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先日、自宅の冷蔵庫と食品棚をなんとなく眺めていて、あることに気づきました。中に並んでいる商品の多くが、私が子どもの頃から名前も見た目もほとんど変わっていない、ということです。ソーセージ、小麦粉、チョコレート、昆布の煮物、ヨーグルト——どれも「昔からある、いつものやつ」です。
投資家として、私はここに一つのヒントを感じました。何十年も選ばれ続けている商品には、消費者の習慣に深く食い込んだ「ブランドの堀」があります。新商品の当たり外れに一喜一憂しなくても、毎年淡々と売れていく。その安定こそが、長期の配当を支える土台になるのではないか、と。
今日は、「値上げできる力」ではなく、「そもそも何十年も愛され続けている定番商品を持っているか」という視点で、食品株を5銘柄選びました。時間が証明したロングセラーを持つ会社を、配当とあわせて見ていきます。
なぜ「ロングセラー」が投資の堀になるのか
ロングセラー商品の強さは、消費者の習慣に組み込まれていることにあります。スーパーで醤油やマヨネーズを買うとき、多くの人は毎回ゼロから比較検討したりしません。「いつものやつ」を、ほとんど無意識にカゴへ入れます。この「考えずに選ばれる」状態こそ、企業にとって最強の参入障壁です。競合が多少安い商品を出しても、長年慣れ親しんだ味からは、そう簡単に離れないからです。
この安定は、業績にもそのまま表れます。ヒット商品を毎年生み出し続けるのは至難の業ですが、ロングセラーを持つ会社は、すでにあるブランドが黙々と稼いでくれます。新商品の当たり外れに左右されにくく、キャッシュフローが読みやすい。だからこそ、長期にわたって配当を出し続ける原資が安定するのです。
私は投資において、時間を味方につけることを何より大切にしています。10年後、20年後もおそらく食卓に並んでいるであろう商品——その裏にいる会社を持っておくことは、時間の経過そのものが追い風になる投資だと考えています。派手さはありませんが、こういう「退屈だけど強い」銘柄が、私は好きです。
なお、同じ食品株でも「インフレ下で値上げできる力(価格転嫁力)」という別の視点で選んだ記事もあります。あわせて読むと、見え方が立体的になります。
今回の選定基準
- 何十年も続くロングセラー・定番商品を持っている……時間が証明したブランドの堀があること
- 配当利回り2.5%以上……ディフェンシブな安定性に、そこそこの利回りも求めます
- 過去10年で大きな減配・無配転落がない……年度ごとの配当を1年ずつ確認しました
- 財務が健全である……自己資本比率に余裕があること
この基準で選ぶと、キユーピーやキッコーマンのような文句なしのロングセラー企業でも、配当利回りが1%台と低く、今回は外れました。「良い会社」と「今の利回りが高い株」は、必ずしも一致しないのが難しいところです。
ロングセラー食品の高配当株5銘柄・一覧
| 銘柄(コード) | 代表的なロングセラー | 配当利回り | 自己資本比率 | 配当の安定性 |
| 伊藤ハム米久HD(2296) | アルトバイエルン | 3.19% | 56.2% | 10年減配なし |
| 日清製粉グループ(2002) | 小麦粉・パスタ「マ・マー」 | 3.18% | 61.1% | 10年連続増配 |
| フジッコ(2908) | おまめさん・ふじっ子・カスピ海ヨーグルト | 2.95% | 86.9% | 10年減配なし |
| 明治ホールディングス(2269) | 明治ミルクチョコレート・ブルガリアヨーグルト | 2.93% | 61.2% | 11年連続増配 |
| 森永製菓(2201) | ミルクキャラメル・ハイチュウ | 2.62% | 62.8% | 10年連続増配 |
各銘柄の詳細解説
① 伊藤ハム米久ホールディングス(2296):食卓のソーセージという定番
ロングセラーとブランドの堀:ハム・ソーセージで国内トップクラスのメーカーです。「アルトバイエルン」は1985年の発売以来、40年にわたって食卓とお弁当の定番であり続けています。食肉加工品はタンパク源としての必需性が高く、朝食やお弁当に「いつものソーセージ」として組み込まれているため、消費者が簡単には他社へ乗り換えません。この習慣の強さが、そのまま安定した売上につながっています。
配当・財務の安定性:配当利回りは3.19%、自己資本比率56.2%。過去10年の配当を年度順に確認すると、85円から段階的に増配しており、減配は一度もありません(なお2026年3月期は特別配当を含み一時的に大きくなっていますが、通常ベースでは145円→155円と着実に増えています)。食肉事業の採算改善も進んでいます。
リスク・懸念点:①原料となる食肉相場や飼料価格の変動が、利益率を圧迫することがあります。②国内の人口減少は、長期的には食肉消費量の伸び悩みという逆風になり得ます。
② 日清製粉グループ本社(2002):あらゆる料理の「土台」を握る
ロングセラーとブランドの堀:小麦粉で国内最大手の製粉会社です。家庭用の「日清 フラワー」やパスタの「マ・マー」は長年の定番ですが、それ以上に強いのが、パン・麺・菓子などあらゆる食品メーカーに小麦粉を供給しているという立ち位置です。私たちが口にするパンやうどんの多くが、元をたどれば同社の小麦粉。目立たないところで食生活の土台を握っている、まさに「堀」の深い会社です。
配当・財務の安定性:配当利回りは3.18%、自己資本比率61.1%。過去10年の配当は26円から65円(予想)まで、一度も減配することなく増え続けています。原料である小麦の価格変動を製品に反映する仕組みも持ち、安定した収益基盤を築いています。
リスク・懸念点:①小麦は輸入依存度が高く、国際相場や為替の影響を受けます。②製粉は成熟産業で、国内市場の急成長は見込みにくいため、成長は海外展開やM&Aに依存する面があります。
③ フジッコ(2908):「おまめさん」と自己資本87%の堅実経営
ロングセラーとブランドの堀:昆布の佃煮や煮豆の「おまめさん」「ふじっ子」で知られる会社です。さらに「カスピ海ヨーグルト」という独自のロングセラーも持っています。派手さはありませんが、和食の常備菜という、日本の食卓から消えることのないニッチをしっかり押さえています。健康志向の高まりも、豆や昆布、発酵食品を扱う同社には追い風です。
配当・財務の安定性:配当利回りは2.95%。そして特筆すべきは自己資本比率86.9%という、実質無借金に近い鉄壁の財務です。過去10年の配当は35円から46円まで増え、減配は一度もありません(近年は46円で横ばいですが、下げてはいません)。不況が来ても、この財務なら配当を守り抜く体力は十分です。
リスク・懸念点:①近年の配当が横ばいで、増配の勢いという点では他の4銘柄に見劣りします。②和惣菜は国内市場が中心で、人口減少の影響を受けやすい構造です。
④ 明治ホールディングス(2269):100年ブランドの塊
ロングセラーとブランドの堀:「明治ミルクチョコレート」は1926年発売で、まもなく100年を迎える超ロングセラーです。「明治ブルガリアヨーグルト」も1973年から半世紀以上愛され続けています。菓子と乳製品という、世代を問わず日常的に消費されるカテゴリで圧倒的なブランドを持ち、まさに「ブランドの堀」の見本のような会社です。医薬品事業という別の柱もあり、収益の分散も効いています。
配当・財務の安定性:配当利回りは2.93%、自己資本比率61.2%。過去10年の配当は55円から110円(予想)へと倍増しており、毎年5円ずつ、11年連続で増配しています。減配とは無縁の、きれいな右肩上がりです。
リスク・懸念点:①カカオ豆や乳原料の価格高騰が、菓子・乳製品の利益率を圧迫します。②医薬品事業は薬価改定や開発の成否といった、食品とは異なるリスクを抱えています。
⑤ 森永製菓(2201):ミルクキャラメルという時間の証明
ロングセラーとブランドの堀:「森永ミルクキャラメル」は1913年発売で、100年以上売られ続けている、日本の菓子ロングセラーの象徴とも言える商品です。「ハイチュウ」「チョコボール」「inゼリー」など、世代ごとに定番を持っているのも強みです。ここまで長く残っている商品は、味そのものが一つの文化になっており、簡単には代替されません。時間が証明したブランドとは、まさにこのことです。
配当・財務の安定性:配当利回りは2.62%、自己資本比率62.8%。過去10年の配当は22.5円から70円(予想)まで、一度も減配せず、きれいに増配を続けています。「inゼリー」など健康志向の商品も伸ばしており、菓子一辺倒ではない収益構造を作っています。
リスク・懸念点:①カカオや砂糖など原材料価格の高騰が続くと、利益率が圧迫されます。②菓子は嗜好品のため、健康志向の強まりが長期的に消費量へ影響する可能性があります。
まとめ:10年後も食卓にある会社を持つ
今回の5銘柄——伊藤ハム米久、日清製粉グループ、フジッコ、明治ホールディングス、森永製菓。並べてみると、ソーセージ、小麦粉、煮豆、チョコレート、キャラメルと、どれも「気づけばずっと家にある」定番ばかりです。いずれも配当利回りは2.5%以上で、過去10年、減配していません。
私がこうした銘柄に惹かれるのは、10年後も、その商品がほぼ確実に食卓に並んでいるだろうと想像できるからです。次に何が流行るかを当てるのは難しいですが、「変わらないもの」を見つけるのは、意外と簡単です。冷蔵庫を開けて、何年も同じ場所にある商品を思い浮かべればいいのですから。時間が証明したブランドを持つ会社を、配当を受け取りながらゆっくり持つ——これも立派な長期投資の形だと思っています(とはいえ私は、その定番のお菓子を、投資の成果を待つ間につい食べ過ぎてしまうのですが)。
不況でも需要が落ちないディフェンシブ高配当株については、こちらでも紹介しています。
※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年7月時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。
著者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。