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ChatGPTを使うたびに、その裏側でどれだけの電力が消費されているか、考えたことはありますか?
AIが賢くなるほど、それを動かすデータセンター(DC)の規模も急速に大きくなっています。日本のDCサービス市場は2028年に5兆円を超える見通しで、2024〜2026年の建設投資は毎年4,000億円以上が見込まれています(IDC Japan調査)。国内外のハイパースケーラーが日本各地でデータセンターを建設中で、まさに「AIデータセンター建設ラッシュ」の真っ只中にあります。
こういうとき、株式市場で最初に動くのは主役級の企業です。NVIDIAの株価はすでに大きく上昇し、ソフトバンクGも注目されています。「AIに投資したいが、半導体株は高くて手が出ない」という方へ——私流の答えはこれです。ツルハシを探しましょう。
本記事は、防衛・原油・国産エネルギーに続くStock Labツルハシシリーズの最新作です。今回は「AIデータセンターを電力・冷却・工事・計測で支える中小型株」を5銘柄厳選します。ChatGPTやGeminiを使うたびにその電力需要を支える企業の株を持っていると思えば、少し気が楽になります(笑)。
AIを動かすインフラに、まだ誰も気づいていない投資機会がある
データセンターが大規模化すると、3つのものが増加します。電力、熱、そしてそれを管理・処理するインフラです。AIサーバー(GPU搭載)の消費電力は従来のサーバーの10〜20倍に達し、発熱も桁違いです。2026年現在、日本のAIインフラ投資は前年比18%超増の約8,200億円に達するとIDC Japanが予測しており、電波新聞の調査では2028年にはDC建設投資が年間1兆円を超える見通しです。
「AIデータセンターに投資したい」と思ったとき、真っ先に思い浮かぶのは半導体メーカーやクラウド大手でしょう。しかし、これらの株はすでに大幅に上昇しています。注目すべきは「金を掘る人(主役)」ではなく、「ツルハシを売る人(インフラ担当)」です。
電力インフラ・冷却設備・電気工事・計測システム——AIを動かすために絶対に必要でありながら、まだ十分に評価されていない企業が中小型株の中に存在します。
防衛テーマのツルハシ銘柄については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
今回の選定5条件
- 時価総額3,000億円以下(中・小型株を重視・大型株は除外)
- AIデータセンターとの事業連関がIR・決算資料で確認できること
- 配当利回り2.0%以上、または増配トレンドあり
- 直近決算で黒字(赤字常態化銘柄は除外)
- 「半導体を直接作らない」「DCを自ら運営しない」——あくまで「支える側」の企業
5銘柄を一挙紹介
| 銘柄名(コード) | テーマ | 時価総額 | 配当利回り(予) | 一言 |
|---|---|---|---|---|
| 中電工(1941) | 電気工事 | 約2,674億円 | 約3.0% | 中国電力系、DC向け受注で過去最高益 |
| 新晃工業(6458) | 冷却・空調 | 約918億円 | 約4.0% | 業務用空調機器の国内老舗メーカー |
| 愛知電機(6623) | 電力インフラ | 約787億円 | 約3.7% | 中部電力系変圧器メーカー、2026年3月期過去最高益 |
| 東陽テクニカ(8151) | DC計測・IT検証 | 約498億円 | 約3.7% | DC品質検証を担う計測機器専門商社、営業利益+124% |
| 日本電設工業(1950) | 建設・電気工事 | 約2,720億円 | 約2.8% | JR東日本系、DC向け電気工事受注増で115円に増配 |
※株価・配当利回りは2026年5月20日時点の概算値です。最新の情報は各社IRページでご確認ください。
①中電工(1941)――中国電力グループ系電気工事会社、DC建設需要を着実に取り込む
AIデータセンターのツルハシとしての役割
中電工(1941)は中国電力グループ系の電気工事会社です。電気工事の比率が売上の約5割を占め、電力設備の建設・維持管理・リニューアル工事を幅広く担っています。データセンター向けには、高圧受変電設備の設計・施工・メンテナンスを一貫して担える点が最大の強みです。
AIデータセンターには大量の高圧電力が必要であり、その電力を安全に建物内へ引き込み、適切な電圧に変換して分配する設備工事が不可欠です。電気工事の有資格者不足が深刻化している現在、中電工のような大手電気工事会社の優位性はむしろ高まっています。次期(2027年3月期)は「半導体・データセンター関連投資や送配電網増強を背景に売上高・利益の増加を見込む」とIRで明示しており、DC向け受注の拡大を会社自身が認識しています。
業績・財務の安定性
2026年3月期通期は完成工事高7,420億円(前期比+10.4%)、営業利益831億円(同+42.5%)と大幅な増収増益となり、売上高・利益ともに過去最高を更新しました。自己資本比率は78.6%と建設業界の中でも突出して高く、財務の堅牢さが際立っています。配当は予想約102円(利回り約3.0%)で着実な増配基調を維持しています。時価総額2,674億円で選定基準の3,000億円以下をクリアしています。
リスク・懸念点
①中国地方を地盤としているため、関東・首都圏のDC建設ラッシュの恩恵を直接受けにくい地域的な制約があります。②電気工事の人件費・資材費の上昇が続いており、受注増でも利益率が圧迫されるリスクがあります。③AI投資バブルが崩壊した場合、DC向け受注が急減し、業績が押し下げられる可能性があります。
②新晃工業(6458)――業務用空調機器の国内老舗、DC冷却需要の新フロンティア
AIデータセンターのツルハシとしての役割
新晃工業(6458)は創業70年超の業務用空調機器メーカーです。ビル・工場向けの空調機器(エアハンドリングユニット、ファンコイルユニット等)の製造・販売を主力としており、国内の大型施設への納入実績を多数持っています。データセンターはサーバーが24時間連続稼働するため、高精度・高信頼性の空調設備が絶対に必要です。GPU搭載の次世代AIサーバーは発熱量が従来比10倍以上に達するものもあり、対応できる冷却能力を持つ設備メーカーへの需要が高まっています。
業績・財務の安定性
時価総額は約918億円と小型株の部類に入り、発掘感が強い銘柄です。2026年3月期Q1の売上高は前年同期比4.9%増と着実に成長しています。配当利回りは約4.0%で、長期保有のインカム投資家にも対応しています。70年超の業歴を持つ安定した事業基盤があり、自己資本比率も健全な水準を維持しています。
リスク・懸念点
①2026年3月期Q1の営業利益は前年同期比15.4%減と、コスト増加とアジア市場での価格競争が重なり、直近の収益性に課題があります。DC需要の恩恵が業績に本格反映されるには時間がかかる可能性があります。②液浸冷却など次世代の冷却技術が主流になった場合、従来の空調機器の競争力が低下するリスクがあります。③三菱電機・ダイキン工業などの大手メーカーとの価格競争が激化すると、利益率を圧迫する懸念があります。
③愛知電機(6623)――中部電力系変圧器メーカー、DC電力インフラのニッチトップ
AIデータセンターのツルハシとしての役割
愛知電機(6623)は中部電力系の変圧器・制御機器メーカーです。柱上変圧器(電柱上に設置される変圧器)で国内トップクラスのシェアを持ち、電力会社向けを主軸にしながら、産業用変圧器・受変電システムの製造も手がけています。データセンターは大量の高圧電力を使用するため、高品質の変圧器・受変電設備が不可欠です。全国各地でDCが建設されるほど、電力インフラの整備需要が増加し、変圧器メーカーへの発注が増えます。
現在グローバルで変圧器のリードタイムは2〜3年に達しています。日本の電力インフラ投資の増加と、DC向け特殊変圧器の需要拡大という2つの追い風を同時に受けている状況です。
業績・財務の安定性
2026年3月期通期の売上高は1,294億円(前期比+7.6%)、営業利益は111億円(同+28.7%)と過去最高を更新しました。自己資本比率は59.6%と高く、財務基盤は強固です。株価約7,500円に対し配当利回りは約3.73%で、インカム投資の観点からも魅力的です。時価総額は787億円と選定基準を大きく下回る小型株です。また、プリント基板事業(売上+36.1%・利益+40.1%)が新たな成長ドライバーとして台頭しており、変圧器事業だけに頼らない複合的な成長が期待できます。
リスク・懸念点
①主要顧客が中部電力グループに集中しており、電力会社の設備投資が鈍化した場合に業績への影響が大きい点が懸念されます。②変圧器市場は日立・東芝・三菱電機などとの競合があり、価格競争が激しくなるリスクがあります。③AI投資の急ブレーキがかかった場合、DC向けの変圧器需要が想定より伸びない可能性があります。
④東陽テクニカ(8151)――データセンターの品質を保証する「計測インフラ」の専門商社
AIデータセンターのツルハシとしての役割
東陽テクニカ(8151)は計測器・試験機器の輸入・販売・保守を手がける専門商社です。「測る」という行為は地味に見えますが、データセンターの建設・運用において非常に重要な役割を担っています。DC内のネットワーク機器・電源設備・サーバーが正常に動作しているかを確認するための計測機器がなければ、安定したサービス提供はできません。同社は通信・電力・半導体の各分野でネットワーク品質測定器、電力品質アナライザ、EMC(電磁適合性)試験機器などを供給しており、DC建設・検証工程の「縁の下の力持ち」として機能しています。
業績・財務の安定性
2026年9月期中間決算(2025年10月〜2026年3月)は売上高214億円(前年同期比+23.6%)、営業利益31億円(同+124.0%)と驚異的な増益を達成しました。DC建設ラッシュを背景にした計測機器需要の急拡大が業績に直接反映されています。時価総額は約498億円と5銘柄中最小規模で、個人投資家にとって参入しやすい価格帯です。配当利回りは約3.7%で、安定したインカムも期待できます。
リスク・懸念点
①海外製品の輸入販売が主力であるため、円安が続くと仕入れコストが上昇し、利益率を圧迫するリスクがあります。②計測機器はDC建設の初期工程で特に需要が高まるため、建設ラッシュが落ち着いた後に需要が一巡するサイクルリスクがあります。③主要メーカーとの代理店契約が変更・競合他社に移管された場合、売上に大きな影響が生じる可能性があります。
⑤日本電設工業(1950)――鉄道電気工事の雄、DC向け工事で新成長フェーズへ
AIデータセンターのツルハシとしての役割
日本電設工業(1950)はJR東日本の持分法適用関連会社で、鉄道電気工事を主力とする専門工事会社です。鉄道の電力設備・通信設備・信号設備の設計・施工で日本最大クラスの実績を持っており、その技術力は大規模な電力・通信インフラの設計・施工に直接応用できます。同社は決算説明資料において「民間企業における大都市圏を中心としたデータセンターの建設投資需要が見込まれる」と明記しており、DC工事を次の成長柱として明確に位置づけています。
業績・財務の安定性
2026年3月期Q3累計の売上高は前年同期比+8%、営業利益は同+166%と急改善しています。期末配当を当初計画の92円から115円に大幅増額修正(前期比+25円)し、配当利回りは約2.8%に上昇しました。時価総額は約2,720億円と、JR東日本グループという安定した母体を持ちながら中小型株ならではの発掘感があります。自己資本比率も健全な水準を維持しています。
リスク・懸念点
①売上の大半が依然として鉄道電気工事であり、JR東日本の設備投資計画に業績が左右されやすいという集中リスクがあります。②DC向け工事の比率はまだ成長途上であり、DC需要の本格的な業績への反映には時間がかかる可能性があります。③電気工事士などの有資格者の採用・育成が追いつかない場合、旺盛な受注需要に対応できなくなるリスクがあります。
まとめ:AIデータセンターを支える5つのツルハシ
- ①中電工(1941):中国電力グループ系電気工事会社。DC向け高圧受変電工事で2026年3月期過去最高益を更新。自己資本比率78.6%の堅牢な財務が魅力です。
- ②新晃工業(6458):業務用空調機器の国内老舗。AIサーバーの膨大な発熱に対応する冷却設備メーカーとして、DC建設ラッシュの恩恵を受ける位置にいます。短期的な収益性の改善が焦点です。
- ③愛知電機(6623):中部電力系の変圧器専業メーカー。DC電力インフラに不可欠な変圧器で高いシェアを持ち、2026年3月期は過去最高の利益を達成しました。
- ④東陽テクニカ(8151):計測機器の専門商社。DC建設・検証工程に不可欠な計測ソリューションを提供しており、2026年9月期中間決算では営業利益が前年同期比124%増と急拡大しています。
- ⑤日本電設工業(1950):JR東日本グループの電気工事会社。鉄道電気工事の高い技術力をDC向けに転用し、次の成長フェーズへ移行中です。2026年3月期の大幅増配(+25円)がその自信を示しています。
NVIDIAやソフトバンクを買い逃したと嘆く必要はありません。主役が増えれば、ツルハシの需要は確実に増えます。そして主役の株価が高騰しているとき、ツルハシはまだ割安なことが多いです。AIデータセンターという「金脈」の周辺で、地道に工事・冷却・電力・計測を担う企業に光が当たるのはこれからかもしれません。
国産エネルギー自給を担うツルハシ銘柄については、こちらの記事もご覧ください。
※本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年5月20日時点の情報に基づいており、株価・配当利回りは変動します。
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。