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先月、「FIREはしません。でもFIは欲しい」という記事を書きました。経済的自立は欲しいけれど、仕事を完全にやめたいわけではない、という話です。
書き終えて、けっこう満足していました。ところが後日、ふと気づいてしまったのです。
私は「月20万円あれば十分」と書いておきながら、その20万円がいつ、どうやって届くのかを、一度もきちんと計算していませんでした。
毎日のように配当利回りや配当性向を計算しているのに、自分の人生の一番大事な数字だけ、ざっくりのまま放置していたことになります。医者の不養生ならぬ、配当ブロガーの不計算です。
今日はその宿題を片づけます。「配当金だけで生活する」という夢が、数字の上でどこまで現実的なのか、そして数字の外側に何が残っているのか。自分のことなので、なるべく正直に書いてみます。
前回の記事はこちらです。
月20万円で、本当に暮らせるのか
まず、目標の月20万円そのものについてです。
正直に言うと、20万円だと、実際には足りないと思っています。いきなり前提を崩すようで申し訳ないのですが、ここは見栄を張っても仕方がありません。
ただ、切り詰めれば、家賃と食費を中心にした「贅沢ゼロの生活」は成り立つと考えています。住む場所を少し田舎に移せば、家賃はかなり下がります。食費も、自分で作る割合が増えれば変わってくるはずです。
そして、その上に乗せる「贅沢分」は、配当以外から持ってくるつもりです。候補は2つあります。
ひとつは、少しだけ働いて稼ぐことです。フルタイムではなく、アルバイトや地域の仕事で、趣味や旅行の分を補う形です。
もうひとつは、インデックス投資の取り崩しです。高配当株とは別に、インデックスファンドへの積立も続けていて、こちらもすでに数千万円の規模になっています。
つまり私の月20万円は、最初から「配当だけ」で完結する設計ではありません。配当を土台にして、足りない分を別の手段で埋める、という考え方です。
……と、ここまでは頭の中で考えていた話です。問題は、その「土台」がどこまで育つのかでした。
新NISAの配当は、増配だけでどこまで育つか
私はいま、新NISAの成長投資枠を、主に高配当株に充てています。成長投資枠の生涯上限は1,200万円で、そのうち720万円はすでに投資済みです。
残りは480万円です。年240万円ずつ入れていけば、あと2年で満額になります。
では、その後はどうするのでしょうか。実は、ここは正直あまり考えていませんでした。心のどこかで「あとは増配で埋まるかな」と思っていたのです。
そこで、この仮説を数字で確かめてみました。前提は次の3つです。
・新NISA成長投資枠を1,200万円の満額まで埋めた時点をスタートとする
・配当利回りは平均3.8%と仮定する(私が普段選ぶ高配当株の利回りは2.8〜4.8%が多いので、その真ん中)
・その後は追加投資をせず、配当が毎年5%ずつ増えると仮定する
増配率5%は、以前「100万円の20年後」を計算したときと同じ仮定です。ご自分の数字で試したい方は、元本・利回り・増配率をそれぞれ置き換えてみてください。
計算は単純です。1,200万円×3.8%=年45.6万円です。ここから毎年1.05倍にしていきます。
| 満額到達から | 年間配当 | 月換算 |
|---|---|---|
| 到達時点 | 45.6万円 | 3.8万円 |
| 5年後 | 58.2万円 | 約4.9万円 |
| 10年後 | 74.3万円 | 約6.2万円 |
| 15年後 | 94.8万円 | 約7.9万円 |
| 20年後 | 121.0万円 | 約10.1万円 |
表を作り終えて、しばらく画面を眺めてしまいました。
20年待っても、月10万円です。目標の月20万円に対して、ちょうど半分ほどにしかなりません。
逆から計算すると、もっとはっきりします。利回り3.8%だけで月20万円(年240万円)を作るには、元本が約6,316万円必要です。新NISAの1,200万円は、その約19%しかカバーしていません。
増配だけで月20万円に届くまでの年数も出してみました。満額到達から約34年です。前回の記事で「辞める目安」にした月15万円でも、約28年かかります。今の私の年齢に足すと、どちらも60代です。
「増配で埋まるかな」という私の仮説に対して、数字の答えは「半分しか埋まらない」でした。
もちろん、これは新NISAの成長投資枠だけを切り出した計算です。妻の分や課税口座の分、そして今後も続ける給与からの積立は入っていません。前回書いた「45〜50歳あたり」という見立ても、そうした追加投資を続ける前提のものです。
それでも、「NISAを埋めたら、あとは放っておけば育つ」という甘い想像は、ここで一度きちんと崩れました。崩れてくれてよかったと思っています。
増配率の効き方そのものについては、こちらで詳しく試算しています。
埋まらない残り半分を、どう埋めるか
では、足りない月10万円はどこから来るのでしょうか。
ここで、最初に書いたインデックス投資の取り崩しが効いてきます。
取り崩しの目安としてよく使われるのが、いわゆる「4%ルール」です。資産の4%程度を毎年取り崩していけば、長期的に資産が尽きにくい、という考え方です。前提によって結果が変わるので絶対のルールではありませんが、ひとつの物差しにはなります。
20年後の不足分は、年間でおよそ119万円です。これを4%で取り崩して賄うなら、必要な資産は約3,000万円になります。
インデックス投資の積立は、すでに数千万円の規模になっていますし、これからも続けます。そう考えると、配当で半分、取り崩しで半分という組み合わせは、少なくとも数字の上では無理のない形に見えてきます。
足りない分は、少しだけ働いて補うこともできます。配当・取り崩し・少しの労働の3本立てで、どれか1本に全部を背負わせないというのが、今回の計算を経た私の設計図です。
前回の記事で「取り崩しの話は先の宿題にしておきます」と書いたのですが、結果的に、その宿題がこの計画のど真ん中に来てしまいました。宿題は先送りするほど重くなる、という教訓までついてきた形です。
届いたら、何をして暮らしたいか
数字の話ばかりだと味気ないので、その先の話も少し書きます。
前回も触れましたが、私がやってみたいのは、農業と狩猟を通して、自分で食べるものを作る暮らしです。
前回から少しだけ進んだこともあります。今年はシェア農園の区画を借りて、夏野菜を育てています。狩猟免許の勉強も続けています。まだ入口の入口ですが、一歩は踏み出しているつもりです。
仕事の面では、地域に関わる仕事やボランティアをしながら、少しだけ稼げるようになれたらいいなと考えています。大きく稼ぐ必要はありません。前の章の計算でいえば、「足りない分を少しだけ補う」役割です。
それから、まだうっすらとした構想ですが、オンラインで小さな事業もやってみたいと思っています。たとえば、育てた農産物を販売するようなことです。
配当は土台、取り崩しは補強、仕事は楽しみと少しの上乗せです。こうして書き出してみると、配当金だけで生活するというよりは、配当金を土台にして、好きなことで生活を組み立てる、というほうが私の夢に近いのかもしれません。
それでも、残る不安
ここまで読むと、ずいぶん順調な計画に見えるかもしれません。でも、数字では片づかない不安が2つあります。
ひとつは、新しい生活に順応できるのか、という不安です。
私は比較的都会で暮らしてきた人間です。コンビニが歩いて行ける距離にあって、欲しいものは翌日に届きます。そういう環境から、畑と山のある暮らしに移ったとき、本当にやっていけるのでしょうか。シェア農園で週末に土をいじるのと、それを生活の中心に置くのとでは、たぶんまったく別物です。
もうひとつは、定期収入から抜け出せるのか、という不安です。
毎月決まった日に、決まった額が口座に入ってきます。この仕組みには、依存性があると思っています。ちょっと言葉は悪いですが、定期収入は一種の「麻薬」のようなものではないかと思っています。
給料が入る安心感に慣れた体は、それがなくなることを想像するだけで落ち着かなくなります。たとえ計算上は配当と取り崩しで暮らせると分かっていても、最後の給与明細を受け取る日に、本当にそれを手放せるのでしょうか。
数字が「大丈夫」と言っていても、その場に立ったときに一歩を踏み出せるかどうかは、また別の話です。そしてこれは、表計算ソフトでは試算できません。
まとめ:計算は終わった。踏み出せるかは、まだ分からない
今回やっと、自分の夢に数字を入れてみました。結果をまとめると、こうなります。
・新NISAを満額にして増配だけで育てると、20年後に月10万円ほど
・月20万円には、それだけでは半分しか届かない
・残りは、インデックス投資の取り崩しと少しの労働で埋める設計なら、数字の上では成り立つ
「増配で埋まるかな」は、半分だけ正解でした。残りの半分は、自分で組み立てる必要があります。
ただ、今回いちばん分かったのは、数字の話ではありませんでした。数字の上で可能だということと、実際に踏み出せるということは、別の問題だということです。
配当が月20万円に届く日が来ても、私はたぶん、最後の出社日の前夜に「やっぱりもう1年だけ……」と言い出しそうな気がしています。そのときは、この記事を読み返して、自分の背中を押すつもりです。押せるかどうかは、そのときの私次第ですが。
あなたの「配当金だけで生活する」という夢には、どんな数字が入っていますか。まだ計算していないなら、一度だけ表を作ってみるのも悪くないと思います。私のように、ちょっとだけ落ち込むかもしれませんが。
※本記事は情報提供および筆者個人の経験・見解を目的としており、特定の投資手法や資産配分を推奨するものではありません。記事内の試算は、配当利回り3.8%・増配率年5%・追加投資なし等の一定の仮定に基づく計算であり、将来の配当額や運用成果を保証するものではありません。実際の配当は減配や株価変動により変わる可能性があります。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年9月時点の情報に基づいています。
著者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。