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2026年9月28日の記事では、配当金の4つの受け取り方法を比べました。NISAの配当を非課税にするには「株式数比例配分方式」にしておく必要がある、という話です。
受け取り方は分かりました。ただ、その前にもうひとつ、手前の問いがあります。「そもそも高配当株は、NISAと特定口座のどっちで買えばいいのか」です。
株は、買った瞬間にどの口座に住むかが決まります。そして日本証券業協会のQ&Aによれば、あとから特定口座の株をNISA口座に移すことはできず、売って買い直すしかありません。つまり、最初の置き場所選びがそれなりに効いてきます。
ちなみに私は、新NISAの成長投資枠を主に高配当株に充てています。とはいえ、それが誰にとっても正解かどうかは別の話です。今回は、配当の税金・損失の扱い・配当控除・外国の税金・投資枠の5つの点から、2つの口座を並べてみました。
先に結論を3行で
・配当の税金だけを見れば、NISAが有利です。100万円・利回り4%なら、税金の差は年約8,100円、10年で約8.1万円になります。
・一方で、NISAで出た損失は「なかったこと」になり、ほかの利益との通算も、翌年以降への繰り越しもできません。
・米国株や米国ETFの配当は、NISAでも米国で引かれる10%は戻りません。
どちらが正解というより、「長く持つか」「売る可能性があるか」「外国の銘柄か」で、合いやすい口座が変わる、という話です。
5つの点で比べる
NISAで何を買うか(高配当株か成長株か)については、以前の記事で整理しました。今回は、同じ高配当株をどちらの口座に置くか、に絞って比べます。
| 項目 | 新NISA(成長投資枠) | 特定口座(源泉徴収あり) |
|---|---|---|
| 配当の税金 | 非課税(株式数比例配分方式の場合) | 20.315% |
| 売却損の扱い | ないものとみなされる。通算も繰越もできない | 同じ口座内で自動通算。確定申告で他口座と通算、3年間の繰越も可 |
| 配当控除 | 関係なし | 総合課税を選べば使える可能性あり(国内株) |
| 米国などで引かれる税金 | 取り戻せない | 確定申告で外国税額控除を使える場合あり |
| 投資できる金額 | 年240万円、生涯1,200万円(簿価) | 上限なし |
配当控除は、国税庁の説明のとおり、国内株の配当を確定申告で総合課税にした場合に使える税額控除です。所得の水準によって有利にも不利にもなるので、ここでは「特定口座の配当には、この選択肢がある」とだけ書いておきます。
数字で比べる:10年で約8.1万円の差と、損失が出た場合
配当にかかる税金の差
前提は、100万円分の高配当株を、配当利回り4%で10年間持ち続けるケースです。株価と配当は10年間変わらないものとし、受け取った配当は再投資しない単純計算にしています。特定口座の配当には、20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)が源泉徴収されます。
| 1年 | 10年 | |
|---|---|---|
| 配当(税引前) | 40,000円 | 400,000円 |
| NISAの手取り | 40,000円 | 400,000円 |
| 特定口座の手取り | 31,874円 | 318,740円 |
| 差(税金) | 8,126円 | 81,260円 |
年に約8,100円、10年で約8.1万円の差です。配当を再投資すれば差はもう少し広がりますが、今回はあえて単純にしています。
株価が10%下がって売った場合
次に、同じ100万円が90万円に下がり、そこで売った場合を考えます。NISAでは、この10万円の損失は税務上「ないもの」とみなされます。国税庁の説明のとおり、ほかの口座の利益と通算することも、翌年以降に繰り越すこともできません。
特定口座なら、同じ口座の中の売却益や配当と自動で通算されます(配当は株式数比例配分方式で受け取っている場合)。ほかの証券会社の口座の利益とも、確定申告をすれば通算できます。それでも引ききれない損失は、確定申告で翌年以降3年間繰り越せます。10万円の損失をほかの利益と全額通算できれば、税金が約2万円(20,315円)少なくなります。
では、配当の税金の差と、損失を通算できる効果を合わせるとどうなるでしょうか。配当と売却損益を足した結果を並べてみました。
| 売ったタイミング | NISA | 特定口座(損失を通算できた場合) |
|---|---|---|
| 1年持って、10%下で売却 | -60,000円 | -47,811円 |
| 10年持って、10%下で売却 | +300,000円 | +239,055円 |
損失の通算で取り戻せるのは約2万円で、配当の税金の差のおよそ2.5年分にあたります。数字の上では、早い時期に売ることになれば特定口座が、長く持ち続ければNISAが、有利になりやすい計算です。
権利落ちの検証記事でも見たとおり、高配当株でも株価は普通に動きます。売る可能性があるかどうかは、口座を選ぶときの大事な材料になります。
米国ETF・外国株は、NISAでも10%が残る
米国株や米国ETFの配当には、日本の税金とは別に、米国で税金がかかります。日米租税条約により、個人投資家が受け取る配当に米国でかかる税率は10%です。
この10%は、NISAで持っていても取り戻せません。外国の税金を取り戻す仕組みは外国税額控除といって、日本で払う所得税から差し引くものです。NISAの配当には日本の税金がかからないので、差し引く先がありません。所得税法施行令でも、NISA口座の配当にかかった外国の税金は、外国税額控除の対象から外されています。
特定口座の場合は、米国で10%を引かれたあとに、日本でも20.315%がかかります。その代わり、確定申告で外国税額控除を使えば、米国で引かれた分の一部または全部を取り戻せる場合があります。控除できる額には上限があり、確定申告の手間もかかります。
| NISA | 特定口座(確定申告しない場合) | |
|---|---|---|
| 米国の税金(10%) | 1,000円 | 1,000円 |
| 日本の税金 | 0円 | 1,828円 |
| 手取り | 9,000円 | 7,172円 |
数字だけ見ればNISAのほうが手取りは多いのですが、「NISAなら丸ごと非課税」とはならない点は覚えておきたいところです。なお、外国株の配当は、配当控除の対象にもなりません。
高配当株を売買すると、NISAの枠はどうなるか
成長投資枠は、年240万円、生涯1,200万円までです。生涯の枠は買ったときの金額(簿価)で管理され、売った分は翌年以降に簿価の分だけ戻ってきます(金融庁の資料、日本証券業協会のQ&A)。高配当株を売買すると、次のようなことが起きます。
・減配で売って別の銘柄に買い替える場合:売った分の枠は、その年のうちには戻りません。買い替えの分は、その年の240万円の枠から使うことになります。
・値下がりして売った場合:100万円で買って80万円で売ると、翌年に戻る枠は100万円です。一方で、20万円の損失はなかったことになります。
・値上がりして売った場合:100万円で買って150万円で売ると、50万円の利益は非課税です。ただし、翌年に戻る枠は買ったときの100万円だけです。
・1,200万円を使い切ったあと:売らない限り、新しく買う枠はありません。売れば、翌年以降に簿価の分が戻ります。
戻ってきた枠も、その年の240万円の上限に上乗せされるわけではありません。売買の回数が多い使い方ほど、NISAの枠は窮屈になりやすいと言えます。
判断材料:どんな銘柄・人に、どちらが合いやすいか
ここまでをまとめると、次のように整理できます。どちらに置くべき、という話ではなく、判断の材料として並べています。
| こんな場合 | 合いやすい口座 | 理由 |
|---|---|---|
| 配当を長く受け取り続けるつもりの銘柄 | NISA | 非課税の効果が毎年積み上がる |
| 減配や株価下落で売る可能性がある銘柄 | 特定口座 | 損失を通算・繰り越しできて柔軟 |
| 米国の高配当ETF・米国株 | どちらも一長一短 | NISAでも10%は戻らない。特定口座は申告すれば一部戻る場合あり |
| NISAの枠を使い切った分 | 特定口座 | 枠の外は課税口座で持つことになる |
| 確定申告をしたくない人 | NISA | 申告不要。特定口座も通算・繰越・外国税額控除には申告が必要 |
配当を長く受け取り続ける前提なら、非課税の効果が毎年積み上がります。一方で、業績の振れが大きく、減配や株価下落で売る可能性がある銘柄なら、損失を通算できる特定口座のほうが柔軟です。米国の高配当ETFは、NISAでも10%分は戻らない、という前提で比べる必要があります。
まとめ:銘柄選びで外すなら、せめて口座選びでは外さない
高配当株をNISAと特定口座のどちらで買うかは、配当の税金だけならNISAが有利です。ただ、損失が出たときの逃げ道があるのは特定口座で、米国の銘柄はNISAでも10%が残ります。長く持つのか、売る可能性があるのか、外国の銘柄なのかによって、合いやすい置き場所が変わります。
正直に言えば、口座の置き場所より、銘柄選びで外さないことのほうがずっと大事です。ただ、銘柄選びで外さない方法を私はまだ知りません。せめて、確実に計算できる税金のほうでは外さないようにしておきたいと思っています。
あなたの高配当株は、どの口座に住んでいますか。一度、保有銘柄を「長く持つもの」と「売るかもしれないもの」に分けてみると、置き場所の見直しのヒントになるかもしれません。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品・口座・証券会社を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。税制の説明は、2026年9月時点の国税庁(令和8年4月1日現在法令等)・金融庁・日本証券業協会・財務省の公表資料に基づく一般的な内容で、個別の状況により取り扱いが異なる場合があります。数値例は一定の前提を置いた概算で、手数料・為替の変動・配当の増減は考慮していません。
著者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。