半導体を洗う、削る、運ぶ:装置の裏側を支える5銘柄

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AI向け半導体のニュースを見かけるたびに、私はいつも同じことを考えます。この分野の主役は、たしかに東京エレクトロンアドバンテストといった大手の製造装置メーカーです。株価の話題になるのも、たいていこのあたりの企業です。

でも、その装置そのものも、誰かが作っています。装置に組み込むバルブや部品、洗浄に使う薬液、工程に欠かせない超純水。半導体を作るための道具を、さらに足元で支えている企業が確かに存在します。

以前、AIデータセンターの建設を支える企業を紹介しました。今回はもう一段上流の、半導体そのものを「作る」工程を支える企業です。同じAI関連でも、見ている場所がまったく違います。

半導体の「裏方」は、どこにいるのか

半導体ができるまでの工程を簡単に整理しておきます。シリコンウェーハを洗浄し、膜をつけ(成膜)、回路を焼き付け(露光)、不要な部分を削り(エッチング)、表面を磨き(研磨)、最後に検査する。これを何百回と繰り返して一枚のウェーハが完成します。

各工程で必要になるのは、装置だけではありません。装置に組み込む精密部品やシール材、洗浄・研磨に使う薬液、高純度のガス、そして大量の超純水。どれか一つ欠けても工場は動きません。しかも微細化が進むほど要求精度は上がり、供給できる企業は限られていきます。

市場の追い風も確認しておきます。SEMIの2026年7月発表によれば、2026年の半導体製造装置の世界売上高は前年比23.2%増の1,659億ドルと過去最高になる見通しで、2028年には2,290億ドルへ拡大すると予測されています(SEMIの市場予測)。装置が売れれば、その装置を構成する部品や、工場で使われる材料も動きます。

装置メーカーの株を買うのも一つの考え方です。でも私は、その装置や工程を支える側にも目を向けます。主役の陰で、地味に、しかし確実に必要とされている企業。これが私の言う「ツルハシ」です。

私が実践する「ツルハシ投資法」の全体像は、こちらの完全ガイドでまとめています。

ツルハシ投資法とは何か:国策の主役ではなく「装備」を売る企業に投資する

今回の選定基準

今回は次の4条件で絞り込みました。

  1. 半導体を「作る」工程を支える裏方であること……装置そのものではなく、装置や工程に必要な部品・材料・設備を供給している企業
  2. 配当利回り2.0%以上……ここは普段より基準を緩めました。半導体関連は成長株が多く、利回りが低めになるためです
  3. 過去10年で大きな減配・無配転落がないこと……ここは緩めていません。年間配当を年度順に並べ、前年と比較して1年ずつ確認しました
  4. 直近で赤字でないこと

そして、実際に絞り込んでみて分かったことがあります。半導体関連で「10年間まったく減配していない」企業は、驚くほど少ないのです。これから紹介する5社のうち、完全に減配ゼロだったのは2社だけでした。残る3社には、一時的な小幅の減配歴があります。該当する企業については、そのことを明記しました。

半導体を「作る」側を支える5銘柄

銘柄名(コード)担う工程・役割時価総額株価配当利回り配当の安定性(過去10年)
信越ポリマー(7970)ウェーハの搬送・出荷容器約1,925億円2,330円2.83%減配ゼロ(12円→66円)
野村マイクロ・サイエンス(6254)超純水プラント約1,584億円3,900円2.18%減配ゼロ(3.75円→85円)
バルカー(7995)装置用シール材・フッ素樹脂部品約1,290億円6,900円2.90%2021年に5%減配→その後200円へ
フェローテックHD(6890)真空シール・石英/セラミックス部品約4,926億円9,110円2.20%2024年に4.8%減配→その後200円へ
日本高純度化学(4973)めっき薬品(配線・接合)約297億円4,890円4.70%2023年に約11%減配→その後230円へ
※株価・配当利回り・時価総額は2026年8月時点のYahoo!ファイナンスの数値です。

信越ポリマー(7970):ウェーハを運ぶ容器で世界に供給

どこを支えているか:シリコンウェーハを工程間で搬送し、出荷するための専用容器を手がけています。ウェーハは微細な塵ひとつで不良になるため、容器そのものに高い清浄度と精度が求められます。地味ですが、ウェーハが動くところには必ず必要になる製品です。信越化学工業グループの一員でもあります。

配当・財務の安定性:配当利回りは2.83%(予想配当66円)。過去10年の配当は12円→12円→16円→18円→20円→26円→38円→46円→52円→62円→66円と推移し、減配は一度もありません。自己資本比率84.4%と財務は極めて堅固です(同社IR)。

リスク・懸念点:①ウェーハの出荷量に業績が連動するため、シリコンサイクル(半導体市況の好不況の波)の影響を直接受けます。②電子部品や自動車向けの事業も持つため、半導体以外の市況にも左右されます。③親会社グループへの依存度が高い点も、見方によってはリスクになります。

野村マイクロ・サイエンス(6254):工場に欠かせない超純水

どこを支えているか:半導体工場で使われる超純水の製造プラントを手がける会社です。ウェーハの洗浄には、不純物を極限まで除いた水が大量に必要になります。工場の建設が決まれば、必ず超純水設備も必要になるため、新工場の建設動向がそのまま受注につながります。

配当・財務の安定性:配当利回りは2.18%(予想配当85円)。過去10年の配当は3.75円→5円→7.5円→8.25円→16.25円→23.75円→37.5円→62.5円→80円→81円→85円と、一度も減ることなく増え続けています。直近の四半期は大型案件の一巡で減収でしたが、受注高は大幅に増加し、通期では増益が見込まれています(同社IR)。

リスク・懸念点:①大型プラント案件の有無で売上が大きく振れます。実際に直近も前年同期比25.8%の減収でした。②自己資本比率35.6%と、今回の5社では低めです。③工場建設の計画が延期されれば、受注も先送りになります。

バルカー(7995):装置の「漏らさない」を支える

どこを支えているか:シール材(パッキンやガスケット)とフッ素樹脂製品のメーカーです。半導体の製造装置は、真空状態を保ったり、腐食性の強い薬液やガスを扱ったりします。そこで一滴も漏らさないための部品を供給しているのがこの会社です。装置1台に多数使われる消耗品でもあり、交換需要も発生します。

配当・財務の安定性:配当利回りは2.90%(予想配当200円)。正直にお伝えすると、2021年3月期に100円から95円へ、5.0%の小幅な減配がありました。ただしその後は125円→150円→150円→150円→150円→200円と回復し、減配前の2倍に達しています。自己資本比率64.1%、直近の四半期は営業利益が61.1%増と好調です(同社IR)。

リスク・懸念点:①装置向けの部品である以上、半導体設備投資の波をそのまま受けます。②直近の株価は業績好調を織り込んで上昇しており、市況が反転した際の下落幅には注意が必要です。

フェローテックホールディングス(6890):真空シールと石英部品

どこを支えているか:製造装置に組み込まれる真空シール、石英製品、セラミックス部品などを手がけています。装置メーカーが自社ですべての部品を作るわけではないため、こうした専門部品メーカーの存在が欠かせません。半導体ウェーハの製造や、パワー半導体向けの材料も扱っています。

配当・財務の安定性:配当利回りは2.20%(予想配当200円)。こちらも正直にお伝えすると、2024年3月期に105円から100円へ、4.8%の小幅な減配がありました。その後は141円→148円→200円と回復しています。なお時価総額は約4,926億円で、今回の5社では最も大きく、中小型とは言えない規模です。

リスク・懸念点:①中国での生産・売上比率が高く、米中間の輸出規制や地政学リスクの影響を受けやすい構造です。②自己資本比率37.6%とやや低めで、設備投資の負担も重い事業です。

日本高純度化学(4973):配線をつなぐめっき薬品

どこを支えているか:半導体パッケージや電子部品の配線・接合に使う、貴金属めっき薬品を手がける会社です。ごく薄い金属の膜を精密につける工程に使われ、AIサーバー向けの高性能パッケージでは、この工程の重要性が増しています。直近の四半期は売上高が前年同期比80.6%増と伸びました。

配当・財務の安定性:配当利回りは4.70%(予想配当230円)と、今回の5社で最も高い水準です。ただし配当推移には注意が必要で、2023年3月期に90円から80円へ、約11%の減配がありました。その後は101円→126円→200円→230円と急回復し、減配前の2.5倍を超えています。自己資本比率82.7%、時価総額約297億円と小型です。

リスク・懸念点:時価総額297億円と小型のため、売買が薄く株価が大きく動きやすい銘柄です。②貴金属(金・銀等)を扱うため、原材料相場の変動が採算に影響します。③11%の減配歴が示すとおり、市況の影響を受けやすい体質です。

このテーマで、私が気をつけていること

最後に、半導体関連を見るときの私なりの心構えを書いておきます。

いちばん意識しているのは、半導体は好不況の波が本当に大きいということです。いわゆるシリコンサイクルと呼ばれるもので、需要が伸びると各社が一斉に増産投資を行い、その設備が動き出す頃には供給過剰になって価格が崩れる、という循環を何十年も繰り返してきました。今は明らかに追い風の局面ですが、この状態が永遠に続くと考えるのは危険です。

ですから、業績が良いときの数字だけを見て判断しないようにしています。今回、配当推移を10年分並べて確認したのも、そのためです。市況が悪化した年に配当をどう扱ったかを見れば、その会社が波にどう向き合ってきたかが分かります。減配していない企業を選ぶというのは、波を越えてきた証拠を探しているということでもあります。

それでもなお、この分野に確実なものはありません。輸出規制のような政治的な要因もあれば、特定の顧客への依存度が高い企業もあります。ですから私は、この手のテーマ株はポートフォリオの一部にとどめるようにしています。主力はあくまで、景気に左右されにくい高配当株のほうです。

まとめ:主役より、その足元を

今回の5社を整理すると、減配ゼロという意味で最も安定しているのは信越ポリマーと野村マイクロ・サイエンス。バルカーとフェローテックHDは5%前後の小幅な減配を挟みつつ大きく回復し、利回りの高さで目を引くのは日本高純度化学(ただし約11%の減配歴あり)という並びになります。

あらためて感じたのは、半導体関連で「10年間減配なし」を探すことの難しさでした。それだけこの業界の波が大きいということであり、逆に言えば、その波を越えてきた企業には相応の理由があるということだと思います。

ウェーハを運ぶ容器、漏らさないためのシール、洗うための超純水、つなぐためのめっき液。どれも単体ではニュースにならない製品ばかりです。それでも、これらがなければ半導体は一枚も作れません。主役の派手さより、その足元を支えるものに目を向ける——今回もやはり、そこに落ち着きました(とはいえ調べるうちに製造工程に詳しくなってしまい、家族には一切通じない知識がまた増えたのですが)。

AIデータセンターの建設を支える企業については、こちらの記事で紹介しています。

AIデータセンター建設ラッシュの陰の受益者:電力・冷却・工事系ツルハシ株5選


※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年8月時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。


著者プロフィール

クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。

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