自己資本比率85%超えも:財務が鉄壁な高配当株5選

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高配当株投資を始めたばかりの頃、私は「配当利回りが高い順」に銘柄を選んでいました。利回り6%、7%——数字が大きいほど良い株だと信じて疑わなかったのです。ところが、そうやって選んだ銘柄のいくつかは、その後あっさりと減配し、株価も大きく崩れました。配当という「約束」は、会社の体力が尽きればいとも簡単に反故にされる。そのことを、身をもって学びました。

その苦い経験以来、私が高配当株を選ぶときに真っ先に見るようになったのが、利回りではなく「財務の鉄壁さ」です。どれだけ不況が来ても、赤字の年があっても、配当を払い続けられる体力があるか。その体力を測るモノサシが、自己資本比率配当性向です。

今日は、この「財務の鉄壁さ」を軸に選び抜いた5銘柄を紹介します。中には自己資本比率85%超えという、事実上の無借金経営で「潰れる気配すらない」会社も含まれています。派手な値上がりを狙う株ではありませんが、夜ぐっすり眠れる——そんな安心感のある銘柄たちです。

なぜ「財務健全性」を最優先するのか

高配当株選びで一番やってはいけないのが、配当利回りの高さだけで飛びつくことです。利回りは「年間配当 ÷ 株価」で計算されるので、株価が下がれば下がるほど、見かけの利回りは上がります。つまり「利回りが高い=株価が何らかの理由で売られている」というケースが、実はとても多いのです。業績が悪化して株価が下がり、利回りだけが高く見え、そこに飛びついた矢先に減配発表——これが高配当株投資で最も多い失敗パターンです。

ここで効いてくるのが、財務の強さです。自己資本比率が高い会社は、不況で一時的に利益が落ち込んでも、蓄えた自己資本を取り崩して配当を維持できます。逆に借金頼みで自己資本の薄い会社は、業績が傾いた瞬間に配当を削らざるを得ません。私は「財務が弱い会社の高い利回り」よりも、「財務が強い会社の、手堅い利回り」を選びます。少し利回りが低くても、減配で株価もろとも沈むリスクを避けられるなら、そのほうがずっと合理的だからです。

配当利回りの高さだけで選ぶことの危険については、こちらの記事で詳しく解説しています。

配当利回りランキングの罠と正しい選び方

今回の選定基準

今回の5銘柄は、次の4つの基準で絞り込みました。「財務の鉄壁さ」と「配当の持続性」を両立させることを最優先にしています。

  1. 自己資本比率が高い……おおむね50%前後以上を目安に、財務の余力が厚い会社を選定(金融・リースなど業態特性のある企業は、その事業モデルを考慮して判断)
  2. 配当性向に無理がない……稼いだ利益に対して配当がおおむね50〜60%以下に収まり、利益で十分にカバーできている
  3. 過去10年で大きな減配・無配転落がない……不況やコロナ禍を挟んでも、配当を守り抜いてきた実績がある(これは絶対条件です)
  4. 株主還元方針が明確……累進配当やDOE(自己資本配当率)目標など、「減配しない・還元を続ける」という会社の意思がはっきりしている

財務盤石の高配当株5銘柄・一覧

銘柄(コード)株価配当利回り自己資本比率配当の安定性
アイホン(6718)2,788円4.66%87.6%実質無借金・PBR0.65倍
三菱HCキャピタル(8593)1,390円3.67%15.2%(金融)27期連続増配
稲畑産業(8098)3,955円3.62%約47%累進配当・10年増配
小野薬品工業(4528)2,425円3.30%約73%累進配当・現金リッチ
積水ハウス(1928)3,546円4.09%約43%10年連続増配
※株価・配当利回り・自己資本比率は2026年7月17日時点のYahoo!ファイナンスの数値です。

各銘柄の詳細解説

アイホン(6718):自己資本87%の「負けない」インターホン王者

インターホン業界で国内トップシェアを誇る独立系メーカーです。私がこの銘柄を「財務の鉄壁さ」の筆頭に挙げるのは、自己資本比率87.6%という、事実上の無借金経営だからです。豊富な手元資金を抱え、不況が来ようが赤字の年があろうが、配当を払い続ける体力は日本の上場企業でも屈指の水準です。

配当の安定性:1株あたり配当は130円、配当利回りは4.66%。過去10年を確認すると、2023年3月期に91円→80円という減配が一度ありましたが、翌期には130円へと大幅に増配し、以降3年間その水準を維持しています。正直に言えば減配ゼロではありませんが、そのあと一気に取り返してくる還元姿勢の強さは本物です。さらにPBR0.65倍という割安さは、東証の「PBR1倍割れ改善要請」の観点でも、今後の増配や自社株買いの期待をふくらませます。

リスク・懸念点:①ROEが3.6%台と低く、潤沢な手元資金を成長投資に活かしきれていない「資本効率の悪さ」が課題です。②国内のマンション更新・新築需要に業績が左右されやすく、少子高齢化による市場縮小の影響を中長期で受ける可能性があります。

クアットの見立て:成長性は高くありません。でも、現金を溜め込む「資本効率の悪さ」を東証から批判されるほど、今後の大幅増配や自社株買いへの期待値が高まる——そんな「尻を叩かれ待ち」の銘柄です。

三菱HCキャピタル(8593):27期連続増配という「実績」の重み

三菱グループの総合リース大手です。「財務盤石=自己資本比率が高い」と定義すると、金融・リース業のこの会社は自己資本比率15%台で一見基準を外れます。でも、リース業はそもそも資金を調達して貸し出すのが本業なので、この数字は業態として標準的。むしろ注目すべきは、その圧倒的なトラックレコードです。

配当の安定性:1株あたり配当は51円、配当利回りは3.67%。同社の凄みは「27期連続増配」——リーマンショックもコロナショックも乗り越えて、四半世紀以上も配当を増やし続けてきたという事実です。過去10年の配当推移を見ても減配は一切なく、きれいな右肩上がり。三菱UFJフィナンシャル・グループという強力な後ろ盾と、多角化された事業ポートフォリオが、この安定を支えています。

リスク・懸念点:①資金を調達して貸し出すビジネスモデルのため、急激な金利上昇は調達コストを押し上げ、利ざやを圧迫する可能性があります。②航空機・インフラ・工作機械など多様なリース資産を持つため、世界的な景気後退時には資産の稼働率低下や減損リスクが生じます。

クアットの見立て:自己資本比率の数字だけ見ると弱く見えますが、「27期連続増配」という実績は、どんな財務指標よりも雄弁です。株価を気にせずコツコツ買い増せる、まさに「永久保有枠」の中核銘柄だと思っています。

稲畑産業(8098):「減配しない」を貫く累進配当の商社

住友化学系の専門商社で、化学品や情報電子材料に強みを持ちます。高配当株投資家から根強い人気を集めている理由は、はっきりしています。「累進配当」——つまり「減配せず、配当を維持または増配し続ける」という方針を、明確に掲げているからです。

配当の安定性:1株あたり配当は143円、配当利回りは3.62%。過去10年の配当推移を確認すると、36円→143円まで、一度の減配もなくきれいに増え続けています。特筆すべきは配当性向が30%台と低い点。稼いだ利益のうち配当に回している割合が小さいということは、多少業績が振れても配当を維持する余力がたっぷりある、ということです。「財務の盤石さ」をまさに体現した一社です。

リスク・懸念点:①化学品や半導体材料を扱うため、原料価格の乱高下や需要の冷え込みで在庫評価損が発生する可能性があります。②筆頭株主である住友化学グループの経営状況や戦略変更が、間接的に影響を及ぼす懸念があります。

クアットの見立て:累進配当を掲げ、なおかつ配当性向が低い——これは「まだ増配の余地がたっぷりある」ということ。住友化学の業績不振で株が売られる場面があれば、むしろ絶好の買い場だと見ています。

小野薬品工業(4528):オプジーボが生んだ現金リッチな製薬大手

抗がん剤「オプジーボ」の成功で知られる製薬大手です。この一大ヒットにより強固なキャッシュポジションを築き、自己資本比率は約73%という潤沢な財務を誇ります。そのうえで「累進配当」を掲げ、株主還元を経営の優先順位の上位に置いている点が特徴です。

配当の安定性:1株あたり配当は80円、配当利回りは3.30%。過去10年の配当を確認すると、2016年に見かけ上大きく減っているように見えますが、これは2016年4月に実施した1対5の株式分割による表示上の変化で、実質的な減配ではありません。分割後は一貫した増配トレンドで、直近は80円を維持しています。製薬業は研究開発に多額の資金を要しますが、同社はそれでも累進配当を明言しており、還元への本気度が伝わってきます。

リスク・懸念点:①日本の医療費抑制政策による薬価引き下げ(特に主力のオプジーボ)は、利益を直接押し下げる要因です。②パテントクリフ(特許の崖)——主力薬の特許が切れると安価な後発品が普及し、収益が急減します。次世代パイプラインの成否が将来を左右します。

クアットの見立て:財務も利益率も文句なし。ただ、オプジーボの特許切れによる減収リスクが株価にどこまで織り込まれているかは、常に気にしておきたいところ。新薬パイプラインの進捗を見ながら、少しずつ拾っていく銘柄だと考えています。

積水ハウス(1928):10年連続増配の住宅最大手

戸建て・賃貸住宅で国内最大手の一角を占めるハウスメーカーです。今回の5銘柄の中では自己資本比率は約43%とやや控えめですが、それを補って余りあるのが、安定した増配実績4%を超える利回りです。景気敏感と思われがちな住宅業界にあって、驚くほど手堅い配当を続けています。

配当の安定性:1株あたり配当は145円、配当利回りは4.09%。過去10年の配当推移を見ると、64円→145円まで一度も減配することなく10年連続で増配しています。配当性向も40%台と無理がなく、株主還元と成長投資のバランスがとれています。ストック型の賃貸住宅事業が安定した収益基盤となり、この連続増配を下支えしています。

リスク・懸念点:①国内の住宅市場は少子高齢化で長期的に縮小が見込まれ、新設住宅着工戸数の減少は逆風です。②資材価格や人件費の高騰、金利上昇による住宅ローン需要の冷え込みが、業績を圧迫する可能性があります。

クアットの見立て:自己資本比率だけ見ると鉄壁組にはやや見劣りしますが、「10年連続増配 × 利回り4%超 × 配当性向40%台」という組み合わせは、守りの高配当株として非常に優秀。地味ですが、長く付き合える一社だと思います。

まとめ:財務健全性がもたらす「心の平穏」

今回紹介した5銘柄——アイホン、三菱HCキャピタル、稲畑産業、小野薬品工業、積水ハウス。これらに共通するのは、単に利回りが高いことではなく、「不況が来ても配当を守り抜く財務の体力」と「減配しないという明確な意思」を併せ持っていることです。

私が財務健全性にこだわるのは、それが投資家にとっての「心の平穏」を生むからです。相場が荒れて株価が下がっても、「この会社なら配当は大丈夫」と思えれば、狼狽して底値で投げ売りせずに済みます。むしろ、下がったところを淡々と買い増せる。この精神的な余裕こそが、長期投資を続けるうえで一番の武器になります。

私自身は、値上がり益を狙うインデックス投資と、こうした「守りの高配当株」を組み合わせる二刀流でポートフォリオを組んでいます。財務が鉄壁な高配当株は、その「守り」の土台として、荒れ相場でも配当を淡々と積み上げてくれる頼もしい存在です。派手さはなくても、夜ぐっすり眠れる——そういう銘柄を土台に据えることが、資産形成を長く続ける秘訣だと思っています。

私が実践する「インデックス×高配当株の二刀流」については、こちらで詳しく書いています。

インデックス投資と高配当株投資、両方やっている私が本音で語る【なぜ”二刀流”なのか】


※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年7月時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。


著者プロフィール

クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。

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