10日で9円動いた為替と、それでも私が米国株インデックスの積立を止めない理由

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この10日ほどで、為替が驚くような動き方をしました。7月下旬に1ドル164円に迫るおよそ40年ぶりの円安をつけたかと思えば、日米の協調介入をきっかけに、8月3日には一時155円台まで一気に円高が進んだのです。わずか10日ほどで、約9円。為替の世界では、かなり大きな振れ幅です。

私はインデックス投資の主力をS&P500に置いているので、この動きをそのまま受け止めることになりました。正直に申し上げると、円高が進んだ日に証券口座を開いて、少し息を呑みました。決して小さくない額が、数日で目減りしていたからです。株価が下がったわけではありません。為替が動いただけで、円で見た資産はこれだけ変わってしまうのかと、あらためて実感しました。

それでも私は、積立を止めていません。金額も変えていません。今日は、その理由を数字で整理してお話しします。為替をどう予想するかではなく、為替とどう付き合うか、という話です。

40年ぶりの円安と、異例の日米協調介入

まず、何が起きたのかを事実として整理しておきます。

7月下旬、ドル円は1ドル164円に迫る水準まで円安が進みました。これは1986年以来、およそ40年ぶりの円安水準にあたります。そして7月31日、日本の通貨当局が米国と協調してドル売り・円買いの為替介入を実施しました。片山さつき財務相がこれを公表したのが8月3日で、同時に日米の共同声明も調整されたと報じられています(日本経済新聞)。

この介入が注目されたのは、規模よりもその形でした。日米が実弾を伴って協調するのは2011年以来15年ぶりで、しかも円買いでの協調介入は1998年以来、28年ぶりという異例の対応です。米国側ではニューヨーク連銀が米財務省に代わってユーロを売り、円を買ったとも報じられました。介入の実績額は、財務省が外国為替平衡操作の実施状況として定期的に公表しています。

介入後、ドル円は8月3日に一時155円台前半まで円高が進み、5月上旬以来の水準をつけました。その後はやや戻し、8月6日時点では157円台後半で推移しています。もっとも、こうした介入の効果がどこまで続くかについては懐疑的な見方もあり、日米の金利差という根本的な構図は変わっていない、という指摘も出ています(野村総合研究所の解説)。ここから先どちらへ動くのかは、私には分かりません。

円高になると、何が起きるか

為替が投資にどう効くのか、仕組みを簡単に確認しておきます。米国株に投資している日本の投資家にとって、リターンは「株価の変動」と「為替の変動」の掛け算で決まります。

たとえばS&P500が5%上昇したとします。普通なら喜ばしい話ですが、同じ期間に5%の円高が進めば、円で見た資産価値はほぼ横ばいになります。株は上がったのに、口座の評価額は増えていない、という状態です。逆に円安が進んだ局面では、株価の上昇に為替の分が上乗せされ、実力以上に増えたように見えます。

ここ数年、米国株を持っていた日本の投資家の成績が良かったのは、株価の上昇に加えて大幅な円安という追い風があったからです。つまり、追い風があったということは、向かい風になる局面も当然あるということです。今回の急な円高は、その向かい風がまとめて吹いた形でした。

私の資産も、この数日でまとまった額が目減りしました。株価が崩れたわけでもなく、保有している企業に何かが起きたわけでもないのに、です。為替は、短期では暴力的に効く——これは、理屈で知っているのと実際に食らうのとでは、やはり違いました。

長期のデータが見せてくれる、別の景色

ただ、ここで視野を長くしてみると、まったく違う景色が見えてきます。

たとえば、S&P500に1987年4月1日に100万円を投資していたら、約5,600万円になっていたという試算があります(ログミーファイナンス「S&P500は「売り」か「買い」か? 40年の歴史データが示す米国株の答え」2026年3月17日)。約39年で、およそ56倍という数字です。

ここで思い出したいのが、その39年間に何が起きていたかです。1995年4月には1ドル79.75円、2011年10月には1ドル75.32円という史上最高値の円高を記録しています。今の157円台と比べれば、その水準の異常さが分かるはずです。つまりこの試算は、歴史的な円高を何度もくぐり抜けたうえでの数字だということになります。

もちろん、過去がそのまま将来を保証するわけではありません。それでも、この長い時間軸が教えてくれることははっきりしています。為替は短期では大きなノイズになりますが、長期では株価の成長のほうが効いてきた——少なくとも、これまでの歴史はそう示しています。為替のリスクを取ったうえで、それを上回るリターンがあった、という言い方もできると思います。

では、これから円高になったらどうなるのか

ここまでは過去の話です。ただ、本当に知りたいのは「これから」のほうだと思います。そこで、あえて極端な前提を置いて計算してみました。今100万円を投資して、20年後に1ドル100円まで円高が進んだ場合です。現在のレートは157円台後半ですが、ここでは分かりやすさを優先して1ドル160円を出発点としています。160円から100円へ、つまり37.5%の円高という、かなり厳しい想定です。

まず、都合の悪い数字から書きます。株価がまったく動かなければ、100万円は20年後に62.5万円になります。マイナス37.5%、為替の分がそのまま目減りする形です。円高が資産に与える影響とは、まさにこれです。

ところが、ここに株価の成長が加わると景色が変わります。同じ37.5%の円高が起きたとしても、年率3%の成長なら112.9万円(プラス12.9%)と円換算でも元本を上回り、年率5%なら165.8万円(プラス65.8%)年率7%なら241.9万円(プラス141.9%)と2.4倍以上になります。

この関係を逆算すると、損益分岐点は年率2.38%です。20年で37.5%という大幅な円高が来たとしても、株価が年率2.38%を上回って成長していれば、円換算で元本割れはしません。S&P500の過去の平均リターンと比べれば、決して高いハードルではない水準です。もちろんこれは過去の実績にすぎず、将来も同じように成長する保証はどこにもありません。

ここで注目したいのは、両者の性質の違いです。為替の下落は一度きりですが、株価の成長は複利で効き続けます。160円が100円になる目減りは、20年かけて一度起きればそれで終わりです。一方で年率数%の成長は、20年間ずっと積み重なっていきます。

なお、この試算は一定の前提を置いた単純な計算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。税金や手数料も考慮していません。あくまで「極端な円高を想定したら数字の上でどうなるか」という思考実験として見ていただければと思います。

円だけを持つことのリスク

では、円高が怖いなら円で持っておけばいいのか。私はそうは考えていません。むしろ逆で、外貨建ての資産を持つ必要性はむしろ高まっていると思っています。

背景として、日本の構造的な円安要因はしばしば指摘されるところです。エネルギーや食料の多くを輸入に頼る貿易面の構造日米の金利差、そして人口動態にともなう成長力の差。こうした点から「円安の流れは一時的なものではない」との見方も少なくありません。ただし、これはあくまで指摘されている論点であって、私が将来の為替を予想しているわけではありません。

私が重視しているのは、もっと単純なことです。資産を円だけで持つということは、「円」という一つの通貨に集中投資しているのと同じだということです。個別株なら「1銘柄に全額入れるのは危ない」と誰もが言うのに、通貨になると、その集中に気づきにくくなります。円の価値が下がったとき、円だけを持っている人には逃げ場がありません。

だから私は、資産の一部をドル建てで持つようにしています。米国株を主力に据えているのも、成長性への期待と同時に、通貨を分散させる意味があるからです。今回のように円高で目減りする局面は当然ありますが、それは分散のコストとして受け入れています。

私がどのような資産配分で投資しているかは、こちらの記事で公開しています。

9つの資産に分散する私が、それでもバランスファンドを買わない理由

為替に振り回されないために

正直に言うと、為替のニュースが出るたびに大騒ぎになる様子には、少し違和感を覚えています。円安になれば「家計が苦しくなる」と嘆き、円高になれば「資産が減った」と騒ぐ。気持ちは分かりますし、私自身も口座を見て息を呑んだ側です。それでも、誰にも当てられないものに感情を使いすぎているようにも感じるのです。

為替の予測は、専門家でも外します。今回の介入にしても、事前にその日を当てられた人はほとんどいなかったはずです。だとすれば、当てにいく努力より、どちらに転んでも困らない設計をしておくほうが現実的だと私は考えています。円建ての高配当株と、ドル建てのインデックス。両方を持っていれば、どちらかが向かい風のとき、もう一方が追い風を受けます。

私がいつも大切にしている「予測より、設計」という考え方は、まさにこういう場面のためにあります。今回の円高でも、私は積立額を一円も変えていません。むしろ円高は、同じ金額でより多くの外貨建て資産を買える局面でもあります。慌てて止めるより、淡々と続けるほうが、結果的に楽なのです。

日々の値動きに振り回されないための私の習慣は、こちらに書いています。

株価アプリの通知を切った話:情報を減らすほど、投資はうまくいく

まとめ:一喜一憂はしない、でも設計は続ける

今日お伝えしたかったことを整理します。為替は、短期では暴力的に効きます。実際、この10日ほどで私の資産もまとまった額が目減りしました。それは事実として認めます。

けれども長期のデータを見れば、株価の成長は為替の変動を上回ってきました。1ドル75円という史上最高値の円高をくぐり抜けてなお、長く持ち続けた投資家は報われてきたのです。だから私は一喜一憂しません。同時に、円だけに資産を集中させないという設計も、これまで通り続けます。

為替がこの先どちらへ動くのか、私には分かりません。分からないからこそ、どちらでも困らないようにしておく。それが、今の私にできる唯一のことだと思っています。あなたは今回の円高で、何か行動を変えましたか。(ちなみに私は何も変えていませんが、しばらく海外旅行の計画だけは、そっと先延ばしにしました)


※本記事は情報提供および筆者個人の経験・見解を目的としており、特定の投資手法や金融商品を推奨するものではありません。また、為替相場の見通しを保証するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年8月10日時点の情報に基づいており、為替レートは常に変動します。


著者プロフィール

クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。

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