも、投資家として期待するものはかなり異なります。

この分野に投資するときに、私が見ていること

設備投資関連の銘柄を見るとき、私が必ず確認するものが三つあります。

一つ目は受注残高です。設備は受注から売上計上まで時間がかかるため、受注残は将来の売上の予告編になります。ダイフクの7,400億円超という数字が注目されるのは、そのためです。二つ目は保守・メンテナンスの比率。設備は納めて終わりではなく、その後何年も保守の需要が続きます。この積み上げがある会社は、受注が一時的に落ち込んでも収益が安定しやすくなります。三つ目は財務の健全性で、今回の3社はいずれも自己資本比率が60%前後と、この点では安心して見ていられます。

同時に、正直に申し上げておきたいこともあります。設備投資は必ず波を打ちます。好調なときの数字がそのまま続くことはありませんし、顧客企業が投資を先送りすれば、受注は素直に減ります。テーマとして有望であることと、いつ買っても良いことは別の話です。ですから私自身は、この手のテーマ株はポートフォリオの一部にとどめるようにしています。主力はあくまで、景気に左右されにくい高配当株のほうです。

国策テーマの「主役」ではなく「装備」を売る企業に注目する考え方は、こちらでまとめています。

ツルハシ投資法とは何か:国策の主役ではなく「装備」を売る企業に投資する

まとめ:幹線輸送はこれから、倉庫はもう動いている

シリーズを通して整理すると、物流の自動化には二つの層があります。高速道路を走る無人トラックは、実証を終えて2026年度以降の社会実装を目指している段階。一方で倉庫の中の自動化は、すでに実用段階にあり、企業の業績という形で数字に表れています。同じテーマでも、投資家としての向き合い方は変わってきます。

前者はまだ「これから動くかもしれない」という期待の段階なので、遅れるリスクを織り込んで少額から。後者はすでに受注や利益として見えているぶん、株価にも相応に反映されています。どちらが良いという話ではなく、いま何が起きていて、何がまだ起きていないのかを分けて見ることが大事なのだと思います。

倉庫の中は、私たちが直接目にすることのない場所です。それでも、注文した翌日に荷物が届く理由は、確実にそこにあります。見えないところで動いている仕組みに、こうして数字から近づいていくのは、投資の地味な楽しみの一つだと思っています。


※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年8月時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。

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