投資の話をするとき、私が絶対に言わないこと

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あなたは、投資の話を誰かとしますか。

私はほとんどしません。9年続けていて、80銘柄以上を持っていて、それでも実生活で投資の話をする相手は、妻と、母だけです。母は、私に最初に投資というものを教えてくれた人でもあり、今でも大切な相談相手です。それ以外の人と、自分の投資の話を深くしたことは、ほとんどありません。

ところが、こうしてブログでは毎週のように投資の話を書いています。しかも、自分の失敗まで並べて。実生活では黙っているのに、インターネット上では書いている。我ながら、少し矛盾しているように見えます。

今日は、その矛盾について考えてみます。書きながら整理してみたら、自分の中に思ったより明確な線引きがあることに気づきました。

資産額は、誰にも言いません

まず、はっきりしていることがあります。私は自分の資産額を、実生活では誰にも話しません。職場の人にも、友人にも、親戚にも話したことはありません。

理由は、拍子抜けするほど単純です。知られて得することが、一つも思いつかないからです。

考えてみてください。「実はこれくらい持っています」と伝えたとして、その情報は相手にとって何かの役に立つでしょうか。おそらく、何の役にも立ちません。相手が投資を始めるきっかけになるわけでもなければ、悩みが解決するわけでもない。強いて言えば、「これだけお金に余裕あるなら奢ってくれるだろう」と金づるに見られる可能性もあります。

もう一つは、率直に言えば詮索されたくないということです。金額を知られると、そこから話が広がります。何に投資しているのか、いくら儲かったのか、なぜそんなに貯められたのか。答えるたびに、少しずつ話が込み入っていきます。

お金の話は、良くも悪くも人間関係の空気を変えることがあります。これは誰が悪いという話ではなく、そういうものだと思っています。だから私は、その話題を持ち出さないという方法を選んでいます。

個別株投資は、絶対に勧めません

次に、これも私の中で固く決めていることです。個別銘柄だけは、誰にも勧めません。

職場では、ときどき若い同僚から「投資を始めてみたいんですけど」と相談されることがあります。20代の方が多いでしょうか。NISAの話題が広がってから、そういう機会は明らかに増えました。ありがたいことだと思っています。

それでも、具体的な銘柄名を出すことはしません。理由は、簡単。自分が勧めた銘柄で相手が損をしたとき、その責任を押し付けられるのが嫌だからです。

「責任を感じるから」と書けば聞こえはいいのですが、正直なところは少し違います。善意で勧めたとしても、結果が悪ければ関係は気まずくなります。相手が口に出さなくても、こちらが気にしてしまう。株価が下がるたびに、あの話をした自分を思い出す。そういう関係を、職場に持ち込みたくないのです。

自分の成績についても、聞かれたときはぼかして答えるようにしています。「毎月少しずつ積み立てていますよ。少しプラスなくらいですかね~」くらいで止めます。嘘はついていませんが、全部を話してもいません。

他人の「確信」に乗って失敗した経験があるからこそ、自分が誰かの「確信」になるのが怖いのかもしれません。

私が投資で一番後悔している失敗:他人の「確信」に乗り続けた数年間

でも、インデックス投資だけは勧めます

ここまで読むと、ずいぶん閉じた人間に見えるかもしれません。ところが、一つだけ例外があります。インデックス投資については、聞かれれば勧めています。

理由は、一歩踏み出すきっかけを渡したいからです。「投資は怖い」「損しそう」と思ったまま何もしないでいるより、少額でも始めてみたほうがいいのではないか——そう思う場面が、正直あります。とくに20代であれば、時間という最大の武器を持っているわけですから。

ただし、私の意見だけで勧めることはしません。必ずデータを添えます。使うのは例えば、金融庁が公開している資料です。

そこには、1985年以降の各年に、国内外の株式・債券へ毎月同額を積立・分散投資した場合のシミュレーションが載っています。結果はこうです。保有期間が5年の場合、年率はマイナス8%からプラス13%程度と、大きくばらつきます。つまり、タイミングによっては元本割れもあり得ます。ところが保有期間を20年に延ばすと、年率はプラス2%からプラス8%程度に収束し、この試算では元本割れしたケースはありませんでした金融庁「教えて虫とり先生」第3回)。

この数字を見せると、たいていの人が少し表情を変えます。「短期だと危ないけれど、長く持てば違うんですね」と。私が伝えたいのは、まさにそこです。長期・積立・分散という考え方の基本は、金融庁の資産形成の基本のページにもまとまっています。

そして最後に、必ず付け加えます。これはあくまで過去のデータであって、将来の運用成果を保証するものではありません。そして投資は、最終的にご自身の責任で判断してくださいと。ここだけは、どれだけ話が盛り上がっていても、必ず言うようにしています。

話す・話さないではなく、「何を渡すか」

私は、相手によって話す・話さないを決めているのだと思っていました。でも実際は、違いました。分けていたのは、渡すものの種類だったのです。

資産額は、渡しても相手に何の利益もありません(自分にも何の利益もありません!)。だから話しません。相手の人生に何も足さないどころか、余計な情報になるだけだからです。

個別銘柄は、私の判断そのものです。渡せば、相手はそれを根拠に行動することになります。つまり、私の判断に相手の結果が乗ってしまう。だから勧めません。

インデックス投資には、客観的なデータの裏付けがあります。私の意見ではなく、公的機関が公開している事実です。しかも、一歩踏み出すきっかけになります。だから話します。

相手が誰かではなく、渡せるものがあるかどうか。私が線を引いていたのは、そこでした。距離の問題ではなく、中身の問題だったわけです。

それでも、ここでは書いている

では、なぜブログでは書いているのか。

一つは、単純に匿名で書けるからです。実生活での人間関係を持ち込まずに済みます。たまに手厳しいコメントもいただきますが、詮索されることも、気まずくなることもありません。この気楽さは、正直かなり大きいです。

もう一つは、もう少し前向きな理由です。私は、投資によって自分の人生が変わったと本気で思っています。30代前半で資産に余裕ができたことで、仕事の選び方も、家族との時間の使い方も、以前とはずいぶん変わりました。「辞めてもいい」と思える状態があるだけで、日々の気持ちはまるで違います。

だからこそ、もっと多くの方に投資を身近に感じてほしいと思っています。そのために自分の遠回りが誰かの役に立つなら、書く意味はあると思うのです。

そして大事なのは、このブログでも「これを買え」とは書いていないということです。書いているのは「私はこうしている」という話ばかりです。銘柄を紹介するときも、必ずリスクを並べ、最後には投資判断はご自身の責任でとお願いしています。実生活で引いている線と、まったく同じ基準です。

そう考えると、これは矛盾ではありませんでした。渡す相手が目の前の同僚から、顔の見えない読者に変わっただけです。渡すものの基準は、何も変えていません。むしろ匿名で書けるからこそ、より多くの方に「きっかけ」のほうを渡せているのだと思います。

投資が私にもたらしたのは、お金だけではありませんでした。

投資を始めて一番良かったのは、お金が増えたことではありませんでした

まとめ:距離ではなく、中身の問題

投資の話をするかしないかは、相手との距離の問題だと思っていました。仲がいいから話す、そうでないから話さない、というふうに。でも整理してみると、そうではありませんでした。渡せるものがあるかどうか——判断していたのは、そこだけでした。

資産額は渡さない。銘柄は渡さない。でも、データときっかけなら渡せる。この線引きは、実生活でもブログでも変わりません。だから私は、妻と母以外にはほとんど投資の話をしないまま、こうして毎週書き続けていられるのだと思います。

あなたは、投資の話を誰かとしますか。もし話す相手がいないとしても、それは決して寂しいことではないと思います(ちなみに我が家では、私が投資の話を始めると妻の相槌が一段階雑になるので、そろそろ潮時だと分かるようになりました)。


※本記事は情報提供および筆者個人の経験・見解を目的としており、特定の投資手法や金融商品を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。記事内で紹介した過去のデータは将来の運用成果を保証するものではありません。データは2026年8月時点の情報に基づいています。


著者プロフィール

クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。

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