高配当株を売るということについて:私の高配当ポートフォリオは「盆栽」です

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私の高配当ポートフォリオは、盆栽のようなものだと思っています。80銘柄を超える株たちを、鉢の中の小さな木に見立てて、時間をかけて少しずつ整えていく。そんな感覚で付き合っています。

このブログではこれまで、「何を買うか」「どう持ち続けるか」を中心に書いてきました。高配当株投資は基本的に長期保有が前提ですし、私自身も頻繁に売買するタイプではありません。ただ、そうは言っても、これまでに売った銘柄がまったくないわけではありません。今日は、あまり正面から書いてこなかった「売る」ということについて、正直にお話ししたいと思います。

盆栽の手入れには、大きく分けて「剪定」「水やり」「植え替え」という3つの作業があります。この3つは、私が株と向き合うときの姿勢と、驚くほどきれいに重なります。今日はこの3つになぞらえて、私がどういうときに売り、どういうときには絶対に売らないのかを整理してみます。

剪定:腐った実は、迷わず摘み取る

まず1つ目が、見切りをつけるための売り——盆栽でいう剪定です。私が高配当株を手放す基準は、はっきり決まっています。無配転落、あるいは大幅な減配が「確定」したとき。この一点だけです。

ここで大事なのが「確定したとき」という条件です。業績が悪化していても、株価が下がっていても、それだけでは売りません。業績の低迷は一時的なもので終わる可能性が十分にありますし、株価の下落にいたっては、市場の気分でいくらでも起こります。ですから私は、実際に減配や無配が実行されるまでは動きません。逆に言えば、配当という「実」がはっきり腐ったと分かった時点では、迷わず摘み取ります。

実際に、私はこのルールに従って2回、木にハサミを入れています。1つは数年前、沖縄電力(9511)が無配に転落したとき。もう1つは最近のことで、大幅な減配を発表したスカラ(4845)を、全て売却しました。どちらも、悩んだ末の決断というより、決めていたルールに従って手を動かした、という感覚に近いものでした。

自分のルール通りの行動でしたので、感覚としてはまさに「腐った枝や実を刈るような気分」でした。とはいえ、どちらもある程度の含み損を抱えた状態でしたから、マイナスは覚悟のうえ。痛みも、少しはありました。それでも大きく動揺しなかったのは、鉢の中の他の枝——つまり、しっかり配当を出し続けてくれている優秀な“金の実”たちが、変わらず利益をもたらしてくれていたからです。1本の枝を切っても、木そのものは元気でした。

実際に減配が発表されたときの、より実務的な対処ステップはこちらにまとめています。

減配されたらどうする?高配当株の減配対応マニュアル5ステップ

水やり:日に当てて、市場の中で育てる

2つ目は、手を出さないという手入れです。盆栽でいえば、水をやり、日に当てて、あとはじっと待つ時間にあたります。

私のスタンスはとてもシンプルで、含み損では絶対に売りません。株価が買値を下回っていることは、その企業が配当を払えなくなったことを何ひとつ意味しないからです。配当さえ出続けているなら、その木はまだ実をつけています。実がなっている木を、葉の色が少し悪いという理由で抜いてしまうのは、あまりにもったいない話です。

たとえば最近では、私が保有しているSaaS関連の銘柄が、なかなか苦しい状況にあります。AIの急速な伸長を受けて「SaaSはもうオワコンではないか」といった見方が広がり、株価がじりじりと下げているのです。ただ、私はこれらを売っていません。それどころか、一部の銘柄については逆に買い増しました。事業と配当が続いている限り、株価の下落はむしろ、同じ木にもう少し養分を足す機会だと考えているからです。

「日に当てる」というのは、私の中では市場にさらしたまま育てるということです。値動きから隔離するのではなく、上下する相場の中に置いたまま、配当が積み上がっていくのを待つ。そのためには、日々の株価に一喜一憂しないことがどうしても必要になります。毎日鉢を掘り返して根の様子を確かめる人が、良い盆栽を育てられないのと同じことだと思っています。

日々の株価を気にしすぎない投資習慣については、こちらで詳しく書いています。

株価アプリの通知を切った話:情報を減らすほど、投資はうまくいく

植え替え:見限りではなく、より良い場所へ

3つ目の売りは、これまでの2つとは性質がまったく違います。盆栽でいう植え替え——鉢を変え、土を新しくして、木がもっと伸びやすい環境に移してあげる作業です。

私にとってそれが、新NISAが始まったときの売却でした。当時、特定口座で保有していた株の一部を、いったん売却し、あらためて新NISA口座で買い直したのです。売った瞬間だけを切り取れば、剪定とまったく同じ「売り」という行為です。けれども、中身はまるで違います。

このときの売却は、その銘柄を見限ったからではありません。むしろ逆で、この先も長く持ち続けたいからこそ動きました。特定口座では配当にも売却益にも約20%の税金がかかりますが、NISA口座であればそれが非課税になります。10年、20年と配当を受け取り続けることを考えれば、この差は決して小さくありません。税金という制約の少ない鉢へ、同じ木を移し替えた——それがこの売却の正体でした。

ですので、ひとくちに「売る」と言っても、私の中にはまったく違う2種類が存在します。腐った実を摘み取る後ろ向きの剪定と、もっと大きく育てるための前向きな植え替えです。この2つを混同してしまうと、「売った=失敗した」という短絡的な受け止め方になりかねません。売却という行為そのものに、良いも悪いもないのだと思います。

盆栽は、簡単には手放さない

私にとって高配当ポートフォリオは、金の実がなる盆栽です。生活のためにいつか崩すことがあるとすれば、それはおそらくインデックスのほうで、この盆栽については、買い増しという手入れは続けても、簡単に手放すつもりはありません。

今日お話しした3つを整理すると、こうなります。剪定は、無配転落や大減配が確定したときだけに行う、見切りの売り。水やりは、含み損では動かず、市場の中で育て続けること。植え替えは、より条件の良い環境へ移すための、前向きな売り。この3つさえ区別できていれば、売却で感情に振り回されることは、ずいぶん少なくなります。

そして、あくまで基本は「持ち続けて育てる」ことです。盆栽を育てる目的は、枝を切ることそのものではなく、木全体を美しく、大きくしていくことにあります。私の目的も、個別の銘柄を頻繁に入れ替えることではなく、ポートフォリオ全体を時間をかけて育てることにあります。

あなたのポートフォリオには今、剪定が必要な“腐った実”はありませんか。もしあるとすれば、それは配当が止まってしまった枝かもしれません。逆に、ただ株価が下がっているだけの枝でしたら、もう少し日に当てておいてもいいのではないかと思います(ちなみに私は、本物の盆栽のほうは見事に枯らした経験があります。株のほうがまだ上手に育てられている気がして、少し複雑な気持ちです)。

売る基準も、育てるという発想も、私の投資哲学の一部です。全体像はこちらのまとめ記事でご覧いただけます。

私の投資哲学まとめ:数字を追いながら、数字に振り回されないために


※本記事は情報提供および筆者個人の経験・見解を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年7月29日時点の情報に基づいています。


著者プロフィール

クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。

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