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「暴落が来たら、そのときに買えばいい」——高配当株を長く持っていると、誰もが一度はこう考えます。私もそうでした。安くなった優良株を拾えれば、その後の配当利回りはぐっと良くなる。理屈のうえでは、暴落は絶好のチャンスです。
ところが、いざその瞬間が来ると、たいていの人は動けません。株価が急落しているときは、決まって「もっと下がるかもしれない」という空気に包まれているからです。周りが総悲観のなかで、震える手で買い注文を出すのは、思っている以上に難しいことです。結局「もう少し様子を見よう」とためらっているうちに、相場は反発してしまう。私自身、何度もそれを経験しました。
だから私は、その場の感情で判断しなくて済むように、あらかじめ買い増しのルールを決めています。しかも、2段階に分けています。今日は、その具体的な中身と、待機している現金をどこに置いているか、そして「1銘柄に賭けすぎない」ために設けている上限を、包み隠さずお話しします。正解というより、あくまで「私はこうしている」という一例として読んでいただければと思います。
買い増しの第1段階:個別銘柄が「自分の買いたい価格」に来たとき
1段階目は、相場全体とは関係なく動く、個別銘柄のルールです。私は保有株・監視株のそれぞれについて、「このくらいまで下がったら買いたい」という価格帯を、あらかじめ自分の中で決めています。財務や配当利回りから見て「この水準なら納得して買える」というラインです。そこに株価が入ってきたら、そのときの相場の雰囲気がどうであれ、淡々と買います。
ただし、一度に全部は買いません。その銘柄に充てると決めた予算のうち、まずは2割程度を投じる。これが私のやり方です。理由はシンプルで、自分がどんなに「ここが底だ」と思っても、そこからさらに下がることは普通にあるからです。最初に少しだけ買っておいて、もっと下がれば追加で買い足す。こうしておけば、一発で底を当てにいく必要がなくなります。
この方法の良いところは、銘柄ごとに買うタイミングが自然とバラけることです。ある銘柄が買いたい価格に来ても、別の銘柄はまだ高いまま、ということはよくあります。だから、手元の現金を一度にまとめて使い切ってしまうことがありません。「安くなった順に、少しずつ」——これが第1段階の基本です。地味ですが、この地味さが、暴落局面で慌てないための土台になっています。
買い増しの第2段階:「暴落」がSNSで話題になったとき
2段階目は、相場全体が大きく崩れたときです。具体的には、指数が大きく下がって、SNSのタイムラインに「暴落」の文字が目立ち始めたときを、一つの目安にしています。個別の株価をずっと張り付いて見ているわけではないので、世の中がざわつき始めたら「そろそろかな」と腰を上げる、というくらいの感覚です。
ただ、ここには大事な注意点があります。「暴落」と騒がれていても、その中身をよく見ると、半導体株など特定の2〜3銘柄が指数を大きく押し下げているだけで、自分が持っている高配当のバリュー株にはほとんど影響していない、というケースがよくあるのです。この場合、私は動きません。話題になっているからといって、自分の保有株が安くなっていないのなら、それは私にとっての買い場ではないからです。
この見極めのために、私は日経平均ではなくTOPIX(東証株価指数)を見るようにしています。日経平均は、株価の高い一部の「値がさ株」の動きに大きく引っ張られる指数です。だから、ごく少数の銘柄が急落しただけでも、指数全体が派手に下げたように見えてしまう。一方でTOPIXは、より広い範囲の銘柄をまとめて捉えるため、相場全体が本当に崩れているのか、それとも一部の株が騒いでいるだけなのかが、ずっと見えやすいのです。「日経平均のニュースに驚いて、TOPIXで我に返る」——これが、私が長い時間をかけてたどり着いた、静かな習慣です。
日々の株価に振り回されすぎない投資習慣については、こちらで詳しく書いています。
待機資金は、どこに置いているか
「暴落を待つ」と言うからには、待っている間の現金をどこに置いておくかも大事です。ここは、正解を語るというより、私の実際の置き場所をそのままお見せするのが一番だと思います。通貨によって、置き場所を分けています。
まず、米ドルは基本的にMMF(マネー・マーケット・ファンド)に入れています。すぐに換金できて、待っている間もいくらかの利回りがつくので、ドルの待機場所としては私にとって都合が良いのです。次に、国内株を買うための円資金は、すべて現金のまま持っています。円のほうは利回りを追いかけず、「いつでもすぐ動かせること」を最優先にしている、というのが正直なところです。買いたい銘柄が買いたい価格に来たときに、迷わず動ける状態にしておきたいからです。
もう一つ、以前の仕事の関係で持っている米ドル建ての口座があり、そちらは定期預金に入れています。これが今でも利率3%前後で、しかも一定額以上は自由に引き出せる仕組みになっています。特別に有利な口座で、誰にでも真似できるものではありませんが、「待っている資金にも、無理のない範囲で働いてもらう」という考え方の一例として、正直にお伝えしておきます。派手な運用ではありませんが、こうして置き場所を分けておくだけで、いざというときに慌てずに済みます。
ドル建て資産と円建て資産の使い分けについては、こちらでも書いています。
集中投資を避けるルール:どの銘柄も、資産の2.5%まで
買い増しのルールと並んで、私が固く守っているのが、集中投資を避けるための上限です。日本の個別株は、どの銘柄も資産の2.5%を超えて持たない。これを、自分への約束として決めています。どれだけ惚れ込んだ銘柄でも、この線は越えません。1銘柄がどれだけ輝いて見えても、そこに賭けすぎた瞬間に、それは投資ではなく賭けに近づいてしまうと考えているからです。
ここで、正直に告白しておきたいことがあります。もし私が数年前、総合商社やメガバンクに集中投資していたら、今の資産はもっと大きく増えていたはずです。実際、それらの株はこの数年で大きく上がりました。「あのとき集中していれば」という思いが、まったくないと言えば嘘になります。ただ、これは結果を知っている今だからこそ言えることです。当時の私に、どの銘柄がここまで上がるかを見通す力なんてありませんでした。「分散なんてしなければよかった」という後悔は、典型的な後知恵バイアス——結果を知ったあとで「予測できたはずだ」と錯覚してしまう思考のクセ——にすぎない。私は、自分にそう言い聞かせています。
だから私は、これからも高配当のバリュー系銘柄を中心に、分散を徹底していきます。誰もが知る大型株だけでなく、あまり注目されていない中小型株も、時間をかけて探して組み入れています。1銘柄あたりの比率が小さいからこそ、1社が減配しても、1社の株価が崩れても、全体は静かなままでいられる。この「何が起きても、致命傷にはならない」という安心感が、私が暴落を怖がらずに待っていられる、いちばんの理由なのだと思います。
なぜ私が80銘柄を超えて分散するのか、その理由はこちらに書いています。
まとめ:暴落を待つには、事前のルールがいる
暴落は、待っているだけでは味方になってくれません。いざその瞬間が来ると、恐怖と迷いで手が止まってしまうからです。だからこそ、相場が穏やかなうちに、動き方をルールとして決めておく。これが、私が長い時間をかけて学んだことでした。
個別銘柄が買いたい価格に来たら、予算の2割程度から少しずつ。相場全体がざわついたら、日経平均のニュースに驚く前にTOPIXで本当に崩れているのかを確かめる。待機資金は通貨ごとに置き場所を分け、どの銘柄も2.5%を超えて持たない。どれも派手さのない、地味なルールばかりです。でも、この地味なルールがあるからこそ、私は暴落のニュースを見ても、慌てずにいられます。
相場を予測することは、私にはできません。でも、相場が動いたときに自分がどう動くかは、あらかじめ決めておけます。予測ではなく、準備。暴落を怖いものから、静かに待てるものへと変えてくれるのは、結局のところ、事前に決めておいた自分なりのルールだけなのだと思っています。
暴落を待つときの考え方も、私の投資哲学の一部です。全体像はこちらのまとめ記事に整理しています。
※本記事は情報提供および筆者個人の経験・見解を目的としており、特定の投資手法や資産配分を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。データは2026年7月時点の情報に基づいています。
著者プロフィール
クアット。90年代生まれ、東海地方出身。20代を世界各国で過ごし、4ヵ国語を操りながら多国籍な環境でキャリアを積む。2017年より投資を開始。現在は日本株・米国株を主力に運用し、アッパーマス層(資産4,000万円以上)に到達。海外での経験から「言葉や感情は揺らぐが、数字だけは嘘をつかない」と確信。趣味の域を超えた銘柄分析を、ポエムや感想を排除した「ロジック重視」の視点で発信中。