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ニュースで「サイバー攻撃」という言葉を見かける機会が、ここ数年ではっきり増えました。病院のシステムが止まった、部品会社が狙われて自動車メーカーの生産まで止まった。そういう報道が、もう珍しくありません。
この分野で主役として名前が挙がるのは、たいていトレンドマイクロのような大手セキュリティベンダーです。ただ、防衛の現場を見ても分かるとおり、主役だけで成り立つ産業はありません。フィルタリング、認証、監視、教育。それぞれの持ち場を専業で支えている中小型企業がいます。
今日は、この分野を支える企業のなかから、配当利回り2%以上で、しかも減配なく増配を続けている3社を選びました。サイバーセキュリティ関連は成長株としての性格が強く、無配や超低利回りの企業が多いなかで、この条件で残ったのがこの3社です。
なぜサイバーセキュリティが国策テーマなのか
2026年10月1日、「サイバー対処能力強化法」が施行されます。2025年5月に成立した法律で、国がサイバー攻撃を未然に防ぎ、被害の拡大を止めるために必要な体制を整えるものです。柱の一つが「能動的サイバー防御」で、通信事業者と連携して不審な通信を分析し、攻撃元のサーバーを無害化する権限を政府に持たせる内容が含まれています。
基幹インフラを担う事業者には、システムの届け出やインシデント報告といった新しい義務も課されます。これに備えて、官民ともにセキュリティ体制の点検と強化を進めている、というのがいまの状況です。詳しい制度の内容は、国家サイバー統括室(NISC)の公式サイトで確認できます。
背景にあるのは、攻撃そのものの変化です。工場の生産ラインを止める、取引先を踏み台にして本丸に侵入する。そうした被害が実際に起きている以上、国産のセキュリティ技術を育てる必要性は、政治的な立場を問わず共有されている論点だと思います。
私が実践する「ツルハシ投資法」の全体像は、こちらの完全ガイドでまとめています。
今回の選定基準
サイバーセキュリティ関連は無配や利回り1%未満の企業がとても多い分野です。まずは基準を緩めずに絞り込み、何社残るかを確認しました。
- サイバーセキュリティに関連する事業を、主力または重要な柱としていること
- 配当利回り2.0%以上
- 過去5〜10年で減配・無配転落がないこと
- 直近で赤字でないこと
この基準で見ていくと、専業のクラウド型WAF企業や教育専業企業は利回り1%未満がほとんどで外れました。結果として残ったのが、次の3社です。
| 銘柄名(コード) | 役割・強み | 時価総額 | 株価 | 配当利回り | 配当の安定性 |
|---|---|---|---|---|---|
| デジタルアーツ(2326) | Webフィルタリング「i-FILTER」 | 約641億円 | 4,535円 | 2.21% | 10期連続増配 |
| ソリトンシステムズ(3040) | 認証・ゼロトラスト製品「NetAttest」等 | 約465億円 | 2,355円 | 3.06% | 6期連続増配 |
| ソフトクリエイトホールディングス(3371) | セキュリティ評価・SOC監視サービス | 約582億円 | 2,114円 | 2.93% | 6期連続増配 |
3社の中身を見ていきます
① デジタルアーツ(2326):学校と企業の入口を守るフィルタリング専業
【どこを支えているか】Webフィルタリング製品「i-FILTER」を主力とする、情報セキュリティの専業メーカーです。危険なサイトへのアクセスを事前に遮断する仕組みで、企業の情報漏洩対策として使われるほか、GIGAスクール構想のもとで全国の教育委員会に広く導入されています。有害情報の遮断という、地味だけれど代替の効きにくい役割を担っています。詳しい財務情報は同社IRで確認できます。
【配当・財務の安定性】10期連続増配を続けており、1株配当を年度順に並べると2022年3月期70円→75円→80円→85円→95円→2027年3月期予想100円と、一度も減配せずに増加しています。実績配当性向37.5%、自己資本比率66.1%と財務も厚く、成長株にありがちな薄い財務ではありません。
【リスク・懸念点】①PBRは3.3倍台と、この3社のなかでは評価がやや高めです。フィルタリング市場の伸びが鈍化すれば、株価の調整が大きくなりやすい水準です。②主力のi-FILTERはGIGAスクール関連の予算配分に業績が左右される面があり、教育委員会向けの調達方針が変われば影響を受けます。
② ソリトンシステムズ(3040):認証とゼロトラストの専業
【どこを支えているか】企業ネットワークへの不正侵入防止や情報漏洩対策を中核事業とする専業メーカーです。クライアント証明書による認証基盤「NetAttest」シリーズ、社外から安全にクラウドへ接続するためのセキュアブラウザ「Soliton SecureBrowser」など、ゼロトラストと呼ばれる「社内・社外を区別せず、都度確認する」考え方を実装する製品群を自社開発しています。詳しい財務情報は同社IRで確認できます。
【配当・財務の安定性】6期連続増配で、1株配当は2021年12月期14円→16円→24円→52円→54円→2026年12月期予想72円と、一度も減配していません。直近の増配ペースがとりわけ速く、経常利益も前期比32.7%増を見込んでいます。自己資本比率50.5%。
【リスク・懸念点】①時価総額約465億円と3社で最も小型で、PBRは3倍を超えています。急成長を織り込んだ株価であるぶん、成長が鈍化したときの反動が大きくなりやすい構造です。②セキュリティ製品は他社の類似製品との競合があり、大手ベンダーが同等の機能をクラウドサービスに標準搭載してくる展開になれば、専業製品の優位性が薄れるリスクがあります。
③ ソフトクリエイトホールディングス(3371):セキュリティ評価とSOC監視を手がける一角
【どこを支えているか】ECソリューション事業とITソリューション事業を両輪とする会社で、サイバーセキュリティは同社が掲げる4つの得意領域の一つです。企業のセキュリティ状況を評価する「SCSmart」、Microsoft 365の脅威を24時間監視するSOC(Security Operation Center)サービスなど、会社全体の一事業ではなく明確な柱として位置づけられています。ただし、会社全体で見れば売上の中心はEC支援事業であり、専業のセキュリティ企業ではない点は先に断っておきます。詳しい財務情報は同社IRで確認できます。
【配当・財務の安定性】6期連続増配で、1株配当は2022年3月期20円→25円→48円→55円→62円→2027年3月期予想62円と、減配はありません。自己資本比率59.7%、実績配当性向37.1%。
【リスク・懸念点】①サイバーセキュリティ事業は会社全体の一部門であり、この銘柄の株価がセキュリティ関連の材料だけで動くとは考えにくい構造です。本業のEC支援事業の動向のほうが、業績への影響は大きいはずです。②中小企業向けのセキュリティ需要は景気動向やIT投資意欲に左右されやすく、不況時には後回しにされやすい分野でもあります。
このテーマに投資するときに私が気をつけていること
サイバーセキュリティは、防衛や宇宙といった他の国策テーマと比べても、無配・低配当の成長株が特に多い分野だと感じています。今回選んだ3社は幸い基準を満たしましたが、この分野全体で見れば、配当がほとんど出ていない企業のほうが数としては多いのが実情です。
また、ソフトクリエイトホールディングスのように、セキュリティが事業の一部にとどまる会社は、業績がテーマの追い風だけで動くわけではありません。「サイバーセキュリティ関連」という括りだけで評価せず、それぞれの会社の売上構成を確認したうえで持つようにしています。
まとめ:地味な入口を守る仕事にも、配当は出ている
学校の端末を守るデジタルアーツ、社内ネットワークの認証を支えるソリトンシステムズ、企業のセキュリティ状態を点検するソフトクリエイトホールディングス。いずれも派手さはありませんが、10月に施行されるサイバー対処能力強化法を機に、こうした地味な入口の守りが見直される流れは続くと見ています。
この分野は無配の成長株が目立つだけに、配当を出しながら増配を続けている会社があるという事実そのものが、私には一つの安心材料になっています。焦らず、この3社の決算を追いながら見ていくつもりです。
防衛関連の中小型株については、こちらの記事でも紹介しています。
※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年9月時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。
著者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。